知っておきたい!東洋医学の知恵と夏の過ごし方

休業自粛解除後、落ち着いたかのように見えていた新型コロナ感染者数がまた増え始めていますね。今一度、私たちの生活を省みながら、感染予防を徹底する必要性を再認識していきたいものです。

さて、毎週火曜日にお届けしております自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。

皆様が穏やかな日常を取り戻せるその日まで、健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.11をお届けいたします。

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7月7日といえば七夕。七夕には願い事を短冊に書いて竹竿に吊るす風習がありますが、今年の願い事は「コロナ終息」を願うものが多いとか。ちなみに、短冊に願いを込めるのは、、竹竿に糸をかけて裁縫や習字の上達を星に祈るとかなえられるという、中国の乞巧奠(きつこうでん)の習しからきているようです。

願い事を書く五色の短冊は、青、赤、黄、白、黒の5色でそれぞれの意味があります。

〇 紫(黒)の短冊  「”学業”に関する願い事」

〇 赤の短冊 「両親や先祖に”感謝”する事」

〇 白の短冊 「”規則”や”義務”を守る達成の願い事」

〇 黄色の短冊 「”人間関係”に関係する願い事」

〇 青(緑)の短冊 「”成長”に関係する願い事」

願い事にあった短冊を選ぶと、願い事がかないやすくなると言われています。これから短冊を書かれる方は、五色の意味を考えて色を選べば願い事がよりかなうかもしれませんね。

ところで、七夕まつりは、「七夕(しちせき)の節句」とも呼ばれる五節句の一つでもあるのをご存知でしょうか。七夕のほかにも、ひな祭りや端午の節句など、私たちの日常に溶け込んでいる「節句」には東洋医学の「陰陽五行論」と密接な関係があるのです。

そこで今回は、漢方薬剤師の安田より「節句」を迎えたタイミングで、東洋医学の視点から、「節句」とはそもそもどのようなものか?「陰陽思想」や「五行思想」とは?を解説します。

さらに七夕の後に間もなくやってくる夏に向けて、熱中症、夏バテ対策におすすめの漢方薬や、食材をご紹介。

今年の夏は、東洋医学の視点を取り入れて、暑さを乗り切ってみませんか?

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<目次>

1.節句の意味をご存知ですか? 

2.東洋医学の陰陽五行論って?

3.陰陽五行論における夏の注意点って?

4.夏を乗り切るためのおすすめの漢方薬は?

5.夏を乗り切るためのおすすめの食材は?

 


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1.節句の意味をご存知ですか?

節句とは、中国の五行陰陽論を由来にした日本に定着したのこと。

節句は一般的に、

・1月7日 一年の無病息災を祈る「七草の節句・人日(じんじつ)の節句」

・3月3日 ひな祭りで知られる「桃の節句・上巳 (じょうし)の節句」

・5月5日 男の子の成長を願う「菖蒲の節句・端午の節句」

上記の三つの節句がよく知られていますが、次の二つを加えて「五節句」と呼びます。

・7月7日 裁縫の上達を願う「七夕(たなばた)・七夕(しちせき)の節句」

・9月9日 菊の薬効により健康を願う「菊の節句・重陽(ちょうよう)の節句」

これらの「五節句」は、1月1日の元旦を除きすべて奇数の同じ数字が重なっていますよね。(※1月1日の元旦は別格とされ、1月7日を節句としています)

奇数は陰陽道では陽の数字であり、日本人には好まれている数字でもあります。ただし、奇数が重なると偶数が生まれ、偶数は陰の数字であるため、その邪気を祓うために行っていた行事が五節句のルーツと考えられてます。

「節句」は「季節の節目」であり、気候が変動して「体調を崩しやすい時期」でもあり、この時期に無病息災を願い、伝統的な行事を行う風習が生まれたのです。

「節句」は、季節感を楽しむ年中行事という側面の一方で、東洋医学の「陰陽五行論」とも関係しているのです。


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2.東洋医学の陰陽五行論って?

節句と深く関わりのある「陰陽五行論」とは、「陰陽思想」と「五行思想」の2つが結合した考え方のことです。ここでは、それぞれの思想と、陰陽五行論の内容をお伝えします。

< 陰陽思想 >
世の中のあらゆる現象(森羅万象)は、必ず”陰”と”陽”の二つの性質を持っているという、東洋の思想哲学に共通する根源的思考です。

陰陽思想では消極的な性質をもつものを「陰」、積極的な性質をもつものを「陽」としてとらえます。万物の生成消滅はこの「陰」と「陽」がそれぞれ持つ「気」によって起こっており、あらゆる事物は陰と陽のカテゴリーに所属し、相反する特性を持ちながら互いに循環や融合を繰り返すことで、調和がとれるとされています。 

この「陰陽思想」の考え方は、古代中国の哲学として確立され、東洋医学の根幹となっている思想でもあります。

< 五行思想 >
すべてのもの(万物)は「木・火・土・金・水(もっかどこんすい)」の、5種類の元素からなるという、古代中国から続く自然哲学の思想です。

五行の「行」という文字には「循環」という意味があります。

「木」はこすれて「火」を生み、「火」が物を燃やした灰が「土」を生み、「土」から「金」が生まれ、「金」はその表面に「水」を生み、「水」は「木」を育てる、というように循環しているのです。

また、一方では、「木」は「土」を痩せさせ、「土」は「水」を濁らせ、「水」は「火」を消し、「火」は「金」を溶かし、「金」は「木」を倒すというように相手の力を抑制する働きも持っています。

このように「木・火・土・金・水」の「循環」が自然界を司っているという考えが「五行思想」です。

 五行
 五臓
 五腑 小腸 大腸 膀胱
 五根(五官)
五主 血脈 肌肉 皮毛
五華 顔面 体毛
五情  
五季 長夏(梅雨) 冬 
五邪 湿
五味
五色

ちなみに、冒頭でご紹介した五色の短冊の色は、五行思想の「五色」から生まれたものなんですよ。


< 陰陽五行論とは? >
「陰陽思想」と「五行思想」の基本となる「世界はすべては二つの陰と陽と、「木・火・土・金・水」の5種類の元素で構成されている」という自然哲学のことです。古代中国から続くこの哲学は、これによりこの世のすべての事象の説明ができると考えられ、儒教・仏教・道教の自然観に大きな影響を与えました。

それは、東洋医学も同様で、この陰陽五行論に基づいて日々の生活を整え、病気の治療方法を考えていきます。体内の臓器、感情、不調の現れやすい部位、季節、味なども、5つに分類されています。

いずれも5つの要素はそれぞれ助けたり、抑制したりしています。この関係が、強すぎたり、弱すぎたりすると体調が悪くなってきます。5つのバランスを整えるためにも、それぞれの季節に合った食事、生活・衣服環境を整えることにより、健康的な生活を送ることが大切なんですね。


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3.陰陽五行論における夏の注意点って?

七夕が終わると本格的な夏がやってきますが、夏は、一年で最も日差しが強く一番熱い季節です。私たちの身体も自然界と同様に陽気が一番旺盛な時期になります。

今年の夏は、暑さが厳しくなる予報が出てますが、陰陽五行論に基づき生活していくことで、熱中症、夏バテの対策をとることができるんですよ。

五行では夏は「火」に属し、熱や汗が出やすくなり、冷たいものを欲しがる、多飲、渇きなどが見られます。特に汗のかき過ぎには要注意です。身体をみずみずしく保つ「津液」という液体とともに、「気」も消耗してしまうために、倦怠感や息切れといった体調不良につながります。また、身体の水分が失われると、血液が凝縮し、「心」にも大きな負担がかかり、動悸や不眠などの症状も現れやすくなります。がぶ飲みは避けなければなりませんが、こまめな水分補給に気を付けましょう。


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4.夏を乗り切るためのおすすめの漢方薬は?

汗をかき過ぎてからだのほてりやだるさを感じたり、暑さに負けて夏バテをして疲れが取れなかったり。夏ならではの体調不良を解消しようとビタミン剤やドリンク剤などを試してみても、毎年、なかなか改善されないとお悩みの方も多いのではないでしょうか?

そんな時こそ「汗」で奪われた「気」を補い、身体に必要な水分を生み出し、必要以上の発汗を抑える益気養陰(えっきよういん)に働く「生脈散(しょうみゃくさん)」という漢方処方が効果的です。

「生脈散」は人参・麦門冬・五味子の3つの生薬で構成されています。人参は気を補う力に優れ、麦門冬は体内の水分を補い、五味子は必要以上に出過ぎる汗を納めるように働きます。いずれの生薬も体内の水分を生み出す力があります。

夏バテ予防、夏のスポーツ、レジャーの際にも便利な漢方薬です。夏に消耗しがちな「津液」と「気」を補ってくれますよ。


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5. 夏を乗り切るためのおすすめの食材は?

季節の旬の食材は、季節ごとの悩みを解決してくれる優れものばかりです。

夏の旬の食べ物の中でも、熱を取る「苦味」、潤いを与える「甘み」、収斂して汗の出過ぎを防ぐ「酸味」の食べ物を積極的に摂りましょう。

苦味」の食材:苦瓜・緑茶

「甘味」の食材:すいか・冬瓜・きゅうり・トマト・小豆・レンコン・レモン・緑茶

「酸味」の食材:トマト・小豆・レモン

体調に合わせて、それぞれの食材を意識的に取ることで、身体の内側から夏ならではの、お悩みを解消することができます。ぜひ、毎日のお献立に取り入れてみてくださいね。但し、一つのものを摂りすぎることはおすすめできませんので、バランス良く適量とることがポイントです。

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今回は、夏を乗り切るための東洋医学の知恵をご紹介しました。

東洋医学は、人の体や心の状態をしっかりと観察し、症状の原因となっているバランスが崩れた箇所を補い、整えることで健やかに過ごせるように改善していくもの。

毎年、夏になると夏バテしてしまったり、食欲不振やだるさなどにお悩みなら、一度東洋医学の視点でご自身を見つめなおしてみませんか?
店頭や漢方相談で、漢方薬剤師に相談してみるのもおすすめです。

なかなか改善されなかった不快な症状から、スッキリ解放される効果が期待できますよ。

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「Naturalist Web Magazine」お届け内容は、いずれも知識と経験豊富な自然の薬箱スタッフが、 自信を持ってお勧めする内容ばかり。「Naturalist Web Magazine」の更新は、毎週火曜日を予定していますのでぜひご覧ください。どうぞお楽しみに。

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次回の「Naturalist Web Magazine_Vol.12」では、

「 暑気払いの薬膳 」をお届けします。

暑気払いとは、暑さや体にたまった熱気を払うことで、気を正して元気を取り戻すこと。日々の食事に薬膳の考え方を取り入れてこの夏を乗り切るヒントをご紹介します。

※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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あなたとあなたの大切な人を守るために、そして、新しい日常を楽しむために、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

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過去の<Naturalist Web Magazine>バックナンバー

Vol.10_お顔と頭のツボでリフレッシュ!

Vol.9_今だから知っておきたい!運動と免疫の関係って?

Vol.8_ 手指消毒の手荒れが気になる今!ハンドケアアイテムを手作りしよう!

Vol.7_むくみを解消!内湿を取るための薬膳

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Vol.5_巣ごもり不調を改善!〜セルフお灸のススメ<応用編>~

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Vol.1_知っておきたい!肺炎と免疫機能のこと 

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