花粉症のセルフケアに役立つ「中医学の知恵」

いつもご利用ありがとうございます、自然の薬箱の千田です。

オミクロン株による感染拡大の勢いがとどまるところを知りません。一度は近づいた人と人との距離が再度広がってしまった今、もう一度笑顔で傍に寄り添える日が来るまで、健やかに過ごせるよう心がけたいものですね。

第2・第4火曜日にお届けしております、自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。

新しい日常が定着し始めた今、皆様が健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.90をお届けいたします。

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オミクロン株の急速な拡がりが気になるところですが、そんな心配をよそに、やってくるのがスギ花粉の飛散の時期。自然の薬箱1階にある漢方相談薬局では、すでに1月中旬ごろから鼻水や頭痛、耳の奥のかゆみに肌のかゆみなど、スギ花粉に反応している方がご来店され始めています。

少しでも症状を楽にするために、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤などの花粉症のお薬を飲んでみても、今度は眠くなったり、粘膜が乾燥したりといった副作用でつらい思いをされて、「春はつらい季節」と春を楽しむことをあきらめてしまっている方も多いのではないでしょうか。

花粉症は「一度なったら治らない」「春は我慢の季節」と諦める前に、中国の伝統医学である中医学の知恵が役立ちます。今年は、中医学のセルフケアに取り組んでみませんか?

中医学では、漢方のほかにも体質や現れている症状に合わせた食養生など、様々なセルフケア方法があります。体質改善や症状を緩和するために、今から中医学のセルフケアに取り組んで、ツボや漢方薬などを上手に利用してみてませんか?

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<目次>

 1. 中医学からみた花粉症って?

 2. 花粉症の体質改善のためのセルフケア 

 3. 花粉症の症状の違いによる中医学的タイプ分けとセルフケア 

 4. 花粉症の中医学的タイプ別おすすめ漢方薬・薬草


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1. 中医学からみた花粉症って?

中医学では春は「風」が活発になる季節です。過剰になると邪気の一つである「風邪(ふうじゃ)」となり、埃とともに花粉やウイルスなどを巻き上げて運んで体内に侵入させます。

「風邪」はとても軽く、体内でも上半身や体表面に症状を起こしやすいといわれ、鼻炎や皮膚炎、頭痛やめまいなどの症状を起こしやすいと考えられています。これは、まさに花粉症の症状ですね。

二千年前に書かれた中国医学の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」には「正気存内、邪不可干」という記載があります。これは、「正気(せいき)が充実していれば、病気に侵されにくい」という基本的な考えです。「正気」とは、体内の「気」「血」「水」がバランス良く整っていることで生み出されるエネルギー全体、体の抵抗力ともいえます。正気が強ければ、病気の原因となる「邪気」の侵入や、侵入した後に正しく対処できることで、過剰な反応を抑えることができます。

つまり、中医学では正気が整うことで、花粉症の症状が起こりにくくなると考えているのです。

また、「気」のエネルギーの中でも、体の表面(鼻やのど、目、などの粘膜や皮膚)で体を護っている気を「衛気(えき)」といいます。衛気は体表を巡り、体を温めたり、邪気の侵入を防いだり、毛穴の開閉をコントロールしたりと、発汗を調整する働きを担っています。このように、毛穴は体温調節をするなど重要な役割を果たしているのですが、衛気が弱まって引き締める力が低下し、毛穴が開いている状態では邪気が侵入しやすくなると考えられます。

だからこそ、衛気をしっかり働かせて花粉症を改善するためにも、一時的に症状を抑えるだけではなく、正気や衛気を高めるように体質を改善していくことが大切です。


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2. 花粉症の体質改善のためのセルフケア

ここまで、体の「正気」を整えること、なかでも体の防衛力となる「衛気」を強くすることが大切だということをお伝えしました。

でも、実際に花粉症は体力が低下している人だけではなく、体力には自信があるという方でも悩まされている方も多いですよね。いくら体力に自信があっても、過信して日々無理を重ねていたり、生活習慣が乱れていると衛気は低下していきます。

衛気を低下させないためには一番は無理をしないことが大切ですが、どうすればよいかはなかなかわかりませんよね。

そんな時こそ、中医学の養生法をヒントにセルフケアに取り組んでみましょう。

衛気を充実させるためには、「肺」と「脾胃(消化器系)」を元気に保つことが大切。というのも、気は、肺から取り込まれる大気のエネルギーと、脾胃が消化吸収する食物の栄養によって作られるからです。また、肺は「衛気」を全身の体表に巡らせる働き、脾胃は体内の水分を巡らせる働きも担っています。

普段から呼吸器が弱かったり、風邪を引きやすかったり、胃もたれや食欲不振などの胃腸の不調を感じている方や疲れやすい方は、特に意識して「肺」と「脾胃」を整えるように心がけましょう。

  現れやすい症状 セルフケア
肺の不調 呼吸器系が弱い、風邪を引きやすく治りにくい、息切れ、汗が出やすい、顔色が白い、舌が大きい <食養生>白きくらげ、白ごま、百合根、はちみつ、鶏の手羽、豚足などの肺に潤いを与え、働きを良くする食材を選ぶ。
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<生活の養生>早起きをして、新鮮な空気を深呼吸でとりこむ。
脾胃の不調 食欲不振、胃もたれ、膨満感、軟便、便秘、疲れやすい、顔色が黄色い、手足が冷える、舌に苔が多い、舌の色が白っぽい <食養生>米、大豆製品(豆腐、湯葉、豆乳など)、いんげん豆、グリーンピース、山芋、クコの実、ナツメ、りんごなどの脾胃を補って、元気を補う食材を選ぶ。野菜をしっかり摂り、味の濃いものや脂っこいもの、乳製品は控えめにする。よく噛んで食べる。
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<生活の養生>過剰なストレスを避け、7時間程度の質の良い睡眠をしっかり取る。


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3. 花粉症の症状の違いによる中医学的タイプ分けとセルフケア

私たちは「花粉症」と一括りにしがちですが、実は、体質の違いや気候の変化といった寒さが残る初春の頃と、暖かくなってきた晩春では、花粉症の症状も異なります。

そのためにもずっと同じケアを行うのではなく、ご自分の症状に合ったセルフケアの方法を、実践していくことが大切です。ここでは、症状ごとにお勧めのセルフケアをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

主なタイプ 現れやすい症状 セルフケア
初春に多い水鼻の
「寒」タイプ
透明でサラサラな鼻水、くしゃみ、冷え症、顔が白い、頭痛、舌の色が白い <食養生>ねぎ、生姜、シナモン、紫蘇、三つ葉、春菊、パクチーなど冷えを発散して体を温める食材を摂る。
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<生活の養生>冷えないように服装に気をつけ、入浴、運動などで体を温める。
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迎合、合谷のツボを活用する
晩春に多い鼻詰まりの
「熱」タイプ
粘性で黄色い鼻水や痰、鼻詰まり、体の熱感、目の充血、喉の痛み、口渇、冷たいものが飲みたい、舌の苔の色が黄色い <食養生>きゅうり、菜の花、セロリ、クレソン、タラの芽、タケノコ、イシモチ(魚)、どくだみ茶、ミントティー、スイカズラ茶、菊花茶など熱を冷ます食材を摂る。
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<生活の養生>体にこもった熱を冷まします。適度な水分摂取が必要ですが、水分のとりすぎ、脾胃の冷えに注意が必要。
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上迎合、風池、合谷のツボを活用する
水分代謝が低下した
「湿」タイプ
大量で粘性のある鼻水、鼻詰まり、頭重、まぶたのむくみ、食欲不振、軟便、口が粘る、舌の苔が厚い <食養生>紫蘇、冬瓜、大根、大豆製品、春雨やモヤシ(緑豆)、杏仁(杏仁豆腐)、ハトムギ茶、どくだみ茶、びわの葉茶などの利水作用があり、脾胃の働きを整える食材を摂る。
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<生活の養生>胃腸の調子を整え、適度な運動やマッサージ、お灸などで水分代謝を促します。お酒は控え、睡眠時間をしっかりとる。
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大椎、合谷のツボを活用する
目のかゆみが強い
「熱」タイプ
目のかゆみ、充血、まぶたの赤み・腫れ、黄色い目やに、舌の先が赤い <食養生>きゅうり、菜の花、ふき、クレソンや、ミントティー、桑の葉茶、蓮の葉茶、菊花茶などの体内の邪気を発散して熱を冷ます食材を摂る。
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<生活の養生>目を触らないように注意し、目薬なども活用し、目が疲れすぎないようにしっかり休養をとる。
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魚腰、太陽、晴明、承泣などのツボを活用する
皮膚の痒みが強い
「熱」タイプ
「湿」タイプ
皮膚のかゆみ、赤み、皮膚の乾燥、あるいは、皮膚のジュクジュクした状態(湿) <食養生>ごぼう、とんぶり、ハマボウフウ、どくだみ茶、ハトムギ茶、スベリヒユ茶などの余分な熱を取り、皮膚の炎症を抑える食材を摂る。
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<生活の養生>おしろいやファンデーションで皮膚をカバーしたり、花粉を避けるスプレーなどを活用しながら、患部を清潔に保ち、保湿を行う。脾胃を整え、ストレスを避け、睡眠を十分にとる。
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足三里、三陰交などのツボを活用する


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4.  花粉症の中医学的タイプ別おすすめ漢方薬・薬草

続いては、花粉症の諸症状に合わせた代表的な漢方薬をご紹介しましょう。

ご自身の体調と照らし合わせながら、漢方薬や薬草とセルフケアを組み合わせて症状を緩和し、体質改善を行ってくださいね。

「肺」の元気不足

漢方薬・薬草 主な働き
玉屏風散
(ぎょくへいふうさん)
屏風のように衛気を高める処方です。虚弱で疲労しやすい方で、じわじわと汗が漏れ出たり、寝汗がある場合に適します。体質改善にも症状を緩和する場合にも使われ、妊婦や、あまり苦くないので小児にも使いやすい漢方薬です。
参茸丸
(さんじょうがん)
動物生薬も配合された生命力の根本である「腎」を強力に補う処方です。同時に「肺」や「脾胃」も補い、体力をつけ、内分泌系を安定させ、免疫を整えるように働きます。

「脾胃」の元気不足

六君子湯
(りっくんしとう)
胃腸が虚弱で、胃の中で水の音がしたり、逆流性食道炎、胃もたれなどがある方に適します。体内の水分の調節を行い、体や皮膚に栄養や水分を巡らせ、元気にしていきます。上記のような症状のある方の体質改善にも使えます。
補中益気湯
(ほちゅうえっきとう)
精神的、肉体的な疲労に良い処方です。胃腸機能も高め、元気を補います。また、衛気を高めるオウギという生薬も配合されています。体力が低下し、疲れやすい方の体質改善として使えます。

初春に多い水鼻の「寒」タイプ

小青竜湯
(しょうせいりゅうとう)
体が冷えている方のサラサラの水様の鼻水や痰が出る方、目のかゆみや涙目などに用います。体を温め、水分代謝を整えます。胃腸虚弱な方や妊娠している方は使用を控えましょう。この場合は、苓甘姜味辛夏仁湯や藿香正気散などが利用できます。
麻黄附子細辛湯
(まおうぶしさいしんとう)
寒がりで、新陳代謝が衰え、体力のない方のくしゃみ、鼻水、力のない咳などに用いられます。鼻腔が乾燥している方、妊婦又は妊娠している可能性のある方は避けましょう。胃腸虚弱な方、心機能が衰えている方、高齢者、小児は用量に注意して用います。

晩春に多い鼻詰まりの「熱」タイプ

銀翹解毒散
(ぎんぎょうげどくさん)
清熱作用を持つ処方。粘性で黄色の鼻水、鼻詰まりを主とし、鼻腔が乾燥して熱を持ち、咽が腫れて痛んだり、副鼻腔炎を併発したりする場合に用いられます。冷えが強い方には用いない。
蒼耳散
(そうじさん)
清熱作用と膿汁排出促進作用を持つ炎症を和らげる処方。鼻詰まり、粘性で黄色の鼻水が多い、鼻汁が咽喉に下る、嗅覚減退、頭重、注意力散漫などの症状に用います。

水分代謝が低下した「湿」タイプ

藿香正気散
(かっこうしょうきさん)
体を温め、余分な水分を排出する処方です、夏風邪や胃腸風邪の処方として有名ですが、水鼻が止まらない場合に用いられます。胃腸の不調や倦怠感にも良いので、小青竜湯が使えないときに便利な処方です。
五苓散
(ごれいさん)
偏った水分代謝を整える処方です。水鼻、むくみ、口渇、尿量減少、めまいなどがあり、雨の日に不調になるような方に適します。

目のかゆみが強い「熱」タイプ

越婢加朮湯
(えっぴかじゅつとう)
清熱作用を持つ処方です。目の痒みや充血、まぶたのむくみや炎症に適しています。鼻粘膜のむくみや炎症で鼻詰まり、皮膚のかゆみがあるような場合にも用いられます。妊娠している方は使用を控えましょう。
洗肝明目湯
(せんかんめいもくとう)
頭部の熱症状による目の痒み、充血、腫れ、疼痛や、目の乾燥、目からくる頭痛に至るまで用いることができ、アレルギー性の症状にも用いられる。

皮膚の痒みが強い「熱」タイプ

消風散
(しょうふうさん)
「風邪(ふうじゃ)」を消すという名前のついた処方。清熱と湿をとる作用も持ち、熱感があり、分泌物が多く、皮膚がかゆい場合に用いられる。体力が極端にない方や、胃腸虚弱の方には適しません。
五味消毒飲
(ごみしょうどくいん)
清熱解毒作用を持つ処方です。皮膚のかゆみや、化膿した湿疹、赤みを帯びた湿疹に適します。

皮膚の痒みが強い「湿」タイプ

竜胆瀉肝湯
(りゅうたんしゃかんとう)
湿熱をとる処方です。ジュクジュクした湿疹、痒みや目のかゆみなどにも用いられます。体力が極端にない方には適しません。
スベリヒユ茶 スベリヒユは馬歯莧(ばしけん)ともよばれます。皮膚と関係が深い腸の調子を整える働きを持ちます。体質改善に用いると良いお茶です。

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今回は、花粉症のセルフケアにおすすめの漢方薬を数多く紹介しました。漢方薬をご自分で選ぶのは、難しいと思われるかもしれません。そんな時は、是非、自然の薬箱にご相談ください。1階の漢方相談薬局では、漢方薬剤師がしっかりとお話を伺い、体質や現れている症状から漢方薬をお選びしています。健康相談としてお気軽に、お声掛けいただければと思います。

2月28日までは<漢方相談+10日分漢方薬 お試しキャンペーン>を、「漢方がはじめての方」や「しばらく漢方をお休みされていた方」を対象に行っていますので、ぜひご利用ください。

漢方相談+10日分漢方薬 お試しキャンペーン の詳細は こちら >>

この機会に、中医学で花粉症の季節を乗り切ってみませんか?今まで辛かった春が好きになるかもしれませんよ。

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<次回「Naturalist Web Magazine」のお知らせ>

~2月22日(火)配信予定 ~

「Naturalist Web Magazine_Vol.91」では、

「インストラクターに質問!ヨガを始めたきっかけって?」をお届けします。

いつもとは少し趣向を変えて、毎日スタジオでヨガレッスンを行っているインストラクターにフォーカスしてお届けいたします。

どうしてヨガを学ぼうと思ったの?ヨガの資格ってどうやってとるの?といった普段はなかなか聞くことのできない素朴な疑問を、自然の薬箱ボディーワークスタジオ インストラクターであるERIが語ります。ヨガの本場、インドで行ったヨガ修行についてご紹介しますので、お楽しみに。

※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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~「Naturalist Web Magazine」は、第2・第4火曜日 配信予定~

今後も、自然の薬箱ならではの様々な情報を予定しています。どうぞお楽しみに。

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