夏バテしている場合じゃない!夏に役立つ漢方薬

局地的な豪雨、さらに記録的な長雨と、異例尽くしだった今年の梅雨もようやく明け、夏本番がやってきました。

例年なら、これから楽しいおでかけの予定を考えたりすることで、梅雨の間に溜まったストレスも発散してワクワクする時季ですね。でも、あっという間にやってきた新型コロナウイルス第2波の影響を考えると、今年はステイホームで新しい楽しみを見つける方がよさそうです。

さらに、少しでも感染リスクを下げるために、改めて「マスク着用と手指の消毒」「三密を避ける」「不要不急の外出は控える」などの予防を徹底しながら過ごす夏になりそうです。

毎週火曜日にお届けしております自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。

皆様が穏やかな日常を取り戻せるその日まで、健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.15をお届けいたします。

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新型コロナウイルスの感染予防の観点から、今年はこれまでと違った生活環境下で酷暑を迎えることになります。

梅雨が明けた途端、日照時間が増えるに従い最高気温が35度前後と、厳しい暑さが続きます。今年は梅雨が長引いたため、身体を暑さにならす間もなくいきなり真夏を迎えるようなもの。さらに、マスク着用がスタンダードになりつつある今、体内に熱をため込んでしまいがちです。そのため今まで以上に、夏バテや熱中症にかかりやすい状況になっています。

そこで今回は、自然の薬箱の漢方薬剤師 岡 朱見子より「夏バテしている場合じゃない!夏に役立つ漢方薬」と題して、今年ならではの夏を乗り切るためにおすすめの漢方薬をご紹介いたします。

環境省と厚生労働省から発表された「『新しい生活様式』における熱中症予防行動のポイント」の解説や、夏バテと免疫機能の関係、夏バテ気味の方や予防に最適な漢方薬など、コロナ禍の夏だからこそ知っておきたい情報をお届けします。今までと同じとはいかない夏を乗り切るためのヒントとして、是非ご活用ください。

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<目次>

1.自然の薬箱が解説!
「『新しい生活様式』における熱中症予防行動のポイント」

2.夏バテが免疫機能を低下させる?

3.東洋医学的視点でみる「夏バテ」とは?

4.夏バテ対策におすすめの漢方薬とは?

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1.自然の薬箱が解説!『新しい生活様式』における熱中症予防行動のポイント

5月に環境省と厚生労働省から発表された『新しい生活様式』における熱中症予防行動のポイントはご覧になられましたでしょうか?

この啓発資料に掲載されているポイントを、より分かりやすく解説いたしますので、ぜひ実践してみてください。

① 暑さを避けましょう(涼しい服装、日傘や帽子の利用、涼しい場所や日陰への移動)

暑さを避けるのに最適な方法といえば、日傘や帽子などの日除け。女性は日焼け予防の面からも元々意識していらっしゃる方が多いですよね。でも、男性ではまだまだ意識されている方は少ないようです。最近は、男性用のシンプルな日傘も多く販売されています。今年は特に酷暑が予想されているので、まだ日傘をお使いになったことのない方も、この機会にぜひ使ってみませんか。はじめて日傘を使われる方は、傘の内側の涼しさに驚かれるはずです。想像以上に涼しいですよ。

 
② のどが渇いていなくても、こまめに水分補給しましょう

マスクをしていると、なかなか気づきにくいのがのどの渇き。エアコンが効いている室内で、汗をそんなにかいていないと思っていても、予想以上に身体の水分が失われていきます。
大人は、呼吸や皮膚から一日900ml程度の水分が排出されています。排泄などを含めると、体内から排出される水分はなんと2.5リットル近く。私たちは、食べ物や空気に含まれる水分では足りない量(約1.2リットル)を、水を飲むことで補います。しかし、まとめて補えばいいというものではありません。体内から水分は様々な方法でゆっくり失われていくように、こまめに補給することが大切です。水をまとめて一気に飲むと体内の水分バランスが崩れてしまいますので、注意しましょう。
また、炎天下で一気に大量に汗をかくと、汗として大量の水分と共に塩分も体外に排出されます。汗を多くかいた場合は、水分とあわせて塩分も忘れずに補給しましょう。水分と共に塩分を補給する場合は、経口補水液が有効です。
自分で調製するには、1リットルの水、ティースプーン半分の食塩(2g)と角砂糖を好みに応じて数個溶かしてつくることもできます。(引用:大塚製薬HP


③ エアコン使用中も、こまめに換気をしましょう

我慢してエアコンを使わない、というのは禁物です。高齢者は、加齢により暑さを感じにくくなります。そのため、エアコンの使用を嫌がる方も多く、高齢者の熱中症患者の半数以上が、自宅でエアコンを使用しない状態で発生しているといわれています。部屋を冷やしすぎないような温度調整でエアコンをつける、扇風機とエアコンを併用してエアコンの冷風が当たらないようにするなどの工夫をして、室内での熱中症予防をしましょう。
また、新型コロナウイルス対策のためには、冷房時でも定期的に窓開放や換気扇によって換気を行う必要がありますが、一般的な家庭用エアコンでは換気がされません。そのため、エアコンを使用している最中でも窓を開けて定期的に換気をする必要があります。空調メーカーのダイキン工業によると、1時間毎に10分よりも、30分毎に5分の方が効果的に換気ができるとのこと。(引用:ダイキン工業HP
ウイルス対策だけでなく、空気中の汚れや、二酸化炭素の排出もできるので集中力も高まるそうです。リモートワークなどをされている方はぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。なお、お部屋の対角線上の窓やドアを少し開けておくだけで、効率的に換気が行えますよ。


④ 暑さに備えた身体づくりと、日頃から体調管理をしましょう

毎朝決まった時刻に体温を測るようにしておくと、自分の平熱を知ることができ、熱中症などによる発熱に早く気づくことができます。また、ステイホームで外出する機会が少なくなっているので、身体も硬くなりがちです。できるだけ意識して身体を動かすようにしましょう。ただし、酷暑の中での激しい運動は禁物です。朝の涼しい時間に体温測定とあわせて、ラジオ体操を日課にするものおすすめですよ。
最近では簡単に、ラジオ体操のスタンプカードが作れるテンプレートがあったり、スマホでスタンプカードの代わりにチェックできるアプリもあるようです。ご家族揃って楽しみながら体調管理しましょう。


※厚労省の啓発資料に一番大きくかかれていたポイントがこちらです。
⑤ 熱中症を防ぐために、マスクをはずしましょう(屋外で人と2m以上離れている時)

報道でも盛んにとりあげられている通り、酷暑の中でのマスク着用は熱中症のリスクが高まります。でも、一度マスクをつけると長時間つけたままにしている方も多いのではないでしょうか。酷暑になればなるほど、マスクを着けたまま過ごすのは危険です。人と十分な距離が確保できたときには、こまめにマスクを外すなどして、熱がこもらない工夫をしましょう。

また、マスクをしているときは呼吸が浅くなりがちです。マスクを外せるときには、からだの隅々まできれいな酸素が行き渡るよう意識して、ゆっくり深呼吸してみましょう。


酷暑を乗り切るためにも、そして、新型コロナウイルスや夏バテ、熱中症にかからないためにも、「新しい生活様式」にあわせた暑さ対策をしていきましょう。


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2.夏バテが免疫機能を低下させる?

一年の中で、一番免疫機能が低下する季節が「夏」だということをご存知でしょうか。

夏になると風邪をひきやすい方は、夏バテが原因で免疫機能が低下してしまっているのかもしれません。

実は、夏の暑さは知らず知らずのうちにストレスとなり自律神経が乱れがち。自律神経が乱れると、脱水症状や、食欲減退、胃腸障害、睡眠障害などによりに陥ってしまいます。食欲減退による栄養不足や、熟睡することができないために疲労が蓄積されていくことで、いわゆる「夏バテ」の症状が現れるのです。

ところで、「自律神経」とはどのような働きをしている神経なのでしょうか?

自律神経は「交感神経」と「副交感神経」で成り立つ、内臓や血管などの働きをコントロールし、体内の環境を整える神経のことです。

自律神経は免疫機能のコントロールも担っているといわれており、自律神経の乱れである「夏バテ」は、免疫機能のバランスを崩し、低下させてしまう原因の一つとなってしまいます。

新型コロナウイルスの第2波が世の中をおびやかしはじめた今、免疫機能を低下させないためにも、夏バテを予防するのが大切です。

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3,東洋医学的視点でみる「夏バテ」とは?

自律神経の乱れから起きてしまう「夏バテ」ですが、東洋医学ではどうとらえているのでしょうか?

NWMVol.11Vol.12でお伝えしました通り、夏の不調である夏バテは、暑熱が体内に溜まりすぎて「暑邪(しょじゃ)となり、体の気・血・津液(水分)のバランスが崩れることから起こると考えます。特に、汗のかき過ぎには注意を払います。汗をかくことで、からだの潤いである「津液(しんえき)が損なわれるだけでなく、一緒に「気」も消耗してしまうと考えるからです。

気が消耗している「気虚(ききょ)では、疲労倦怠感、動悸、息切れなどが見られ、津液が消耗している「陰虚(いんきょ)では、口の渇き、お肌の乾燥、手足のほてり、のぼせなどが見られます。

「気」も「津液」も少なくなって、これらの症状が両方現れやすい「気陰両虚(きいんりょうきょ)は、元々の体質の方もいらっしゃいますが、高齢の方でもよく見られる状態です。このような状態の方は、より夏バテや熱中症を起こしやすくなります。

夏バテ・熱中症対策に「気」と「津液」が重要であるということはおわかりいただけたかと思いますが、「気」と「津液」を補い、呼吸器の働きを高め潤しておくことは、自分のからだに備わっている免疫機能を強くすることにも繋がるのです。

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4.夏バテ対策におすすめの漢方薬とは?

どんなに気を付けて夏を過ごしていても、食欲が落ちたり、疲れが溜まって夏バテ気味と感じたら「生脈散(しょうみゃくさん)という漢方処方がおすすめです。

「生脈散」は、中国で800年余りの歴史を持つ有名な処方です。

(写真は、生脈散の配合生薬の五味子。5つの味がするといわれる果実です。)

生脈散は、以下の3つの生薬で構成されており、気と陰を補う働きに優れているのが特徴です。

① 人参(にんじん)
代表的な補気の生薬で、消耗した気を補う力に優れ、抵抗力を高めます。

② 麦門冬(ばくもんどう)
消耗した体内の水分を補い、のぼせやほてりを鎮めます。呼吸器系に使われる漢方処方に繁用される生薬です。

③ 五味子(ごみし)
収れん作用があり、必要以上に出過ぎる汗を納めるように働き、邪気の侵入を防ぎます。

いずれの生薬も、体内の水分を生み出す力があります。

「生脈散」は、この3つの生薬のみで作られるシンプルな処方ですが、からだに活力を生み出す優れた効果により今日まで応用され続けているのです。

また、「生脈散」は、夏にお腹を下しやすい方におすすめの「藿香正気散(かっこうしょうきさん)や、血圧や血行不良が気になる方におすすめの「冠心二号方かんしんにごうほう)とも相性が良く、合わせてお飲みいただくことで相乗効果も期待できますよ。

毎年夏バテに悩まされている方は、ぜひお試しください。

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今回は「夏バテしている場合じゃない!夏に役立つ漢方薬」として、漢方薬剤師の視点から、夏バテ予防の対策とおすすめの漢方薬をご紹介いたしました。

夏バテや熱中症予防の対策を行って健康な状態を保っておくことは、新型コロナウイルス予防の対策にもつながります。

健康ドリンクなどで一時的に作る「カラ元気」ではなく、生活や体質を改善した「本当の元気」を手に入れて、今年の夏を乗り切りましょう!

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「Naturalist Web Magazine」お届け内容は、いずれも知識と経験豊富な自然の薬箱スタッフが、自信を持ってお勧めする内容ばかり。「Naturalist Web Magazine」の更新は、毎週火曜日を予定していますのでぜひご覧ください。どうぞお楽しみに。

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次回の「Naturalist Web Magazine_Vol.16」では、

「コロナ太りを解消するには?」をお届けします。

コロナ禍の今、外で身体を動かす機会がぐんと減り、体重ケアに敏感になっている方におすすめ!自然の薬箱ヨガインストラクターより、ダイエットの基礎知識を通して、これから、世の中にあふれているダイエット情報の善し悪しをご自身で判断できるようなヒントをご紹介します!

※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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あなたとあなたの大切な人を守るために、そして、新しい日常を楽しむために、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

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過去の<Naturalist Web Magazine>バックナンバー

Vol.14_鍼灸師おすすめ!夏のマスク不調の解消&予防法!

Vol.13_健やかで美しい暮らしのためのあれこれ

Vol.12_薬膳で暑気払い!酷暑を乗り切ろう!

Vol.11_知っておきたい!東洋医学の知恵と夏の過ごし方

Vol.10_お顔と頭のツボでリフレッシュ!

Vol.9_今だから知っておきたい!運動と免疫の関係って?

Vol.8_ 手指消毒の手荒れが気になる今!ハンドケアアイテムを手作りしよう!

Vol.7_むくみを解消!内湿を取るための薬膳

Vol.6_長期戦に備えよう!慢性疾患のある方も必見!身体を整えるための漢方薬

Vol.5_巣ごもり不調を改善!〜セルフお灸のススメ<応用編>~

Vol.4_お灸で免疫機能アップ!~セルフお灸のススメ<基本編>~

Vol.3_ストレスに負けない!心と身体を作る小さなアイデア 

Vol.2_腸活で<免疫機能>をキープ&アップ! 

Vol.1_知っておきたい!肺炎と免疫機能のこと 

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