まだまだ注意!秋の「脱水症状」
9月も半ばとなりました。まだ、日中は30度近くなる日もありますが、朝晩は比較的過ごしやすい気温になり、秋の気配も少しづつ漂いはじめています。引き続き、新型コロナの感染予防をしながら、秋ならでは景色や味覚を楽しみたいものですね。
毎週火曜日にお届けしております自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。
皆様が穏やかな日常を取り戻せるその日まで、健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.21をお届けいたします。
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長梅雨が明けた途端に猛烈な暑さとともに始まった2020年の夏。全国各地で40度を越える地域もあり、自然の薬箱がある名古屋市でも、8月3日に観測史上最高気温の40.3度を記録しました。
そのため、例年に比べても熱中症の搬送者数が増加しつづけ、熱中症に対する注意喚起をするための「熱中症アラート」も発令されたのも記憶に新しいところです。
熱中症を引き起こす原因の一つである「脱水症状」は、夏ならではの症状と思いがち。でも、秋から冬にかけてが第2のピークといわれています。
そこで今回は、自然の薬箱のヨガインストラクターの田島理帆より「まだまだ注意!秋の『脱水症状』」と題して、脱水になると身体にどのような変化が起こるのか、脱水を防ぐために効果的な水分補給はどんなことをすればよいのかをお伝えしていきます。
まだまだ残暑厳しい日が続きます。「脱水症状」を引き起こさないように、上手な水分補給の方法を学びましょう!
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<目次>
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1.脱水症状ってどんなもの?
「脱水症状」はよく聞く言葉ですが、実際には何が原因でどんな症状が出るかをご存知の方はそれほど多くないのではないでしょうか。
脱水症状は身体の中の必要な「体液」と呼ばれる水分が不足していること。体液は、単なる水ではなく、ミネラル等の電解質やタンパク質など様々な成分を含んでいて、生命を維持するために様々な役割をしています。
私たちの身体にとって、「脱水」が起きることは、生命維持に関わる大切な成分を失う事につながります。そのため、初期は喉の渇きや大量の汗、めまいや食欲不振といった比較的軽度な症状ですが、進行してしまうと意識障害や、腎不全や聴力損失など、重篤な症状を引き起こしてしまいます。
さらに、脳梗塞、心筋梗塞のリスクにもなるともいわれている、非常に危険な状態なのです。
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2.水分と私たちの身体の関係とは?
失われてしまうと、命の危険につながるほど大切な水分。「人の身体は水分でできている」といわれる通り、水分が身体を占める割合は、個人差はあれど、新生児で90%、成人で約60%、高齢者で50%程度といわれています。
身体の半分以上を占める水分ですが、ただ乾きを潤しているのではなく、様々な役割をこなして、私たちの命を支えてくれています。実際に水分が担っている役割を、いくつかご紹介しましょう。
水分の役割ー①
<必要なものを運搬して不要になったものを排泄する>
体内に取り込まれた栄養素は、体中をめぐっている血液によって、体の隅々へ送られています。血液の大部分は水分で占めており、栄養素は水分に取り込まれた状態で運ばれていきます。さらに、栄養素を届けた後は、体内で発生した老廃物や炭酸ガスを取り込み、尿や汗、呼気として体外へ排泄する役割も担っています。
水分の役割ー②
< 体温を一定に保つ >
人の身体は、常に代謝を繰り返しています。体内で代謝がなされる際には、エネルギーが消費され、体熱が生み出されているのです。代謝によって生まれた体熱は、水の温まりにくく、冷めにくい性質を利用して、血中の水分が身体のすみずみに伝えます。
また、「不感蒸泄」といわれる皮膚や呼気を通じて自然に失われる水分の蒸発は、気化熱によって体温を調節する役割も担っています。さらに、気温の上昇や運動、カゼの発熱などで体温が高くなった時に「発汗」により汗をかきます。この「発汗」も、汗の水分が皮膚の上で蒸発するときの気化熱により、体温を常に一定に保つ働きをしています。
水分は、私たちの体温を調節してくれる大切な成分なんですね。
水分の役割ー③
< 消化や代謝を円滑にする >
体液は体中を巡って栄養を届けたり老廃物を回収する「溶媒」と呼ばれる働きをしています。体液が不足すると、肝臓や消化器といった臓器を巡る血液量が減ることで、消化する力が弱ったり、必要な栄養素を配ったりすることができなくなって、代謝が落ちる原因になります。体液は、消化や代謝を円滑にするためにも必要不可欠なものなのです。
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3.秋の「かくれ脱水」に注意!
酷暑の時には気にかけている水分補給ですが、涼しくなるとそれほど意識しなくなるもの。でも、秋は「かくれ脱水」が進行しやすい季節といわれているのを、ご存知でしょうか。
「かくれ脱水」とは脱水の一歩手前で症状が出ていない状態。特に、気温の変化が激しく、身体が変化に慣れていない春や秋に多いのが特徴です。季節の変わり目で、気温の変動が激しいうえに、身体がついていけず、体温調節機能が乱れがちになるのが原因の一つといわれています。また、秋は空気が乾燥する季節、皮膚表面から知らず識らず水分が失われる不感蒸泄が増えることも関係してきます。
この時期の脱水は、つらい症状が出てこない限り気づきにくいため、症状が重症化してから発覚するケースが多く、特に注意が必要です。
さらに、今年の夏は猛暑が続いた上に、9月になっても残暑が厳しかったため、身体は想像以上にバランスが崩れやすい状態です。また、マスク着用が日常となり、喉の渇きに鈍感になってしまうこともあり、今まで以上に「かくれ脱水」のリスクも高まる事が予想されています。特に、脱水症状に陥りやすい基礎疾患をお持ちの方や、ご高齢の方などは、意識して水分をとるようにしましょう。
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4.水分が不足すると起こる身体の変化って?
秋でも陥りやすい脱水症状ですが、水分が不足するとどのような症状が起こるのか、以下の表で確認してみましょう。
脱水が体重の2%以上になると、体調に大きな変化が出てきます。特に、激しい運動や長時間暑い環境下で活動した後、体重が2%以上減少している場合は、脱水の可能性が非常に大きい状態です。経口補水液などで水分を補いましょう。症状がひどい場合は、速やかに医師の診察を仰ぐ必要もありますので、注意してください。
また、水分は血液の運搬の働きがあるため、水分が足りないと血液がドロドロになり、脳梗塞、心筋梗塞のリスクにもつながってきます。
夏に脳梗塞や心筋梗塞が多いのは、脱水も原因の一つとしていわれるほど・・・脱水は命に関わる大きな危機の一つなのです。
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5.効果的な水分補給の方法とは?
私たちは、毎日水分を摂取し排出するを繰り返しています。水分不足にならないようにするには、一日の必要摂取量を知ることが大切。
まずは、成人の一日の水分必要量と摂取量から確認してみましょう。
< 成人1人当たり一日の水分必要量と排出量 >
一日の水分必要量(約 2.5L) | 一日の水分排出量(約 2.5L) | ||
食事 | 1.0 L | 尿や便 | 1.6 L |
体内で作られる水分 | 0.3 L | 呼吸や汗 | 0.9 L |
飲み物 | 1.2 L | ※注:目安であり個人差あり |
毎日水分を摂取していても、排せつや呼吸、汗としてたくさんの水分が身体の外に排出されていきます。改めて見てみると、私たちの体はたくさんの水分を必要としているのだと分かりますね。
次に脱水症状を防ぐために効果的な、水分補給の方法をいくつかご紹介しましょう。
< 水分補給の4つのタイミングを知ろう >
のどが渇く前に 水分摂取を! |
のどが渇いた時は、もう脱水のサイン。のどが渇く前に水を飲みましょう。 |
起床時と入浴前には 1杯の水を飲もう! |
就寝中と入浴中は、たくさん汗をかき、水分が不足しがちです。起床時、入浴前にコップ1杯の水を飲むことを心掛けましょう。 |
まとめて飲むのではなく こまめに飲もう! |
一度に大量の水を飲むと水分過多になり、尿量が増えたり、体液の濃度が薄まってしまうことがあります。少量の水をこまめに飲むように心掛けましょう。 |
激しい運動をした際には 一緒に塩分補給を! |
暑くて汗をたくさんかいたり、激しい運動をした場合、体内では水だけではなく、塩分(ナトリウム)も不足します。大量の汗をかいたあとは塩分を含んだスポーツドリンクなどで、水分補給と塩分補給をするようにしましょう。 |
< 飲み物だけじゃない!?食物に含まれている水分量を知ろう >
水分補給というと、「飲み物を飲む」ことに気を取られがちですが、一日当たり2.5リットルもの水分を「飲む」ことだけで補うことはできません。私たちは飲み物からだけでなく、食物からも水分を補給することで、一日の必要量を摂取しているのです。
では、実際に食物にはどれくらいの水分が含まれているのでしょうか?代表的な食品が含む水分量を確認してみましょう。
このほか、夏に大人気の「すいか」も、非常に水分量の多いことで知られています。なんと、すいかの約90%は水分!水分補給にはぴったりなんですね。
ところで、「甘さを強く感じる!」と、すいかに塩をかけて食べる方も多いのではないでしょうか。これはまさに水分補給の理にかなっている食べ方。塩をかけて食べることによって、水分と塩分を同時に補給できます。
夏の風物詩の一つとして受け継がれてきた「水かに塩をかける」食べ方は、実はしっかりとした目的があったものなんですね。
< 補給する水分の量はどれくらい? >
食品から摂取できる水分ですが、足りない分は飲んで補います。では、実際にどれくらいの水分を飲めば補えるのでしょうか。
食品から摂取できる水分を差し引いても、成人の場合で一日あたり約1.5リットルの補給が必要になります。職場に600ml~700mLの水筒を1~2本持っていったり、リビングなどに置いて飲み切るように意識してみてはいかがでしょうか。
さらに食事の時には、その水筒とは別に水分を飲むことで、意識的に水分を取ることができるようになります。ただし、あくまでも摂取量は目安で必要な水分量には個人差があります。必要以上の水分摂取は、逆効果になることもありますので注意してください。
胃の中でお水の音がチャポチャポする、身体がむくむ、夜間にトイレに何度も起きるなどの症状がある場合は、水分の量を調節するなど、体調に合わせて飲み方を検討してみましょう。
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季節を問わず、こまめに水分補給をすることは、私たちが生命を維持していくために不可欠なこと。「自分は大丈夫」と思わずに。しっかり水分補給を心掛けるとともに、体調がおかしいなと感じたら、医師に相談するなど、早めに対応をとるようにしてください。
まだまだ残暑が厳しい9月ですが、飲み物や食べ物からしっかりと水分をとって、元気で健康に過ごしていきましょう!
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「Naturalist Web Magazine」お届け内容は、いずれも知識と経験豊富な自然の薬箱スタッフが、 自信を持ってお勧めする内容ばかり。「Naturalist Web Magazine」の更新は、毎週火曜日を予定していますのでぜひご覧ください。どうぞお楽しみに。
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次回の「Naturalist Web Magazine_Vol.22」では、
「秋の養生~「温燥」のための薬膳 」をお届けします。
秋は過ごしやすい季節だと思われていますが、実は体の変化に意識を向けておかないと、日によって寒暖差が大きいために、体調を崩しやすい季節。秋の前半「温燥」と呼ばれる時季にスポットを当てて、快適に過ごすポイントを薬膳の視点で解説いたします。
※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。
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