春のおとずれ ~立春のころの養生法~

年が明けて早いもので、もう2月。寒さもピークを迎えますね。厳しい寒さで免疫力を落とさないためにも、マスクはもちろん、手袋やマフラーなどで身体をしっかり守りたいものです。

毎週火曜日にお届けしております、自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。

皆様が穏やかな日常を取り戻せるその日まで、健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.40をお届けいたします。

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本日2月2日は、「鬼は外!福は内!」の声掛けとともに行う豆まきや、その年の恵方に向かって黙々とほおばる恵方巻でおなじみの節分です。あれっ?と思われた方もいらっしゃるのでは…そう、例年なら節分は2月3日。今年は、なぜ一日前倒しなのでしょう?

実は、節分は毎年2月3日に固定さているわけではありません。節分はもともと「季節を分ける」ことを意味しており、古来から、各季節の始まりの日(立春・立夏・立秋・立冬)の前日のことを差していたのですが、江戸時代以降は「立春の前日」を節分とすることが多くなり、現在に受け継がれてきました。

では、立春はどのように決められているのでしょう?現代の日本では、国立天文台の観測で「太陽黄経が315度になった瞬間が属する日」を「立春」としており、今までは2月4日又は、2月5日が多かったのですが、今年の立春の瞬間は、2月3日23時59分となるため、ギリギリ1分の差で2月3日に。ちなみに、立春が2月3日になるのは、1897年(明治30年)以来124年ぶりだそうです。

このような、珍しいタイミングで迎えた立春ですが、東洋医学ではこの日から、穀雨(こくう)までの「2月・3月・4月」を春ととらえ、自然界において陰気が徐々に弱くなり、陽気が次第に強くなる時季と考えます。

現実的には、まだ寒さが厳しい時季ですが、私たちの身体はゆっくりと、冬から春への準備を始めるタイミングでもあります。中国最古の医学書「黄帝内経(こうていだいけい)」では、この時季の養生によって、その後一年を健康に過ごせるのかが決まるといわれるほどなんですよ。

そこで今回は、立春から始める「春の養生法」や、春ならではの不快な症状を改善するヒントなどを、おすすめのツボのご紹介と合わせて、自然の薬箱の鍼灸・あん摩マッサージ指圧師 三原優子 がお伝えします。

日常生活に春の養生を取り入れて、これからの1年を健やかに過ごしましょう。

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<目次> 

1.「二十四節気」ってどんなもの?

2.東洋医学の視点から見る春とは 

3.立春のころに現れやすい症状と「肝」の養生法

4.「肝」の養生におすすめのツボ


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1.「二十四節気」ってどんなもの?

今回のテーマである「立春」は二十四節気(にじゅうしせっき)の一つで、暦の上で春が始まる日とされています。

二十四節気ってなに?と思われる方も多いのではないでしょうか。立春の養生法のお話をする前に、まずは「二十四節気」についてご説明しましょう。

古代中国で太陽の動きに基づき農業をするときの目安として作られた暦、二十四節気。一年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにその季節を6つに分けています。二十四節気では、春が最初の節気になるため、立春のころは一年の始まりと考え、最も大切な時季とされてきました。 

日本でも、平安時代から二十四節気が使われていましたが、中国の気候とは違うため、この暦に合わない時季がありました。そこで、江戸時代になると、日本独自の「雑節(ざっせつ)」が取り入れられるようになります。「雑節」とは、季節の移り変りを適確に掴むために設けられた、特別な暦日のこと。日本の風土に合わせ、人々の生活や農作業に照らし合わせて設けられ、私たちの生活の中に自然に溶け込んでいきました。

節分も「雑節」の一つで、他に「彼岸」「八十八夜」「入梅」「土用」などがあります。 昔の人々は、節気に合わせて作物の育て方、日々の過ごし方を変えていくことで健やかな生活を送っていたのですね。 


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2.東洋医学の視点から見る春とは 

二十四節気において春の始まりとされる立春。これからは、寒さが厳しい中にも陽ざしが真冬よりも明るくなり、春が少しずつ近づいているのを感じられますよね。 

東洋医学的な視点でみると、万物が芽吹きはじめる春は、五行(木・火・土・金・水)の「木(もく)」に属し、五臓(肝・心・脾・肺・腎)の「肝(かん)」、五志(怒・喜・思・悲・恐)の「」に相当します。 

五行とは、陰陽五行説と言われる中国古代医学の哲学思想の一つ。五行の「木(もく)」は、木の枝や幹が上や外へ向かって伸びていくような「成長・発展」という特徴があります。

五行 陰陽五行説と言われる中国古代医学の哲学思想の一つ。
自然の万物や人間の心身は、それぞれの性質や働きで五つの要素から成り立ち、互いに繋がりを持ちながらコントロールし合っているという考え方。

陰陽五行説では、臓器や感情も五つに分類し、それぞれ「五臓」「五志」として表します。

五臓 体の構成部分のみを意味するのではなく、それぞれの臓器の人体の生理、病理、精神の働きをも含めた概念です。
五志 感情・情緒・思慮などの活動を5種類に分けたもので、五臓と深くかかわりがあります。

したがって、五臓の「肝」は、臓器としての肝臓だけを指すのではなく、次のような作用も含めて「肝」と表します。

・疏泄(そせつ)作用
「気(き)」と言われる「体の中のエネルギーの流れ」や、「血(けつ)」と言われる「栄養分・血液の流れ」を円滑にして、隅々まで行きわたらせる。

・蔵血(ぞうけつ)作用
血を貯めておき、血流量をコントロールする。

「肝」が正常に作用するようになると、体の隅々に血液や栄養、気のエネルギーが滞りなく行きわたります。

春に現れやすい五志のうちの「怒(ど)」は、気が上逆し、陽気が昂り、陰気が損なわれ抑制が効かなくなって、些細な事でもイライラしてしまいがちになることです。

「肝」が正常に働いているとと、イライラや不安など精神的な不調は改善されていくとされています。 


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3.立春のころに現れやすい症状と「肝」の養生法

春の訪れとともに上がるのは気温だけではありません。私たちの体内でも、気血が上昇し「肝」のはたらきが活発になっていきます。

しかし、この時季は環境の変化などによるストレスや睡眠不足などで、「肝」への負担が過剰になりがちな時。「肝」の働きが乱れると、目の不調や頭痛、めまい、のぼせ、イライラなど上半身に症状が出やすくなります。

春ならではの不調を避けるためには、今から未病先防として養生することが大切です。いつもの生活に取り入れやすい、「肝」の働きを整える養生法をご紹介しましょう。 

「肝」のはたらきを整えるには

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・のんびりと穏やかにすごす時間をつくる
春は「肝」と関係が深い「怒」の感情があらわれやすくなります。一日のなかで、数分でも構いません。イライラしそうになったら、その都度深呼吸してみましょう。

・夜11時には眠りの準備を
「肝」に対応する時間帯は午前1時から3時。この時間に血液が浄化され、貯蔵されます。この時間帯には、すっかり熟睡できているようにしましょう。日の出の時間も早くなるので、早起きして朝日を浴びてくださいね。

・服装は、上半身をやや薄着、下半身は厚着して温かく
「肝」のはたらきが活発になると、気血が上半身に集まりやすくなります。足腰をしっかりと温めて、下半身の冷えから来る腰痛や胃腸のトラブルを防ぎましょう。

 


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4.「肝」の養生におすすめのツボ

丁寧に養生をしていても、時には身体に不調を感じてしまうことがありますよね。そんなときにおすすめしたいのが、手軽にできる「ツボ押し」。私たちの身体には、WHOが認めたものだけでも361個ものツボがあるとされています。その中から、特に「肝」の養生におすすめのツボである「太衝(たいしょう)」と、「足三里(あしさんり)」2つをご紹介します。

不調を感じたら、2つのツボを心地良い程度に親指で押すだけでOK。強く押しすぎたり、「痛い!」と感じるほど刺激するのは厳禁ですが、指の刺激では物足りない方は、台座付きの安全に使えるお灸や、火を使わないカイロ型のお灸を使われるのもおすすめですよ。

ツボ ツボの取り方 こんな時に

太 衝
たいしょう

足の甲の親指と人さし指の骨が交わるところから、やや指先よりのへこみが太衝です。

イライラ、頭痛、冷えとともにのぼせがある場合に最適。

足三里
あしさんり

ひざのお皿のすぐ下、外側のくぼみに人さし指をおき、指幅4本そろえて小指があたっているところです。

免疫機能を高め、消化機能の不調、花粉症・アレルギーに。

 また「肝」と「目」は、経絡(けいらく)と呼ばれる気の通り道で繋がっています。 

花粉の飛散に加え、忙しい時期に目を酷使するストレスで、春は「目」のトラブルが発生しやすい時季でもあります。 

そのような時は、自然の薬箱はり・きゅうルームの、オプショナルメニューでも大人気の施術「くるみ灸」がおすすめです。

眼精疲労にとても良いとされており、漢方の菊花茶に漬けたくるみの殻に、もぐさ(よもぎから作られるお灸の原料)を乗せて行います。目の上にくるみの殻を乗せると、ドーム状のくるみの殻の外側がお灸で温められることにより、殻の内側の菊花茶も蒸気で温められ、まぶたからじんわりと温熱が感じられます。終わった後、目がパッチリして女性に喜ばれるメニューです。

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今回は、立春の意味や、春になると起きやすい不調や対策、養生法などをご紹介いたしました。

あとひと月も過ぎれば、厳しい寒さも終わりを告げて陽気が増し、万物が伸びやかに成長する芽生えの季節がやってきます。冬に蓄えたエネルギーを少しずつ芽生えさせるよう、心と体を動かし始めていきましょう! 

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<はり・きゅうルームからのお知らせ>

・自然の薬箱はり・きゅうルームでは、お灸の使い方やツボの位置をもっと詳しく知りたい方向けに、テーマ別「お灸教室」を開催しております。詳しくは、お気軽にお問い合わせください。
※お灸教室は、感染症拡大予防の観点から、お一人様、ご家族様、ご友人同士でのご案内になります。相席はございませんので、安心して受講できます。

・2021年2月末まで、自然の薬箱5/Rの新規会員になられた方には、オプションメニューの「くるみ灸」をサービス中。現在会員の方よりご紹介で会員になられた場合は、ご紹介頂いた会員の方にも「くるみ灸」をサービスさせていただきます。この機会にぜひご利用ください。

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<次回「Naturalist Web Magazine」のお知らせ>

~2021年2月9日(火)配信予定 ~

「Naturalist Web Magazine_Vol.41」では、

「冬から春に感じやすい『冷え』を撃退して、ポカポカからだを目指そう!」をお届けします。

今の時期、特に多く寄せられる「冷え性なんですが、どうしたらよいでしょう?」というご相談。冬から春に移り変わる今、上半身と下半身との温度差が大きくなり「冷え」を感じやすくなっているのも原因の一つですが、そのほかにも様々な要因があります。そこで次回は、多くの方がお悩みの「冷え」が起こってしまう原因や、日常生活に取り入れられる「冷え体質」を改善していくための工夫などをご紹介します。辛い「冷え」にお悩みの方、必見の内容です。

※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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~「Naturalist Web Magazine」は、毎週火曜日の配信予定~

今後も、自然の薬箱ならではの様々な情報を予定しています。どうぞお楽しみに。

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