五月病やプチうつにならないために!今からできること

いつもご利用ありがとうございます、自然の薬箱の千田です。

桜の時期も終わり、新緑がまぶしい日もあれば、時折、雨が混じる日もありますね。日本では、「二月の雪、三月の風、四月の雨が美しい五月をつくる」、英語圏では、April showers bring May flowers.「4月の雨が5月の花を連れてくる」ということわざがあるそうです。距離はあれど、気候が似ているからでしょうか?遠い場所でも同じように季節を感じているんですね。

毎週火曜日にお届けしております、自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。

皆様が穏やかな日常を取り戻せるその日まで、健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.50をお届けいたします。

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新年度がスタートして、間もなく半月が過ぎますね。進学や、就職、異動などで、新しい環境に身を置いて頑張られている方も多いのではないでしょうか。

でも、気の張りすぎは禁物です。最初は「頑張らなくては!」と気負っていても、今までとは異なる場所や仕事が続くことで、気が付かないうちにストレスを抱えてしまうタイミングでもあります。特に、この時期に気をつけたいのが、「五月病」や「プチうつ」。どちらも、放置しておくと症状が長期化してうつ病を発症してしまうこともあるので、早めのケアが大切なのです。

そこで今回は、「五月病」や「プチうつ」について解説しながら、日常生活でできる予防法や、東洋医学の知恵を生かした、心が少し疲れた時にすぐ実践できるケア方法などをご紹介します。

コロナ禍でストレスフルな今だからこそ、疲れがちな心をいたわって、心身ともに軽やかに春を楽しみましょう!

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<目次>

1. 五月病ってどんなもの?

2. プチうつってどんなもの?

3. どうしたら予防できる?ストレスに押しつぶされる前に実践してほしいこと

4. うつの症状が悪化する前に取り入れたい!東洋医学の知恵


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1.五月病ってどんなもの?

春になると耳にする「五月病」。病という文字がつきますが、正式な病名ではありません。

一般的には、5月の連休後に憂鬱になったり、体調が良くないと感じたり、会社に行きたくないといった、軽いうつ的な気分に見舞われる症状のことをいいます。

主な症状として

・朝、起きれなくなった
・何事も悲観的にとらえてしまう
・やる気が起きない
・なかなか眠れない
・食欲が落ちた
・お腹の調子が悪い

などがあげられます。

新社会人、新入学生がかかりやすいと思われがちですが、転職や転勤、異動など環境が大きく変わることによって、年齢や環境を問わず症状が現れることもあります。

五月病の主な原因は、環境が変化したことに対する「ストレス」や「疲労」が蓄積されたことによるもの。季節性のものとして軽く考えがちですが、放置するとうつ病に進行してしまうこともあります。


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2.プチうつってどんなもの?

プチうつというと、あまり深刻な感じがしないと思われがちですが、それは大きな間違い。うつの傾向が出始めている、心からのSOSが「プチうつ」なのです。

プチうつの原因は、そのほとんどがストレス。環境の変化はもちろん、仕事やプライベートなど日常のいたる所で感じる精神的負担が、引き金となりやすいといわれています。

プチうつと、うつ病の症状や定義は似ているようで異なります。うつ病とは、大うつ病性障害とも呼ばれ、「気分が落ち込む、何をやっても楽しくない、疲れやすいなどの状態が長く続き、日常生活や仕事に支障を感じる」状態が丸1日中、2週間以上続いた場合を指します。

「プチうつ」は、非定型うつ病の別名で、一日中ではなく、

・夕方になると、喪失感や無力感を感じる
・肩こりがひどい
・鉛のように体を重く感じる
・ついつい食べ過ぎてしまう
・何時間寝ても眠い
・突然涙があふれてくる
・前触れなく自己嫌悪に陥る

といった症状が、例えば夕方から夜など一定の時間帯に出てくる状態のことを指します。毎日ではなく、週に数日、症状が出るケースが多いのが特徴といわれています。少しすれば症状が和らいだり、無理をすれば仕事や家事もできるため、周りから仮病を疑われたり、本人も「プチうつ」であることが自覚しにくく、心から発せられているSOSを見逃しやすいのです。


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3.どうしたら予防できる?ストレスに押しつぶされる前に実践してほしいこと

五月病も、プチうつも、どちらもストレスが原因で、心や身体に不調をきたしています。本来であれば、ストレス解消のために、親しい友人や家族に話を聞いてもらったり、運動や娯楽で気分転換をしたいところ。でも、コロナ禍の今、状況的に厳しい方も多いですよね。

そんな今だからこそ、ストレスに押しつぶされそうと感じた時は、すぐ休養を取ることが大切です。休む事も仕事の一つだと割り切って、ゆっくり体を休めましょう。また、睡眠の質を上げることも心掛けてください。深い睡眠は、身体だけでなく心の疲れも取ってくれますよ。適度な運動も、睡眠の質を上げるよいきっかけとなります。

さらに、栄養バランスが崩れると、うつ病に似た症状を発症することがあるという研究結果も多く報告されています。心が疲れがちな時こそ、偏った食事ではなく、「バランスの良い食事」を心掛けましょう。

そして、辛いなと思ったら、信頼できる誰かに話を聞いてもらいましょう。悩みを伝えることが難しければ世間話だけでもOK。会えなければ、オンラインミーティングや電話でも大丈夫です。些細なことだと思っていても、「話すこと」で心が落ち着きます。


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4.うつの症状が悪化する前に取り入れたい!東洋医学の知恵

食事や睡眠が大切だとわかってはいるけれど、なかなか自分ではうまく改善できない…と思ったら、東洋医学の知恵を取り入れてみてはいかがでしょうか?

近年、西洋医学の病に直接アプローチする方法と異なり、東洋医学の心と身体へ同時にアプローチをしていく考え方が、メンタルサポートに大きな効果が期待できると注目されています。

今回は、心の不安や睡眠バランスを整えてくれる漢方薬や、ストレスを感じたときに効果が期待できるツボ、気持ちを入れ替えるヨガの呼吸法をご紹介します。東洋医学ならではのアプローチを取り入れて、疲れた心をサポートしてみませんか?

①気力や心のバランスを整える漢方薬

東洋医学からみると春に関わる臓腑は「肝」、感情は「怒」。春は芽生えの季節であると同時に、感情が高ぶりやすく怒りっぽくなると言われています。これを肝気の昂りと捉えます。

「肝」は身体の気血を巡らす作用があり、本来ストレスを処理しているのですが、春は伸びやかに「肝気(肝にある気)」を巡らせる季節なのですが、「気」の不足や過剰なストレスなどによって肝気が昂りやすく、処理機能が失調をきたして、気血のめぐりが悪くなるといわれています。その結果、五月病のような症状も引き起こしやすくなります。

そのため、気の不足の状態である「気虚(ききょ)」、気の流れが滞った状態である「気滞(きたい)」などの気の不調を整える漢方薬や、肝気を巡らせたり、こころを穏やかにしていく漢方薬など、五月病によい処方が数多くあります。気になる症状別の処方をご紹介しますので、参考にしてみて下さいね。

 

〇気虚を整えるための「補気剤」

六君子湯
(リックンシトウ)
食欲不振、食後の腹部膨満感、胃内に水分が停滞している方に
補中益気湯
(ホチュウエッキトウ)
病気や過労などで疲労困憊した時や、身体虚弱に
参苓白朮散
(ジンリョウビャクジュツサン)
消化不良や軟便、水様性下痢、食欲不振が著しい方や、全身倦怠感がある方に
帰脾湯
(キヒトウ)
疲れやすく胃弱で、さらに過労や疲労が重なり、不安感、不眠の症状がある方、出血傾向があり貧血気味の方に

加味帰脾湯
(カミキヒトウ)

帰脾湯に準ずる。加えてのぼせやほてり、イライラのある方に

 

〇 気を巡らせるための「理気剤」

半夏厚朴湯
(ハンゲコウボクトウ)
胸のつかえや、のどの不快な閉塞感があり、気分が優れない方に
香蘇散
(コウソサン)
頭痛や頭重感、耳鳴り、肩こり等があり、胃腸虚弱からくる腹満・腹痛・悪心・嘔吐を伴うときに
釣藤散
(チョウトウサン)
イライラやのぼせを伴って、めまい、朝方の頭痛、目の充血などがある方に ※中高年以降の高血圧傾向や神経質な方に合う
抑肝散
(ヨクカンサン)
イライラして興奮しやすい。腹満感・食欲不振、筋肉緊張気味。小児のひきつけの処方としても
平胃散
(ヘイイサン)
胃もたれ、胃に食べ物や水が残りやすい方に

 

〇 肝気を整える「疏肝解鬱剤」や、穏やかにする「安神剤」

逍遙散
(ショウヨウサン)
疲れやすくイライラしたり、不安になったりして、やる気が起きない方に
加味逍遥散
(カミショウヨウサン)
逍遙散に準ずる、加えてのぼせ感がある方に
柴胡加竜骨牡蛎湯
(サイコカリュウコツボレイトウ)
イライラや、気分がふさいで不安感があり、よく眠れない方に
桂枝加竜骨牡蛎湯
(ケイシカリュウコツボレイトウ)
よく眠れず、動悸がする、寝汗、脱毛がみられる方に

自然の薬箱の漢方相談薬局では、女性薬剤師が皆様のお話を丁寧に伺ったうえで、お悩みに合わせた適切な処方をご提案しています。お一人で抱え込まず、お気軽にご相談くださいね。

 

②不安を感じたときや、上手く眠れないときにおすすめのツボ

おうち時間が増えた今、ご自宅でセルフお灸をしてみたり、ツボ押しをするのもストレス解消におすすめです。不安を感じたときや、上手く眠れない時におすすめののツボを2つご紹介しますので、ぜひトライしてみてください。セルフケアで、心も体もすっきりしましょう。

膻中(だんちゅう) ⇒ 不安、胸の圧迫感に。
<ツボの場所>
両方の乳頭を結んだ真ん中にあるツボ。
<ケアの仕方>
ピンポイントで押すと強い痛みがある場合があるため、ボディオイルやボディクリームを使用して、胸をさするように優しくマッサージします。お気に入りの香りを感じながら大きく息を吸って、両側の肩甲骨を中心に引き寄せるようして、深呼吸しましょう。

 

内関(ないかん) ⇒  ストレス、不眠、気持ちの落ち込みに。
<ツボの場所>
手首の一番深いシワから、肘に向かって指3本分上がったところ。腱と腱の間にあるツボ。
<ケアの仕方>
腱と腱の間に、指を立てて押し込み、痛みを感じる場所を探して刺激しましょう。

 

③ストレスフルな心を落ち着かせるヨガの呼吸法

現代は、交感神経が常に優位な人が増えてきているため、意識的に副交感神経優位の状態をつくることが、心にも身体にも必要になってきています。ヨガでは、ゆったりと深い鼻呼吸を続けることで、肉体的にエネルギーが供給されることはもちろん、心をゆっくりと落ち着かせることで、副交感神経が優位になっている状態を作ります。呼吸で心のエネルギーをコントロールできるのが「ヨガの呼吸」なのです。

ここでは、ストレスフルでイライラしたり、気持ちが乱れがちな時にチャレンジしていただきたい、初心者の方でもできる基本的な「ヨガの呼吸法」を2つご紹介します。

① 腹式呼吸法 横隔膜を動かす呼吸です。
息を吸った時にお腹を膨らませて、吐いた時にお腹をしぼませるように呼吸をしてみましょう。この呼吸では、副交感神経が優位になっていきます。
② 胸式呼吸法 胸郭を動かす呼吸です。
息を吸った時に胸が広がっていくように、吐いた時に胸が閉じていくように呼吸をしてみましょう。胸の動きが分かりずらい場合は、肋骨を両手で包んで意識をしていくと、動かしやすくなりますよ。この呼吸では、交感神経が優位になっていきます。

いずれの呼吸も、基本的に鼻呼吸で行います。口はしっかりと閉じて、鼻の呼吸に意識を向けてくださいね。

呼吸法について詳しく知りたい方は、こちら>>>をご覧ください。

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今回は、五月病とプチうつについて、それぞれの特徴や、予防法や、ストレスを感じたときに取り入れていただきたい、東洋医学の知恵をご紹介しました。

今はコロナ禍と、春の肝気の昂りが重なって、どうしても心が疲れやすい時期です。深く落ち込んでしまったり、無性に涙が止まらないなどの症状が続く場合は、自分自身で何とかしようとせずに、無理せず医療機関を受診してください。

疲れた心を優しくケアしながら、心も身体も健やかに過ごしていきましょう。

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<次回「Naturalist Web Magazine」のお知らせ>

~2021年4月20日(火)配信予定 ~

「Naturalist Web Magazine_Vol.51」では、

「再拡大に備える!免疫機能をアップさせるためのヒント」をお届けします。

連日メディアでも取り上げられている、新型コロナウイルスの変異株による感染拡大。形を変えて侵入しようとするウイルスから身を守るためには、私たちの身体が持つ免疫機能を正しく機能させることが何より大切です。次回は、再拡大が懸念される今だからこそ、もう一度確認しておきたい免疫機能をアップさせるためのヒントをご紹介します。

※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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~「Naturalist Web Magazine」は、毎週火曜日の配信予定~

今後も、自然の薬箱ならではの様々な情報を予定しています。どうぞお楽しみに。

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