東洋医学の知恵で不眠症予備軍から脱出しよう!
いつもご利用ありがとうございます、自然の薬箱の千田です。
異例尽くしのオリンピックは終わりを迎えましたが、新型コロナウイルスの猛威はとどまることを知りませんね。この事態を乗り切るためには、感染予防はもちろん、免疫機能を衰えさせないような工夫を取り入れることが大切です。暑さに負けず、しっかり食べて、しっかり睡眠を取るように心がけたいものですね。
毎週火曜日にお届けしております、自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。
皆様が穏やかな日常を取り戻せるその日まで、健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.67をお届けいたします。
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暑い夏を上手に乗り切るためにも、心身の疲労をリセットする睡眠は私たちに欠かせないものです。前回のNWM Vol.66で「寝苦しい夜に安眠するためのコツ」をいくつかご紹介しましたが、それでもなかなか寝れないとお悩みなら、「不眠症予備軍」になってしまっているかもしれなせん。
そこで今回は、睡眠環境を整えてみても、なかなか寝つけない、寝てもすぐ目が覚めてしまう、熟睡した気がしないといった症状が気になり始めた方におすすめの、東洋医学の知恵をお届けします。
不眠の原因をもとから改善するにはどうしたらいいかを解説しながら、おすすめの漢方や、ツボ、薬膳的食材もご紹介します。
東洋医学の知恵を上手に活用して、不眠症予備軍から脱出しましょう!
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<目次>
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1.不眠症ってなんだろう?
ベッドに入って目を閉じても、なんだか目がさえて眠れない、眠りが浅いみたいで、寝た気がしない、疲れているはずなのに夜中に何度も目が覚める、といった経験、誰でも一度は体験していますよね。実際、日本人の5人に1人は不眠の症状を感じているといわれています。
一度や二度なら特に問題がありませんが、日常生活に支障が出るほどの寝不足や倦怠感、集中力の欠如などの症状に悩まれるようになるのが不眠症です。
不眠症の原因としては、以下の 5つの「 P」があるとされています。
① 生理的な要因 (Physiological) |
生活習慣や睡眠時の環境 |
② 心理的な要因 (Psychological) |
ストレスや、興奮による精神の昂りなど |
③ 薬理学的な要因 (Pharmacological) |
カフェインやアルコールなどの飲食物や、薬による副作用など |
④ 身体的な要因 (Physical) |
さまざまな病による症状や、頻尿など |
⑤ 精神医学的な要因 (Psychiatric) |
神経症やうつ病など精神疾患など |
実際に、不眠症にお悩みの方は、大きく分けるとこの5つのいずれかに当てはまるそう。最近眠れていないと感じることが増えたなと思ったら、不眠症予備軍になっているかもしれません。5つのうち、どの「P」が影響しているかチェックし、早めに原因を除去するようにしましょう。該当する不眠の要因を取り除くことで改善されない場合は、医師の診察を受け、適切な治療をしてもらうことも大切です。
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2.東洋医学の視点で見た「不眠」って?
では、東洋医学において「不眠症」とは、どのようにとらえられているのでしょうか?
西洋医学では不眠の原因を「5つのP」に分類していますが、東洋医学は不眠の原因を「不寐(ふび)」と呼び、以下の4つに分類します。
① 不適切な飲食 | 暴飲暴食、カフェインやアルコールなどの過剰摂取 |
② 情志(じょうし)の失調 | 喜怒哀楽や恐れなどの感情が過剰な状態 |
③ 労逸(ろういつ) | 過労や多動、考えすぎや休みすぎの状態 |
④ 病後や体の虚弱 | 体力の低下による、体内の「血(けつ)」の不足 |
これらの4つの原因により引き起こされるのが、主に五臓の「心」の不調です。
「心は神明(精神や意識など)を司る」といわれており、私たちの精神を安定させる作用がある「血」の流れを正常に保ってくれています。「心」が乱れると、「血」の流れが不足して精神が不安定となり、不眠の原因になるとされています。さらに、「血」との関わりが深い「肝」や、「脾胃(ひい)」の不調も、「血」の流れを悪くしたり、機能の不足を招くと言われており、不眠の要因の一つと考えます。
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3.漢方で不眠症予備軍を卒業しよう!
様々な原因から引き起こされる「不眠」ですが、早めに原因を除去し、体のバランスを整えることで、辛い症状に悩まされることはありません。
東洋医学では、「心」や「肝」「脾胃」の乱れを整えることで、根本から不眠を解消する治療を行います。例えば、漢方薬を用いることで、「心」や「肝」「脾胃」のバランスを整えて、不安や抑うつ、焦燥といった不眠の原因を除去し、間接的に不眠を改善していきます。漢方薬は睡眠薬と違って、直接的に睡眠を誘発するような働きはありませんが、原因を解消することで自然な睡眠リズムを取り戻すことができるのです。
また、漢方では患者さんの体質に合わせた処方となるので、不眠に随伴する冷えや疲れ、めまいといった症状も改善することができるのも、嬉しいポイントです。
<体質別 おすすめ漢方>
タイプ | 症状 | おすすめ漢方 |
肝鬱 (かんうつ) |
「心」や「肝」の不調が関係します。 寝付きが悪い、現実的な夢を見る。 イライラ、憂うつ感、ほてり、胸が苦しい、喉の渇きなど |
加味逍遥散(かみしょうようさん) 逍遙散(しょうようさん) 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) 抑肝散加陳皮半夏(よっかんさんかちんぴはんげ) 酸棗仁湯(さんそうにんとう) |
血虚 (けっきょ) |
「心」「肝」「脾胃」の不調が関係します。 慢性化した不眠、よく目が覚める、熟睡できない、夢が多い。 不安感、動悸、めまい、胃腸虚弱、顔色が悪い、物忘れ、冷えなど |
加味帰脾湯(かみきひとう) 帰脾湯(きひとう) 芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん) |
腎虚 (じんきょ) |
主に「腎」の不調が関係します。 早朝に目が覚める、まとまった時間眠れない。 夜間頻尿、腰痛、耳鳴り、健忘、下半身の冷えなど |
八味丸(はちみがん) 杞菊地黄丸(こきくじおうがん) 天王補心丹(てんのうほしんたん) 桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう) |
脾虚 (ひきょ) |
「脾胃」の不調が関係します。 ムカムカして眠れない、寝付きが悪い、悪夢を見る。 消化不良、膨満感、胃重、げっぷ、吐き気、お腹の張り、腹痛など |
温胆湯(うんたんとう) 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) 加味帰脾湯(かみきひとう) 帰脾湯(きひとう) |
※上記でご紹介している症状や、漢方薬は一例となります。漢方は体質や症状によって処方が変わりますので、ぜひ1F 漢方相談薬局までお気軽にご相談ください。
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4.薬膳の視点から見た、不眠の原因解消をサポートする食材
つづいては、薬膳の視点から、不足している血や気を補うことで、不眠の原因の解消に役立つ食材を体質別にご紹介します。毎日の食事に意識的に取り入れれば、食を通じて不眠の改善につながりますよ。
タイプ | おすすめ食材 |
肝鬱 (かんうつ) |
たけのこ、セロリ、紫蘇、海藻類、牡蠣、菜の花、栗、ジャスミン、菊花など |
血虚 (けっきょ) |
ほうれん草、パセリ、百合根、卵、豚レバー、鯛、ブリ、太刀魚、にしん、うなぎ、穴子、かつお、赤貝、ムール貝、棗、竜眼肉、クコの実など |
腎虚 (じんきょ) |
山芋、くるみ、蓮の実、黒ごま、もち米、羊肉、桑の実など |
脾虚 (ひきょ) |
大根、紫蘇、アロエ、サンザシ、陳皮、烏龍茶、プーアール茶 |
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5.どうしても眠れない夜はツボ押しでリラックス!
もしかしたら不眠症かも?という「不眠症予備軍」の方はもちろん、今日は何故か眼が冴えて眠れないという方も、「眠れない」と感じた時に押してほしい「不眠改善効果が期待できるツボ」をご紹介します。
<百会(ひゃくえ)> 百の経絡エネルギーが集まる場所といわれる万能ツボ。耳の上端に親指を当てて、あたまの頂点に伸ばした両手の中指が交わるところ。<ツボの押し方> ①ー両手を重ねて(男性は左手を下に、女性は右手を下にする) 百会のツボへ置き、時計回りに8回、逆回り8回、手のひらで揉む。②ー息を吐きながら、手のひらでやや強めに百会を押し、息を吸うときに軽く手を離す。③ーこの一呼吸を1回として、3回繰り返しましょう。 |
<印堂(いんどう)> リラックス効果。眼精疲労、不眠の改善。眉間中央部のくぼみにある。<安眠(あんみん)> 安眠効果。耳たぶの裏のくぼみと完骨のほぼ中央から約3cm下にある。<ツボの押し方> ①ー両手の人差し指をツボに当て、時計回りに8回、逆回りに8回もむ。②ーそのまま、ツボを息を吐きながら人差し指で押し、息を吸うときに力を緩める。 ③ーこの一呼吸を1回として、3回繰り返します。 |
ツボを刺激することで、不眠の原因になっている身体の不調を緩和する効果が期待できます。ツボ押しはもちろん、セルフお灸もおすすめですので、1F漢方相談薬局にお声かけ下さい。
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今回は、不眠症についてご説明しながら、おすすめの漢方や食材をご紹介しました。
健やかな睡眠は、健やかな心身を作り出すために必要不可欠なもの。睡眠を軽んじていると、気が付いたら不眠症に・・・と言ったことにもなりかねません。最近よく眠れてないと感じたら、先ずは漢方や薬膳で体調を整えて、不眠症予備軍から卒業しませんか?
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<次回「Naturalist Web Magazine」のお知らせ>
~2021年8月17日(火)配信予定 ~
「Naturalist Web Magazine_Vol.68」では、
「脱!冷房病!のために今できること」をお届けします。
夏の暑さもいよいよピーク!一歩外に出れば灼熱の暑さと、クーラーの効いた室内との温度差に、身体が悲鳴をあげている方が続出中。冷えや胃腸の不調、倦怠感など様々な不調を感じる方が増えています。
そこで次回は、夏のお悩み「冷房病」について、原因や予防、対処方法についてお届けします。実はこれからがピークを迎える「冷房病」。今から「冷房病」対策&予防をして、夏の不調を回避しましょう!
※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。
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~「Naturalist Web Magazine」は、毎週火曜日の配信予定~
今後も、自然の薬箱ならではの様々な情報を予定しています。どうぞお楽しみに。
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