自分の体に目を向けよう〜夏の養生法
いつもご利用ありがとうございます、自然の薬箱の千田です。
Naturalist Web Magazineは、今号で100号!
前号でお知らせしましたようにNaturalist Web Magazineの定期配信は今回で一旦最終となります。
皆様、今までお読みいただきありがとうございました!今後は、不定期にお知らせしてまいりますので、配信の際にはまたご一読いただけましたら幸いです。
さて、前号の段階では、新型コロナウイルス感染症の流行は、多少増減しながらも収まっていくのかなと考えていましたが、そこから2週間後の今は、残念ながら、過去最多の感染者数を更新する県が続出するなど、急激な第7波が押し寄せてきました。
第7波と認められても、「行動制限という事態ではない」と厚生労働大臣が認識を示されたとのことなので、基本的な感染予防対策をしつつ、「行動制限のない夏」を楽しみたいところですね。
そのためにも、夏の養生を心がけて体調を万全にしておきたいものです。
そこで、今回は夏の養生についてご紹介していきます。
第2・第4火曜日にお届けしておりました自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。
本日、定期配信の最終号となりますが、1日遅れの水曜日配信になってしまいましたこと、こころよりお詫び申し上げます。
それでは!皆様が健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.100をお届けいたします。
夏の間の3ヶ月は、「蕃秀(ばんしゅう)」といい、万物が成長して花が咲き栄え、果実がたわわに実る季節です。「蕃」の文字には若草が鮮やかに生い茂るという意味があります。
漢方の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」の「素問(そもん)」には、蕃秀の過ごし方として「朝は早く起き、怒ったりせず、気持ちを外に向けて発散させましょう。」と書かれています。
この記載の解釈には、「毛穴が閉じて気が停滞するのを防ぐために、怒りを抑えて体を活発に動かすとよい」と書かれています。
つまり!冷房の効いた部屋でストレスを感じて過ごしていてはいけないということですね!
朝早起きし、体を適度に動かし、毛穴を開かせて上手く汗をかいて体温調節を行い、そしてまた、過度に汗を失わないように気の力で毛穴を引き締め、体を乾燥から守ることが大切なのです。
では、どの様に過ごしていったらよいか、自然の薬箱漢方薬剤師の千田より、夏に陥りがちな不調とその対処法についてご紹介します。
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<目次>
1.夏は【心】の季節
1.夏は【心】の季節
夏は五臓の中の【心(しん)】に負担がかかりやすい季節。
東洋医学でいう【心】は、次のような働きをしています。
① 血脈を主る(けつみゃくをつかさどる)
心臓、血管の機能をコントロールして血液循環を整える。
② 神志を主る(しんしをつかさどる)
現代医学的には脳の機能。精神、意識、思考などを調節する。
また、体つきや姿勢、顔色、眼の輝き、言語の応答、体の動きなどに影響します。
【心】の働きが低下してしまうと・・・
2.【心】のはたらきが悪くなると起こる不調
【心】の働きが悪くなったときの症状をみてみましょう。
血脈を主る作用が失調すると、血流に乗せて栄養や酸素が届かないため、身体各部の機能は低下し、顔色が悪くなります。ひどい場合は、青や紫の顔色に。
動悸、息切れ、不整脈、胸が苦しい、胸が痛い、むくみ、のぼせなどの症状が出やすくなります。
神志を主る作用が失調すると、気分が落ち着かない、不眠、夢が多くなり、記憶力が低下、精神不安定の状態が起こる。ひどくなると、うわごとを言ったり、意識障害を起こしたりする。
これを現代医学的に考えれば、夏の暑さで血管が広がると血圧が下がってしまい、また汗をかいたあとも、血液の粘度が高くなるので、心臓はより頑張ってポンプを働かさなければなりません。心臓の力が弱くて、一回の血液拍出量が少ない方は、心臓の打つ回数を増やして補います。心拍数が上がると、体はやや小走りしているような状態。なんとなく気ぜわしい感じがしたり、思うように体が動かなかったりします。夏バテを感じる症状ですね。
3.夏の不調の対処法
<夏バテ・熱中症予防>
東洋医学では「酸甘化陰(さんかんかいん)」といって、酸味と甘味の組み合わせで、体液を補う方法があります。疲労回復はもちろん、体に潤いを保ち、血液粘度を下げて血液循環を促し、心機能を高めるので、夏の養生にぴったりです。
夏野菜のピクルスやしそジュースや梅ジュースも良いですね!ハーブティーなら、ハイビスカスとローズヒップティーもおすすめです!
夏バテ予防にオススメな漢方薬なら、『生脈散(しょうみゃくさん)』。配合生薬の一文字をとって「麦味参(ばくみさん)」と商品名になっているものもあります。甘味の人参と麦門冬(ばくもんどう)、酸味の五味子(ごみし)の3つの生薬でできています。
人参は「大補元気(だいほげんき)」という薬能があり、気を補う生薬の代表選手です。また、人参には「生津(せいしん)」、つまり津液(体液)を生む働きもあります。
人参にも生津作用がありますが、「生津」の薬能をもつ代表的生薬といえば麦門冬(ばくもんどう)。乾燥による症状を改善するのに良く用いられます。
五味子は酸味のある小さい果実です。韓国旅行で、オミジャ茶を勧められたことはないですか?あの甘酸っぱいお茶が五味子です。日本では残念ながら食品として扱えませんが、酸味で体を引き締め、必要以上に汗が出るのを防ぐ働きをもつ生薬です。
これらの3つの生薬からなる生脈散は、味もよく飲みやすいので、外出時にスポーツ飲料に混ぜて持ち歩くのも良い方法です。
熱中症気味かな?と思うような時には、『五苓散(ごれいさん)』も良いですよ。水をたくさん飲んでも喉が渇き、頭痛やむくみ、下痢などの症状があるときに用います。五苓散は、雨の日に頭痛や浮腫を起こすような気象病にもよいので、そんな方には、常備しておくと良いお薬の一つです。
生脈散 しょうみゃくさん |
体質は強くなく、じわじわと汗をかき、喉がき、疲れやすく、すぐ息切れする、食欲不振、冷え症【止汗生脈・益気生津】 |
五苓散 ごれいさん |
咽喉がかわいて、水を飲むにも拘らず、尿量減少し、むくみがあるもの 暑気あたり、頭痛、頭汗、悪心、嘔吐、水様の下痢、二日酔【利水・解表】 |
牛 黄 ごおう |
こもった熱感、発熱、子供の発熱、熱によるだるさ、動悸、息切れ、意識障害、うわごと、不安感、痙攣、熱中症の予防と回復【開竅・強心・清熱解毒】 |
西洋人参 せいようにんじん |
疲労倦怠感、ストレス、口渇、慢性の咳、呼吸困難【補気養陰・清火生津作用】 |
<不眠>
東洋医学では、不眠は、邪気によって精神が攪乱されるか、気・血が不足して精神を養えない状態と考え、心だけでなく、腎、脾、肝などの臓腑が関係するとされています。不眠はいつの季節も起こる症状ですが、夏の不眠の原因は、暑邪あるいは冷房による寒邪によって起こりやすくなり、【心】からどの臓腑に影響が及んだかによって、一緒に起こってくる症状が異なりますので、漢方薬を選ぶときのポイントにもなります。下の表を参考にしてください。
また、クールダウンしながら精神を安定させる働きのある西洋人参や牛黄の生薬なども有効です。
関連する臓腑 |
不眠以外の随伴症状 |
適応処方 |
心と脾 | 動悸、食欲不振、お腹が張る、顔色が悪い、不安感 | 帰脾湯、加味帰脾湯、甘麦大棗湯、温胆湯など |
心と腎 | 手の平や足の裏の熱感、イライラ、寝汗、口渇、耳鳴り、腰痛 | 天王補心丹、六味丸、桂枝加竜骨牡蛎湯など |
心と肝 | 考え過ぎて眠れない、ため息が多い、怒りっぽい、イライラ | 酸棗仁湯、加味逍遙散、抑肝散など |
<冷房病>
冷房病におすすめの漢方の代表は、『玉屏風散(ぎょくへいふうさん)』と『藿香正気散(かっこうしょうきさん)』です。
東洋医学では、皮膚表面に【衛気(えき)】という気が流れ、毛穴の開閉を担当しながら、体表をしっかり衞っていると考えます。【衛気】が不足すると毛穴を引き締める力が低下し、必要以上にじわじわと汗をかきやすくなるほか、毛穴が開いているので、冷えを体に侵入させたり、風邪をひきやすくなったりします。冷房の室内と高温の外気の温度変化にも順応しにくくなるのです。玉屏風散はその衛気が不足した状態に適する処方です。
一方、藿香正気散は、胃腸がもともと弱い体質の方の胃腸が冷えなどに有効です。
玉屏風散 ぎょくへいふうさん |
温度調節機能低下して、冷房が苦手、疲れやすい、汗をかきやすい、低体温、風邪をひきやすい、鼻水など【益気固表止汗】 |
藿香正気散 かっこうしょうきさん |
胃腸がもともと弱い体質の夏かぜ、発熱、胃腸が冷えることによる下痢・食欲不振、全身倦怠【芳香化湿・理気和中・解表・止瀉】 |
4.夏のおすすめ養生法
<適度な運動をとりいれて、気を巡らせて汗をかこう>
①氣 功(きこう・Qi Gong)
適度な運動にちょうどよいのが氣功。無理のないゆっくりとした動作なのにしっかりと体を動かした充実感があるボディワークです。ゆっくりとした動作とともに耳を澄まし、姿勢や呼吸に意識を向けてみる・・・そんな体の陰陽バランスを整えるのに役立つボディワークです。
今週末の17日に氣功のイベント「セルフケア Qi Gong & 中医学のキホン」が開催されます!氣功のテーマは「呼吸」中医学のお話のテーマは、「火と水のバランス」です。詳しくはこちら>>>
②太陽礼拝(たいようれいはい)
養生に良いおすすめのボディワークのもう一つは、太陽礼拝。
太陽礼拝とは決まった複数のポーズを呼吸と連動させて全身の筋肉を使って動いていくヨガの動きです。血液の循環を良くし、代謝や柔軟性のアップ、ストレス解消、体の活性化に繋がります。
そんな太陽礼拝の動きを丁寧に教えてくれるイベント「太陽礼拝と女性のお茶会~太陽礼拝で、全身にエネルギーを巡らせよう!~」を7月31日(日)に開催します!「幸福度を上げる方法」のお話と季節の薬膳茶とお菓子を楽しめるお茶会付きです(*^^*) 詳しくはこちら>>>
<ツボを活用してみよう〜内関(ないかん)>
夏バテで眠れない、食べられないという方に自律神経やお腹の調子を整えてくれるツボです。お灸をしたり、お風呂でゆっくりツボ押しをしてみましょう。
ツボの場所
手首の一番深いシワから、肘に向かって指3本分上がったところ。腱と腱の間にあるツボ。
ケアの仕方
腱と腱の間に、指を立てて押し込み、痛みを感じる場所を探して刺激しましょう。
<シャワーで済ませずゆっくり入浴〜丑湯(うしゆ)>
薬湯での入浴は、健康を守る昔から生活上の知恵。例えば、端午の節句の菖蒲湯、夏の土用の丑湯 、重陽の節句の菊花湯 、冬至の柚子湯など。
江戸時代から夏の土用には桃の葉湯に入る習慣がありました。あせもや湿疹など肌のトラブルを防ぐ効果があるので、一番暑いこの季節に桃の葉湯に入ることはとても効果的です。さっぱりとした湯上がりも楽しめます。自然の薬箱でも、桃の葉のお風呂用パック販売中です♪(1回分440円)
ちなみに、土用(どよう)とは、五行に由来する暦の雑節で、立夏・立秋・立冬・立春の直前約18日間ずつ。今年の夏の土用は、7月23日から8月6日までですので、今年は、土用の期間中に丑の日が2回巡ってくるので、土用の丑が、7月23日と8月4日の2回ありますよ。うなぎを食べて精をつけつつ、丑湯にもぜひ浸かって暑気払いしてみてくださいね。
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コロナの流行が始まった際に、少しでもお役に立てばと始めたNaturalist Web Magazineもなんと100号。感染症予防や重症化を防ぐための漢方や薬草、東洋医学的ケアの情報を様々お伝えしてまいりましたので、是非、バックナンバーも参考にしていただければと思います。
みなさまからのご要望がございましたら、それに対する内容なども、今後お伝えしていけたらと思っております。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。
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