コロナ禍の梅雨の季節の過ごし方 ~湿邪に負けない体づくり~

いつもご利用ありがとうございます、自然の薬箱の千田です。

爽やかな季節をもう少し楽しめるはずが、フライングで梅雨がスタートして1週間。傘が手放せない日が増えていますね。部屋の中が湿気で重く感じたときは、エアコンで除湿をしたり、扇風機やサーキュレーターで空気を動かしてみてはいかがでしょうか。そのときに、お好みのスッキリ系の香りの精油をお皿に数滴落として、風の当たるところにおいておけば、爽やかな香りが広がります。気持ちが沈んだときに気分転換として行うのもいいですね。

毎週火曜日にお届けしております、自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。

皆様が穏やかな日常を取り戻せるその日まで、健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.56をお届けいたします。

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今年は全国的に梅雨入りが早く、例年より梅雨の期間が1ヶ月ほど長くなる可能性もあるとか。どうやら例年以上に、湿気対策が必要となりそうな気配ですね。

湿気対策というと、室内や食品の対策を思い浮かべがちですが、私たちの健康面においても対策が必要となります。さらに、中医学では、新型コロナウイルスを代表とする感染症は、梅雨の邪気である「湿邪」が関わると考えられています。

そこで今回は、梅雨の時季にこそ気を付けたい「湿邪」について、中医学の視点から解説しお伝えします。

そもそも「湿邪」とはどのようなもなのか?どのような不調の原因となるのかを紐解きながら、新型コロナウイルスとの関係や、今の時期に取り入れたい漢方薬や食材をご紹介いたします。

新型コロナウイルスの変異株による感染拡大も懸念されている今だからこそ、今一度、健康管理には気を配りたいもの。今から梅雨の時季の「湿邪」を理解して、しっかりと対策をして、健やかであるようにケアを始めましょう。

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<目次>

 1. 「湿邪」ってどんなもの?

 2. 中医学の視点で見た「新型コロナウイルス感染症」とは?

 3. 「湿邪」対策におすすめの漢方薬

 4. 毎日の食を通じて出来る「薬膳的湿邪対策」


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1.「湿邪」ってどんなもの?

梅雨といえば、じめじめとした湿気が気になりますよね。今日も雨か・・・と、憂鬱な気分になる方も多いのではないでしょうか?さらに、身体が重く感じたり、頭痛や倦怠感に悩まされたり。この時期は、湿気によって心も身体も不調を感じやすくなりますよね。

中医学では、この時季の「湿」は「邪気」としてとらえ「湿邪」と呼び、様々な不調を引き起こすと考えています。

「湿邪」には

「外湿」 雨の中や湿度の高い環境に長期間いることで体に悪影響を及ぼす湿邪
「内湿」 体内で発生する湿邪

の2種類があり、それぞれが梅雨の時季ならではの不調を引き起こすとされています。

例えば、「外湿」にさらされた状況が続くと、体内の水分が外に排出されにくくなり、水分代謝が滞ることで、血液循環も悪くなり、体が重く感じたり、むくみを感じたり、尿の量が減少するなどの症状が現れやすくなります。体内に湿気が過剰に溜まる「内湿」の状態になると、下痢や軟便、胃もたれ、頭痛や頭重感、倦怠感、うつなどの症状が現れやすくなります。

なぜこのような症状があらわれてしまうのでしょう。これは、五臓の一つである「脾(=西洋医学的な脾臓ではなく、胃腸機能)」が湿気を最も苦手としていているからなのです。湿邪が体内に侵入すると、消化器官を司る「脾」がダメージを受けます。すると、食べ物を消化して、栄養を巡らせることが上手くできなくなり、疲労倦怠感などの症状がでてしまうのです。

通常、体内に取り入れた水分は「脾」から「肺(中医学では肺は皮膚体表と関連すると考えます)」と「腎」に送られ、体表や膀胱から汗や尿となって体外に排出されます。しかし、「外湿」が多い(湿度が高い)状態では、体表からの汗の蒸散機能が低下し、体内に水分が溜まってしまいます。すると、「腎」の水分代謝が追いつかなくなり、血液中に過剰になった水分が、血管外に滲み出して、むくみが出てしまうのです。

このように、湿邪が「脾」と「腎」に負担をかけることで、梅雨時の独特の不調が引き起こされているのです。


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2.中医学の視点で見た「新型コロナウイルス感染症」とは?

梅雨独特の不調の原因である「湿邪」ですが、中医学では新型コロナウイルスとも深い関わりがあると考えてます。では何故、湿邪と関わりがあると考えるのでしょうか?

中医学で新型コロナウイルスは、湿邪の性質をもった「邪=体に必要がなく有害な発病因子」として捉えています。

新型コロナウイルスは感染症の一種です。感染症というと、湿気の多い時季には感染力が弱まるイメージがあります。しかし、「湿邪」の性質をもった新型コロナウイルスは、その常識を覆しながら、今も猛威を振るっています。高温多湿の地域でありながら、多くの感染者を出しているインドの状況を見ると納得できますよね。

「湿邪」との関わりは、症状からも理解できます。新型コロナウイルス感染症の主だった症状は、初期は身体が重く、強い倦怠感を感じたり、下痢や食欲不振などがみられることはよく知られていますが、これは、まさに「湿邪」の不調と同じです。

また、身体の体表を守る「衛気(えき)」が強い人は、新型コロナウイルスに感染しても無症状か軽症で済みます。「衛気」は外界からの病邪の侵入から人体を防御する力を持ち、脾や肺と深いかかわりがあります。しかし、「湿邪」により脾や肺が弱ることで、「衛気」の力が落ちると、病邪の侵入を許し、症状の悪化を招きます。

中国では、新型コロナウイルス感染症の患者に、体内から「湿邪」を取り除く漢方治療が行われており、一定の成果が報告されています。西洋医学とともに、中医学ならではの視点で、新型コロナウイルス感染症に立ち向かっているんですね。


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3.「湿邪」対策におすすめの漢方薬

中医学では、「湿邪」に侵されてしまった場合、水の巡りが停滞したり偏ったりした状態を「水滞=体液の代謝がうまくいかずに停滞している状態」という概念でとらえて、それぞれの症状や体質に応じた漢方薬で対処しています。

今回は、数ある処方の中でも、「湿邪」対策として用いられる「化湿(体内の余分な水分を排出させること)」の働きのある代表的な漢方薬をいくつかご紹介しましょう。

藿香正気散
(かっこうしょうきさん)
梅雨の時期の下痢などの胃腸症状によく使われる漢方薬です。中国での新型コロナウイルス感染症の治療において、藿香という生薬はよく使われています。
香砂六君子湯
(こうさりっくんしとう)
気と水の巡りを良くして、胃腸に停滞した湿をとり、消化機能を高め元気をつける漢方薬です。
五苓散
(ごれいさん)
全身の水分代謝を良くしてくれる漢方薬です。水分を多くとっているのに喉が渇いていたり、尿の出が悪い人、めまいや、むくみ、頭痛、下痢などの自覚症状があるときに用いられます。
苓桂朮甘湯
(りょうけいじゅつかんとう)
体力があまりない方向けの、水分代謝を良くしてくれる漢方薬です。めまいや立ちくらみ、ふらつき、動悸、息切れ、頭痛、乗り物酔い、不安感などの上半身の症状や、冷えのぼせの症状などに用いられます。
竹茹温胆湯
(ちくじょうんたんとう)
咳や痰が多くて安眠ができないような場合に用いられます。

今回ご紹介した漢方薬は、あくまでも一例です。

漢方薬は、検査機器がない時代から人を治療するために、その症状がなぜ起こるのか、それを治すためには何が必要なのか、それらを考えることによって発達してきた薬です。その人の状態を良く知り、からだ全体のバランスを見ることで、根本的な原因を治していくことに長けています。

自然の薬箱 漢方相談薬局では、お悩みの症状だけではなく、その他のおからだの状態や体質、生活習慣などをお伺いしながら、専門の薬剤師が調合を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

 


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4.毎日の食を通じて出来る「薬膳的湿邪対策」

梅雨独特の「湿邪」による不調が気になる上に、納まりを見せることがない新型コロナウイルス感染症に対する不安。心配事が尽きない今だからこそ、日常的に見直してほしいことがあります。

それは「食事」です。

「医食同源」という言葉がある通り、病気を治療するのも、日々食事をするのも、どちらも生命を養い、健やかに生きていくために欠くことができないもの。季節ごとに感じる不調も、食を通じて解決することができます。

湿邪による不調を感じたら、まず、冷たいものや脂っこいものは避けること、そして、朝食は必ず取るように心がけましょう。朝食は、エネルギーを補充し、脳を活性化させ、エネルギー代謝を上げて身体を目覚めさせ、元気に活動させる役割があります。さらに、睡眠中に低下した体温を高めることや生活リズムを整える役割も持っています。朝食には、糖分だけではなく、持続的なエネルギー源の炭水化物も適量とることが大切です。

また、中医学理論に基づいて食材、中薬と組合せた料理である「薬膳」もおすすめです。「薬膳」は、多くの食材をバランスよく組合せることで、身体の精気を補うことが出来るとの考えから生まれたもの。私たちが毎日とる食事に「薬膳」の視点を取り入れるだけで「湿邪」対策をすることができるんですよ。

ここでは、「内湿」を取り除くためによいとされている<健脾、利湿、行気>の働きがある食材をご紹介します。是非、日々の献立に取り入れてみてくださいね。

健脾
kenpi
脾胃の疲れを補う
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大豆、クミン、米、しいたけ、オクラ、ジャガイモ、カボチャ、長芋、キャベツ、鶏肉、鯛など
利湿
rishitsu
梅雨の時季の外邪である「湿」を対外へ排出する
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
大豆、ナス、豆苗、トウモロコシ、ハト麦、鱧、うど、小豆、冬瓜、枝豆など
行気
kouki
「湿」は粘着質な性質で、体のあちこちで滞りが生まれやすいため、滞りを解消して流れを良くする
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
玉ねぎ、生姜、八角、ウーシャンフェン、茗荷、ねぎ、そば、陳皮、ジャスミン、オレンジ、ワイン、酒など

いかがでしょうか?薬膳といっても、耳なれ合い食材が並ぶのではなく、身近な食材が多いですよね。お買い物の際に、少しだけ意識して食材を選ぶことで、今までの食事が、薬膳の性質を持つ、身体にいい食事へと変えることができるんですよ。

薬膳らしい食事を作ってみたい、湿邪に効果的な食材はわかったけれど、どう取り入れていったらいいかわからない・・・という方には、国際薬膳師監修のおすすめのレシピも、ぜひご覧ください!
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「国際薬膳師おすすめ!内湿を取るための薬膳レシピ2種」はこちら>>

いずれも、スーパーで手軽に手に入る食材だけでできるレシピです。難しい手順も不要ですので、是非一度トライしてみてくださいね。

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今回は、梅雨の時季の邪気である「湿邪」について、おすすめの漢方薬や薬膳をご紹介してきました。

梅雨時のジメッとした空気に包まれながらの感染対策は、心身ともに疲れやすいものです。中医学の知恵を上手に取り入れながら、身体の内側から湿邪を取り除いて、免疫機能を低下させないよう、梅雨の時季を快適に過ごしましょう!

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<次回「Naturalist Web Magazine」のお知らせ>

~2021年6月1日(火)配信予定 ~

「Naturalist Web Magazine_Vol.57」では、

「季節外れの暑さに負けないための暑邪対策」をお届けします。

今年は梅雨入り前から夏のような暑さが続くなど、蒸し暑い日が続き、なかなか身体がついていかない方も多いのではないでしょうか?暑さに体が負けてしまうと、免疫機能の低下につながることもあるので、今は特に注意が必要です。

そこで次回は、季節外れの暑さに負けないための中医学の知恵をお届けします。どうして暑さが体に不調をきたすのか、そのメカニズムをご紹介しながら、おすすめのケア方法や、暑さ負けしそうなときにぴったりなツボ等をご紹介します。

早め早めの対策で、暑さをしのげる体つくりをしてきましょう!

※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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~「Naturalist Web Magazine」は、毎週火曜日の配信予定~

今後も、自然の薬箱ならではの様々な情報を予定しています。どうぞお楽しみに。

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