年末のご挨拶&おせち料理のいわれと薬膳
いつもご利用ありがとうございます、自然の薬箱の千田です。
昨日から今季最大の大寒波で、各地に降雪をもたらしています。まさに師走の忙しいこの時期に、寒さが身に染みた方も多いのではないでしょうか?こんな時は、体の先端から体を温めることを意識すると、全身が徐々に暖かくなりますよ。
毎週火曜日にお届けしております、自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。
皆様が穏やかな日常を取り戻せるその日まで、健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.87をお届けいたします。
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本年も残すところあと僅かとなりました。
皆様には日頃より格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
本年は、4月1日より「漢方相談薬局」「ボディワークスタジオ」および「ラーニング」に特化する形への事業内容の変更からはじまり、ボディワークスタジオのリスタートにあわせた、より自然の薬箱らしいプログラムの展開や、お客様の利便性向上のための予約システム導入を行うなど、自然の薬箱にとって変化の大きい一年でした。
皆様には、ご迷惑やご不便をおかけしたと存じますが、そのような中でも自然の薬箱を変わらずご利用頂きましたこと、心より御礼申し上げます。
「新型コロナウイルス」は相変わらず世界中を震撼させていますが、ワクチン接種による重症化の軽減や治療薬の承認など、昨年の今頃より明るい兆しが見えているように感じます。新しい年も皆様の健康のサポートをさせていただけるよう精進してまいりますので、変らぬご愛顧を頂けますようお願い申し上げます。
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間もなくやってくるお正月。最近では伝統的なお正月のスタイルにこだわらず、思い思いの形で過ごす方も増えていますが、やっぱり「おせち」がないと!という方も多いそう。実際に、百貨店やネット通販などではおせちの売り上げがぐんぐん伸びているとか。
このように時代が変わってもお正月に欠かすことができないおせちですが、様々な意味やいわれが込められている事をご存じですか?
今回は、お正月を色鮮やかに彩る「おせち」について、漢方薬剤師・中医薬膳指導員の岡 朱見子が、そのいわれなどを振り返りながら薬膳の視点も加えて解説します。
来年のお正月は、おせちを違った視点で楽しめるようになりますよ。
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<目次>
1. おせち料理の意味、ご存じですか? 2. おせちを重箱につめる意味って? 3. おせちの重に込められた意味<壱の重> 4. おせちの重に込められた意味<弐の重> 5. おせちの重に込められた意味<参の重> 6. おせちを食べる前に知っておきたい「祝い箸」のきまり |
1. おせち料理の意味、ご存じですか?
おせち料理は、漢字では「御節(おせち)料理」と書きますよね。そもそも、「御節」とは、季節の節目である「節(せち)」の日の意味をもちます。平安時代では、元旦を含む年に5回、「御節供(おせちく)」として神様にお供えしていたのがはじまりといわれています。「御節供」は、今のおせちと異なり重箱ではなく、器に高く盛られていました。
江戸時代になると、年に5回行われていた「御節供」は、元旦の御節供が重視されるようになり、お正月の定番として定着しました。そして、江戸時代末期から明治時代頃になると、現在のように重箱に詰める形が一般的になりました。また、食材ごとに意味が込められるようになったのは、江戸時代後期からだともいわれています。
ちなみに、おせちは元々神様への供物料理であったことから、お籠り(おこもり:神社やお堂などで隔離生活を送ること)して食べるという決まりがありました。そのため、節句の当日にはお籠りを邪魔しないようにあらかじめ調理をして、重箱に詰めておくのがよいとされていました。
おせち料理を年末にまとめて作るのはこの名残。おかげで、お正月三が日に女性が慌ただしく料理をすることがなくなったんですね。
2. おせちを重箱につめる意味って?
おせち料理といえば、重箱にたっぷりと詰められた色とりどりの料理ですよね。でも、どうしておせちは沢山のご馳走を重箱に詰めるのでしょう?
お正月料理を重箱に詰めるのは「福を重ねる」という縁起担ぎから来ています。また、おせちは三が日にゆっくり食べるものなので、ほこりや虫から料理を守るために、重ねて保管ができる重箱が主流になったともいわれています。
諸説ありますが、重箱の段数は五段が正式とされ、上から「壱の重」「弐の重」「参の重」「与の重」「五の重」と数えます(四段目は「四=死」のイメージを避けるため「与」の漢字があてられています)
しかし、最近では核家族化により、食べきれなかったり、準備の手間をかけることがなくなったため、二段や三段の重箱が主流になっています。
そこで今回は、現在主流となっている三段重ねについて、それぞれに入れる食材の種類や意味、栄養をご紹介しながら、薬膳素材としての働きを解説していきます。それぞれの重にこめられた意味が分かると、おせちの美味しさが身に染みてきますよ。
3. おせちの重に込められた意味<壱の重>
壱の重は、重箱の一番上の段です。子孫繁栄や長寿などの願いを込め、縁起が良いとされている料理を中心に入れていきます。
主に、黒豆・田作り・数の子の「祝い肴」と、紅白かまぼこ・伊達巻・栗きんとんなどの「口取り」を詰めます。
・黒豆
「黒豆」はまめに暮らせるようにと、無病息災を祈って食べられます。また、黒色は邪気を払う色とされています。関東では「しわしわになるまで長生きするように」とシワが寄るように、関西では逆に「シワがなく若々しく生きられるように」とシワが出ないようふっくらと煮るそうです。
<薬膳の視点で見ると・・・> |
・田作り
カタクチイワシを甘辛く炒め煮した「田作り」には、字の通り、豊作祈願の意味が込められています。昔、田植えをする際の肥料としてカタクチイワシが使われていたことが由来となったといわれています。
<薬膳の視点で見ると・・・> |
・数の子
「数の子」はニシンの卵で、一腹にたくさんの卵がつまっているところから、子孫繁栄の願いが込められています。また、ニシンと二親をかけて「二親健在」に通じるともいわれています。数の子は、魚卵の中ではコレステロールやプリン体が少なく、EPA・DHAが豊富で、CoQ10やルテインなど健康食品で話題の抗酸化物質も含まれる食材です。
<薬膳の視点で見ると・・・> |
・紅白かまぼこ
紅白で縁起がよく、半円の形は初日の出を連想させるため、おせちに欠かせません。
かまぼこに使われる白身魚はタンパク質が豊富な食材として、長期保存できない生魚の代わりに、古くから重宝されてきました。
<薬膳の視点で見ると・・・> かまぼこの原料となるタラは 気と血を補い、息切れ、疲れなどの改善、体力回復に役立つとされています。 |
・伊達巻
巻物のような形から、知恵が増えること、学業成就を願う縁起物。卵の鮮やかな色から「伊達(華やかさ)」を表す意味もあります。卵はタンパク質だけでなくビタミンやミネラルも含まれています。
<薬膳の視点で見ると・・・> 「滋陰、補血」などの働きがあり体力回復に使われています。 |
・栗きんとん
見た目の黄色を黄金の塊に見立てて、勝負運や金運上昇、商売繁盛を願う縁起物とされています。
<薬膳の視点で見ると・・・> 栗もさつまいも「健脾」の働きがあり、胃腸の働きを助けます。 |
4. おせちの重に込められた意味<弐の重>
二の重は縁起を担いで海の幸と鳥松風などの焼き物を入れ、さらに、酢の物や和え物を入れます。
・ブリ
出世魚といわれることから、立身出世の願いが込められています。良質なたんぱく質や疲労回復につながるタウリン、DHA、ビタミンや鉄分も多く含まれています。
<薬膳の視点で見ると・・・> 「補気、補血」などの働きがあり、貧血で疲れ気味の方に特にお勧め食材です。 |
・鯛
「めでたい」との語呂合わせでお祝いに欠かせない食材ですね。脂質が少なくアミノ酸のバランスがいいのが特徴です。
<薬膳の視点で見ると・・・> 「健脾、補腎」などの働きがあり、体力回復などに使われます。 |
・海老
長い触覚があって背中の部分が丸く曲がっている外見が、長いひげを生やして腰の曲がっている老人を連想させるところから、健康長寿への願いが込められています。良質な動物性たんぱく質が豊富なことでも知られています。
<薬膳の視点で見ると・・・> 「補腎、補陽、補気」などの働きがあり、冷え性や食欲不振、体力回復に使われます。 |
・鳥松風(とりまつかぜ)
鶏肉のすり身やひき肉を型に入れて、表面にケシの実やゴマなどをまぶして焼いた料理。裏面には何もつけないことから、“裏には何もない”(隠し事がない)という意味があります。
<薬膳の視点で見ると・・・> 鶏肉は「温中、補気」の食材で、冷え性や食欲不振に使われます。 |
・紅白なます
人参と大根を細く繊切りにすることで、おめでたい時に使われる紅白の「水引(みずひき)」に見立てているといわれています。さっぱりとしたお口直しの役割を持つ食材として欠かせませんね。アミラーゼやプロテアーゼが含まれていて、疲れた胃腸の消化を助けます。
<薬膳の視点で見ると・・・> 人参と大根は共に「消食」の働きがあり消化を助けます。また、酢には「消積、解毒」などの働きがあり、古くからお腹の張りや魚毒の緩和などに使われてきました。 |
4. おせちの重に込められた意味<参の重>
家族が仲良く結ばれるようにという願いを込めて、山の幸を使った煮しめや筑前煮、昆布巻などの煮物を詰めます。
・昆布巻
「喜ぶ(よろこぶ)」の言葉にかけた語呂合わせからきており、お祝い事などには広く使われています。また、昔は「ひろめ」とも呼ばれ、「世に名が広がる」にかけて、出世への願いが込められていました。食物繊維やミネラルが豊富です。
<薬膳の視点で見ると・・・> 「利水」の働きがあり、むくみを予防します。コレステロールを抑制したり、整腸作用もあります。 |
・蓮根
穴がたくさん空いていて、その先が見えるところから、「将来の見通しが良くなりますように」という願いが込められています。ビタミンCや食物繊維も豊富で、カリウムやカルシウムも含まれます。
<薬膳の視点で見ると・・・> 「生津、潤肺」の働きがあり、からだを潤してくれます。 |
・里芋
親芋から数多くの子芋ができることから、子孫繁栄を願う食材とされています。食物繊維の他、カリウムも豊富に含まれています。
<薬膳の視点で見ると・・・> 「解毒、和胃」などの働きがあり、胃腸の働きを整え、消化を促進してくれます。 |
・ごぼう
地中深くに長く細く根をはることから、代々の繁栄の願いが込められています。食物繊維のほか、ミネラルも比較的豊富に含まれています。
<薬膳の視点で見ると・・・> 「通便、清熱」の働きがあり、便秘やからだに熱がこもっているときに使われる食材です。 |
6. おせちを食べる前に知っておきたい「祝い箸」のきまり
おせち料理をいただくときにつかう両側が細くなった箸「祝い箸」。「お祝いの時にはこのお箸を使う」程度にしか認識されていない方も多いのではないでしょうか?
祝い箸とは、お祝いの時に用いられる縁起箸のことで、「寿」の文字が入った箸袋に包まれて用意されています。大事な席で折れないように、また邪気を払うとされる柳の木で作られています。長さは24cm(八寸)。八寸の「八」の漢字が末広がりで縁起がいいことから、この長さにになったといわれています。
祝い箸は、普段使う箸とは異なり、箸の両側が細くなっていますが、これは、一方を神様が、もう一方は人が使うため。家を守ってくれる年神様と食事を共にするという意味が込められているのです。そのため、使っていないほうを取り箸として使うのはNG。あくまでも神様のための箸先なので、祝い箸とは別に取り箸を用意してくださいね。
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今回は、間もなくやってくるお正月の定番、おせち料理の由来や願い、食材の働きをお届けしました。それぞれの由来や意味を知ると、「お正月の縁起のいい料理」というだけでなく、薬膳の視点からみても身体のことを考えた、とてもありがたい食材の組み合わせでできていることがわかりますよね。
ご自宅で作ってみるもよし、できたものを買うのもよし、このお正月はぜひおせち料理を味わってみてはいかがでしょうか?おせちを食べて、新しい年を健やかに過ごしましょう!
2021年は大変お世話になりました。2022年が皆様にとって笑顔溢れる素敵な一年になりますようにお祈り申し上げます。
どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。
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<次回「Naturalist Web Magazine」のお知らせ>
~1月11日(火)配信予定 ~
「Naturalist Web Magazine_Vol.88」では、
「冷えの東洋医学的ケア(温活)について」をお届けします。
次回の「Vol.88」は新年となります。本格的な冬が訪れ、冷えに悩む方にとってはつらい季節になりました。昨年の1月には、生活の中で実践できる体を温める3つの工夫についてご紹介しましたが、今回は、薬膳、お灸、そして漢方薬などの東洋医学的ケアについてご紹介します。
冷えが改善すると体はとても楽になりますよ。
※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。
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~「Naturalist Web Magazine」は、毎週火曜日の配信予定~
今後も、自然の薬箱ならではの様々な情報を予定しています。どうぞお楽しみに。
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