アーユルヴェーダにふれる
~心身ともに幸福に満ちた人生を送る「智慧」~

いつもご利用ありがとうございます、自然の薬箱の千田です。

少し過ぎてしまいましたが、9月8日は「白露」。二十四節気では、この日を境に、秋が深まり、草花に朝露がつきはじめる頃とされていますが、現実はなかなかそうはいかず、まだまだ、30度近い日が続くなど残暑は長引きそうですね。

毎週火曜日にお届けしております、自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。

皆様が穏やかな日常を取り戻せるその日まで、健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.72をお届けいたします。

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突然ですが、五千年の歴史をもつインド・スリランカ発祥の伝統医療「アーユルヴェーダ」をご存じでしょうか?

それ、聞いたことがある!という方も、神秘的なイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、実はいにしえの時代から脈々と受け継がれてきた「生命科学」であり、伝統医学が「アーユルヴェーダ」なのです。

「アーユルヴェーダ」ってそもそもどんなもの?ヨガと深い関係があると言われている理由は?といった、様々な疑問を、その起源から現在に至るまでの歴史を紐解きながら、基本的な考え方とヨガとの関係などについて、スリランカとインドでアーユルヴェーダを学んだ経験を持つ、自然の薬箱ヨガインストラクター ERIがご紹介します。

世界最古の伝統医学であり、生命科学の源ともいえる「アーユルヴェーダ」の世界を一緒に覗いていきましょう!

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<目次>

 1. アーユルヴェーダってどんなもの?  

 2. アーユルヴェーダの考え方って?

 3. アーユルヴェーダ大国インドとスリランカの違いって?

 4. アーユルヴェーダを生活に取り入れるには?

 5. アーユルヴェーダ的生活を組み立てましょう!

 


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1. アーユルヴェーダってどんなもの? 

アーユルヴェーダを知るためには、まずはその起源からさかのぼっていくことから始めましょう。

アーユルヴェーダとは、「ヴェーダ」から派⽣した哲学と心・身体・意識のテクノロジーです。「ヴェーダ」とは、紀元前1000年から500年ごろ、インドで編纂された⽂献からはじまっており、直訳すると「知識・科学」という意味を持っています。

さらに「生命の科学」「生命の知識」といわれる、インド・スリランカの伝統医学であり、予防医学・治病医学にとどまらず、高度な生命哲学としても注目されています。

4つのヴェーダの中の「アタルヴァ・ヴェーダ」が、「アーユルヴェーダ」のもとになったと言われています。

4つのヴェーダ 内容
リグ・ヴェーダ 主に神々への讃歌で構成され、本集は1028篇もの讃歌からなっています。ヴェーダ聖典群中でも最古のものとされ紀元前1200年頃に編纂されたといわれています。
サーマ・ヴェーダ 「リグ・ヴェーダ」と同様に神々への讃歌が中心であり、インド古典音楽の源流とされます。
ヤジュル・ヴェーダ 祭式において唱えられる「祭詞(ヤジュス)」が集められたもの。ヤジュル・ヴェーダはその形式によって「黒ヤジュル・ヴェーダ」と「白ヤジュル・ヴェーダ」に分けられます。
アタルヴァ・ヴェーダ アタルヴァ・ヴェーダには医学に関する記述も多い、古代インドの医学書であるだけでなく世界最古の医学書ともいわれているもの。古代ギリシア・中国の医学にも影響を与えたと考えられています。アーユルヴェーダは、アタルヴァ・ヴェーダの医学に関する記述が抜き出されたものとされています。

アーユルヴェーダの発祥の地とされるインドでは、5,000年以上も昔から人間の身体について研究が行われ、健康に良い食材の性質を熟知し、時間や環境・季節などを考慮した食事療法を編み出されました。さらに、具体的な養生法や治療法、また膨大な量の薬草学について説かれてきました。

また、インドの伝統思想においてアーユルヴェーダは、人がより自然の在り様に近く、心身が幸福に満ちた人生を送る上での「智慧」とされ、日常生活の一部として取り入れることをすすめていています。 

例えば、人が病気になったときに、単に投薬や手術などの対症療法で治療するのではなく、「生き方」そのものを見つめ直すことで、病気のもとを断つという考え方にも繋がっていきます。 この「生き方」には、食事・運動、睡眠などの生活習慣全般だけにとどまらず、人間関係や考え方などの精神面も含まれています。

 


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2. アーユルベーダの考え方って?

アーユルヴェーダの基本的な考え方は、自然のエネルギーから身体が構成されているということです。私たちの身体には「ドーシャ」と呼ばれる「ヴァータ」「ピッタ」「カパ」の3つのエネルギーが働きかけていると考えます。そしてまた、全てのもの(食べ物や季節など)は、この「ドーシャ」の性質で分類することができると考えます。

 * ヴァータ・・・・風の性質

 * ピッタ・・・火の性質

 * カパ・・・水の性質

「ドーシャ」とは、「不純なもの」「病素」という意味があり、「トリ」とは、3を意味します。したがって、「ドーシャ」を総称して「トリドーシャ」と呼んでいます。

全ての人は「トリドーシャ」のエネルギーをもっていると考えています。とはいえ、一人一人エネルギーのバランスは違い、ヴァータ体質(風のエネルギーが強い人)がいれば、ピッタ体質(火のエネルギーが強い人)もいます。

それぞれのドーシャのバランスが保たれていれば、私たちの身体としての構造が適切とされ、新陳代謝も適切に行われ、体内の循環も活性化します。この状態を身体が健康であるとしています。

ドーシャには「プラクリティ(生まれ持った本質)」と「ヴィクリティ(過剰)」があり、「ヴィクリティ」となったドーシャを過剰なまま放置してしまうと、心身ともに不調を引き起こすと考えます。そのためにも、「トリドーシャ」のバランスを保ち、健やかな毎日を過ごせるよう、健康を維持する予防医学の考え方が、アーユルヴェーダのベースとなっています。

そのため、アーユルヴェーダは病気の患部だけを治すことを目的としていません。西洋医学とは異なり、心身が健康な状態はどのように維持されるのか、また、どんな生活を行えば病にならないのかなど、心身のバランスを整える事を重要視し、ハーブ等を用いた治療とあわせて、食事法(医食同源)・健康法(ヨガ・瞑想)といった日常生活から改善を試みます。

 


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3. アーユルヴェーダ大国インドとスリランカの違いって?

アーユルヴェーダの考え方は、仏教の教えとともに様々な国に広がり、チベット伝統医学やタイ伝統医学、中東のユナニ医学、そして中医学などの東洋医学に多大なる影響を与えました。今では、WHOも推奨する予防医学として確立されているほど。

その中でも、スリランカはインドと並ぶほどのアーユルヴェーダの国として、世界に知られていますが、インドのアーユルヴェーダと比べると異なる点がいくつかあるんです。

では、一体どんな違いがあるのか、インドとスリランカのアーユルヴェーダについて、それぞれの特色をご紹介しながら、異なる点を確認していきましょう。

<インド>
アーユルヴェーダ発祥の地。哲学を原点に生まれたアーユルヴェーダですが、イギリスの統治下時代に一度は衰退しますが、独立後再び注目を浴び、伝統医学として復興します。その後、地域や医者によって異なっていた診断方法等を整理し、体系化され、伝統医学として確固たる地位を確立しました。現在では、150を超える医科大学や大学院が作られ、インド政府認定アーユルヴェーダ医師(B.A.M.S.)等の資格制度も整えられています。また、インドの気候は暑季・雨季・乾季に分かれ、⼀年中同種の薬草を採取することが難しく、薬草をオイルや錠剤などにして保存する方法が発達しています。

<スリランカ>
インドと並び、医療としてのアーユルヴェーダが受け継がれてきたスリランカ。政府にはアーユルヴェーダ省がおかれ、信頼度の高い知的財産として根付いています。スリランカでは、仏教の伝来とともに伝えられたアーユルヴェーダと、スリランカ独自の伝統医療である「デーシャチキッサ」が融合して、独自の発展を遂げたという特徴があります。そのため、ハーブの用い方は、「デーシャチキッサ」の影響を受けたものが多くあります。また、スリランカは通年で熱帯地域の高温多湿で、年間を通じてハーブを採取することができるので、生のままのハーブを使用することがあります。

 


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4. アーユルヴェーダを生活に取り入れるには?

現代の予防医学にも通じるアーユルヴェーダにおいて、もっとも大切にされているものの一つに、日常生活の過ごし方があります。近年、生活習慣が原因で病になることが明らかになったこともあり、特別な健康法を行う以前に、毎日の生活習慣の改善の必要性が推奨されていますよね。アーユルヴェーダでも、古代インドの時代から生活習慣が病気の原因となると考え、その人に応じた生活習慣を提案してきました。

そのため、私たちの身体の生命エネルギーであるドーシャを、季節や時間にもあてはめて、日常生活のなかにアーユルヴェーダを活用できるようにしています。

例えば、夏の時期は火のエネルギーの「ピッタ」に当てはまります。この時期は、炎天下での運動をはじめとして必要とする運動量を減らすのが基本。運動は最低限にし、温度が上がる前の午前中に行うようにします。炎天下や暑い環境では水分を十分に取り、帽子を忘れないこと。一番理想は炎天下での仕事や行動をできるだけ控えることです。

また、夏は手足への血液循環が増して血圧が下がりやすいので、心臓病・脳卒中などに注意が必要ですので、ピッタを増やすような食事や生活習慣(熱を上げたり、激しさを持つような食事や行動)を控えることをこころがけます。

ドーシャは食べ物にもあるので、旬の素材には、エネルギーをバランスよくする力があると考えます。今は季節を問わずに食材が入手できますが、出来るだけ旬のものを選ぶようすれば、ドーシャのバランスを整えることができますよ。他にも食べ方に関するアーユルヴェーダの知恵は、たくさん伝えられています。           

時間にもドーシャの性質があります。朝夕共通で、6時~10時までは水の性質「カパ」、10時~2時までは火の性質「ピッタ」、2時~4時までの性質は風の性質「ヴァータ」です。

季節も時間も、それぞれ当てはまるドーシャの性質が過剰になりがちです。この季節や時間になると体調を崩しやすいという方は、ドーシャのバランスを整えるような生活を送ることで、体調管理がしやすくなりますよ。

 


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5. アーユルヴェーダ的生活を組み立てましょう!

体質や体調、タイミング(時期)に合ったひとり一人の個性に合わせてライフスタイルを考えながら、病にならない体づくりを目指す予防医学であるアーユルヴェーダ。

アーユルヴェーダの考え方を取り入れて生活を組み立てていけば、病に負けない体づくりをすることができます。そのためにも、自分がどのドーシャの性質を持っているのかを知りたいと思いますよね。

自分がどのドーシャの性質を持っているのか気になったら、自然の薬箱のイベントレッスン「アーユルヴェーダでヨガを深める」に参加してみてはいかがでしょうか。

※10/10・11/14・12/12(日)イベントレッスン

 「アーユルヴェーダでヨガを深める」の詳しい内容は こちらから>>

自分のドーシャを知ることができるだけでなく、アーユルヴェーダの知恵を生活に取り入れ、ヨガを深めたり、生活を健康的に楽しく過ごせるようになる、レッスンです。初心者の方も、上級者の方もお楽しみいただける内容となっておりますので、お気軽にご参加ください。

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今回は、ヨガとのかかわりが深いアーユルヴェーダについてご紹介しました。

日本ではまだあまりなじみのないアーユルヴェーダですが、ヨガが浸透しつつあることもあり、アーユルヴェーダにも注目が集まり始めています。アーユルヴェーダの知恵は、賢者たちが、ヨガの瞑想をしていたときに覚智したものだともいわれています。ヨガとアーユルヴェーダは姉妹のような関係なんですよ。

アーユルヴェーダをとおして、ヨガをさらに深いものにして、毎日の生活をさらに健康的に楽しいものにしていきましょう!

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<次回「Naturalist Web Magazine」のお知らせ>

~2021年9月21日(火)配信予定 ~

「Naturalist Web Magazine_Vol.73」では、

「私たちのライフマネジメント ~更年期からが人生の第2のスタート!~」をお届けします。  

女性が年齢を重ねていくごとに気になるのが「更年期」。更年期を迎えると、身体がどのように変化をするのか、どのような症状が出るのかなど、心配なることが沢山ありますよね。

そこで次回は、「更年期とその後」について、そのメカニズムを解き明かしながら、今からできる対策などをご紹介します。更年期を正しく知って、人生の第二のスタートを切りましょう!

※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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~「Naturalist Web Magazine」は、毎週火曜日の配信予定~

今後も、自然の薬箱ならではの様々な情報を予定しています。どうぞお楽しみに。

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