デルタ株の特徴と後遺症から身を守るために

いつもご利用ありがとうございます、自然の薬箱の千田です。

9月も残すところあと数日。暑さも落ち着き、秋らしい気配が街中を漂い始めています。

季節が移ろう始めるときは、いつもより心と身体が揺らぎやすいものです。一日の中で少しでもほっとできる時間をとるだけでも、揺らぎの幅を抑えることができますよ。

毎週火曜日にお届けしております、自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。

皆様が穏やかな日常を取り戻せるその日まで、健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.74をお届けいたします。

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厚生労働省のサイトでは、数多くの新型コロナウイルス感染症についての情報が掲載されていますが、その中に少し興味深い資料を見つけました。

「新型コロナウイルス感染症の”いま”に関する11の知識」と、「新型コロナウイルス感染症 の“いま”についての 10 の知識」、いずれも新型コロナウイルス感染症について、非常にわかりやすく説明している資料なのですが、なぜ知識の数が異なるのでしょう?

その理由は、この資料が公開された時期にあります。10の知識は、2020年10月、11の知識は、2021年9月。1年の間に追加された知識は「変異株」についてなんです。

今や、日本の感染者のほとんどが変異株であるデルタ株に置き換わっているといわれていますが、実は世間で認識されたのはまだ1年足らず。一気に広まったことから恐怖を感じている人も多いですよね。

また、変異株と併せて気になるのが「後遺症」。最近では、重症化した人だけでなく、軽症の人でも後遺症に悩まされているとの報告がでています。

そこで今回から2回に分けて、新型コロナウイルスの変異株について、変異株のメカニズムを解説しながら、新型コロナウイルスの後遺症など、今知っておきたい様々な情報や、感染を予防するためのヒントを、漢方相談薬局の漢方薬剤師 千田信子がお届けいたします。

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<目次>

 1.  今注意すべき変異株って何種類あるの?

 2.  変異株が誕生する仕組みって?

 3.  今猛威を振るうデルタ株とは?

 4.  重症者だけじゃない!新型コロナウイルスの「後遺症」

 


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1. 今注意すべき変異株って何種類あるの?

世界各国で報告されている新型コロナウイルスの変異株。一般的にウイルスは増殖や感染を繰り返す中で少しずつ変異していくものですが、2021年9月現在、国立感染症研究所において、リスク分析し、分類された変異株は以下の5種類となります。

新型コロナウイルスの懸念される変異株(VOC)
(※公衆衛生上特に問題となり得る変異株)

WHOラベル
(※1)
最初の検出 感染性
(従来株比)
重篤度
(従来株比)
再感染や
ワクチン効果
(従来株比)
アルファ株 2020年9月
英国 
1.32倍と推定※ (5~7割程度高い可能性) 1.4倍(40~64歳 1.66倍)と推定※

(入院・死亡リスクが高い可能性)

効果に影響がある証拠なし
ベータ株 2020年5月
南アフリカ
5割程度高い可能性 入院時死亡リスクが高い可能性 効果を弱める可能性
ガンマ株 2020年11月 ブラジル 1.4~2.2倍高い可能性 入院リスクが高い可能性 効果を弱める可能性、従来株感染者の再感染事例の報告あり
デルタ株 2020年10月 インド 高い可能性 入院リスクが高い可能性 ワクチンと抗体医薬の効果を弱める可能性

 

新型コロナウイルスの注目すべき変異株(VOI)
(※感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される変異株)

WHOラベル(※1) 最初の 検出 概要
カッパ株 2020年10月 インド  • 感染性の増加と治療薬(抗体医薬)の効果への影響が示唆されている

• 引き続き、ゲノムサーベイランスを通じて実態を把握

※出典:厚生労働省 第51回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年9月8日)資料④)
※1 WHOが2021年5月31日付で4種ある新型コロナウイルスの「懸念される変異株(VOC)」について、新たにギリシャ文字を使った呼び名をつけたもの

 

この他、リスク分析の対象とはなっていませんが、イータ株、イオタ株、ラムダ株、ミュー株がVOIに、イプシロン株、ゼータ株、シータ株が「さらなる監視のための警告」として、WHOがリストアップしています。聞きなれないものもありますが、既に12種類ものウイルスが変異株として認められているんですね。

 


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2. 変異株が誕生する仕組みって?

では、どうしてウイルスは、これだけの多くの変異株を生み出してしまうのでしょう?ウイルスは遺伝子情報をコピーしながら増殖しますが、何度も何度もコピーをすると一定の割合で一部の遺伝子情報が変異してしまいます。この変異は、人から人へ感染する際に発生するといわれています。これが「変異株」と呼ばれるものの正体です。

新型コロナウイルスは、約2週間に1か所程度で小さな変異を起こしていると考えらえ、中国の武漢で発見されたウイルスと、現在のウイルスでは20~30か所以上変異があると推測されています。

このように数多く存在する変異株ですが、全てが驚異というわけではありません。実際に日本国内でも、人から人へ感染する際に少しづつウイルスは変異していきましたが、重症化リスクを伴う変異ではないため、特に注視されることはありませんでした。しかし、先ほどの表に挙げたような変異株の場合は、ウイルスが人に感染する際に足場のような役割を持つ「スパイクタンパク質」に変異が起き、性質が変わることで、感染力が強化されたり、重症化リスクが高まったり、ワクチンの効果を弱める等の原因になると考えられています。

日本では、当初は中国・武漢から流入したウイルスが主流でしたが、イギリスで流行した感染力の強いアルファ株が入ってくると、ほとんどの罹患はアルファ株に置き換わりました。そして、更に感染力の強いインドで流行したデルタ株が流入したことで、更に感染者を増やし、現在の罹患者のほとんどがデルタ株に感染していると推測されています。


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3. 今猛威を振るう デルタ株とは?

今、日本国内でも猛威を振るっている「デルタ株」ですが、どんな特徴を持っているのでしょうか?

デルタ株は、国立感染症研究所が従来株やこれまでの変異株より、次の可能性を指摘している、今最も注意するべき変異株の一つです。

・感染しやすい
・重症化しやすい
・免疫やワクチンの効果を低下させる

それでは、それぞれの可能性を詳しく見ていきましょう。

<感染しやすい>

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の報告によれば、デルタ株は、従来の新型コロナの2倍以上の伝染性があることが確認されています。デルタ株と他の感染症と比較しても、私たちになじみが深い季節性のインフルエンザや一般的な「風邪」より感染力が強く、みずぼうそうと同等レベルの可能性があり、より一層の感染対策が必要と注意喚起がなされています。この感染力は、デルタ株は従来はかかりにくいといわれていた子どもにも容赦をしません。さらに従来は1人の感染者から1.4~3.5人が感染していたものが、デルタ株の場合は5~9人に感染するといわれています。

 

<重症化しやすい>
イギリスで行われた臨床実験では、デルタ株とアルファ株と比較すると、デルタ株のほうが、14日以内の救急外来受診は1.45倍、14日以内の入院が2.26倍になったという結果も報告されています。カナダの研究でも、入院リスクが2.2倍、ICU入室リスクが3.8倍、死亡リスクが2.7倍上昇が報告されるなど、重症化リスクが懸念されています。

 

<免疫やワクチンの効果を低下させる>
AFP通信によると、「デルタ株は、過去の感染で獲得された自然免疫を回避することが多い」という学者の見解を掲載しています。国立感染症研究所の報告でも、 デルタ株は、ワクチン接種後の発症予防と感染予防効果に対して減弱の可能性があるものの、重症化を抑える効果に対しては不変としています。ただし、ブレイクスルー感染者(ワクチン既接種における感染者)が、他の患者にうつしてしまう、いわゆる二次感染の原因となりうることも指摘されているので、注意が必要です。

 


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4.重症者だけじゃない!新型コロナウイルスの「後遺症」

厚生労働省の中間報告によると、新型コロナウイルスで入院した患者のうち、疲労感・けん怠感、息苦しさ、筋力低下、睡眠障害、思考力・集中力低下、脱毛等の症状を退院時までに認めた人の3割以上が、診断6ヵ月後でも認められているそうです。特にけん怠感や筋力低下を訴える人が多いようで、今も多くの方が長引く後遺症に苦しめられています。

後遺症は、重症の方だけにみられるものではありません。最近では、無症状や軽症の20代~30代の若い人たちにも後遺症がみられるようになりました。疲労感・けん怠感、嗅覚・味覚異常、息苦しさ、脱毛といったものから、不安、頭痛、めまい、記憶力の低下などその症状は多岐にわたります。

これらの後遺症は「ロング コーヴィッド(Long COVID:長いコロナ)」と呼ばれ、様々な研究が進められていて、少しずつその原因が解明されつつあります。一部の研究者の間では、軽症の患者の8割近くが「ブレイン・フォグ」という認知能力の低下の症状が見られたとの報告も出ています。軽症の場合でも後遺症に悩まされる可能性があるのが、新型コロナウイルスが恐ろしい点だといえるでしょう。

新型コロナウイルス後遺症は、その方によって症状が異なったり、原因がはっきりしない不定愁訴といった特徴から、東洋医学を応用していくのも良い方法と考えます。全身のバランスを調整する効果のある漢方薬には回復促進効果が期待されます。一部の後遺症外来でも使われ始めていますが、今後、さらに活用されていくことも予想されます。

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今回は、新型コロナウイルスの変異株であるデルタ株や、多くの方が苦しんでいる後遺症についてお届けしました。

現在感染状況は少しずつ落ち着いているように見えますが、乾燥が本格化する冬には第6波が来るのでは?という予測も聞かれます。ほんの少しの気のゆるみが、辛い後遺症に悩むきっかけになってしまうかもしれません。今一度、気を引き締めて、ウイルスの侵入を許さないようにしていきましょう。

次回は後編の、ウイルスに負けない為の情報をお伝えしたいと思います。こちらも、ぜひ読んでいただきたい内容ですので、お待ちくださいね。

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<次回「Naturalist Web Magazine」のお知らせ>

~2021年10月5日(火)配信予定 ~

「Naturalist Web Magazine_Vol.75」では、

「新型コロナウイルス対策をアップデート~ウイルスに負けないために~」をお届けします。  

形を変えて、私たちの生活を脅かす新型コロナウイルスに負けたくはないけれど、何をしたらいいのやら?と途方に暮れてしまうこと、ありますよね。

そこで次回は、自然の薬箱ならではの視点で、新型コロナウイルスに負けないためのヒントをお届けします。毎日の生活に少しづつ取り込んでいけるウイルスに負けないための対策や、万が一感染を疑うような症状が出たときに、手元にあると安心できる市販薬や漢方薬などをご紹介します。私たちと一緒に、新型コロナウイルス対策をアップデートしましょう!

※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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~「Naturalist Web Magazine」は、毎週火曜日の配信予定~

今後も、自然の薬箱ならではの様々な情報を予定しています。どうぞお楽しみに。

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