漢方で妊娠しやすい体つくり〜周期調節法

いつもご利用ありがとうございます、自然の薬箱の千田です。

感染者数も随分落ち着き、今まで控えていた友人とのお食事会や旅行、スポーツ、レジャーなどを楽しめるようになってきましたね。ようやくその様な時期が来たにも関わらず、世界情勢では心配なことが山積みです。それに端を発して、自国のさまざまな社会問題にも今まで以上に目を向けていかなければならなくなってきたように思います。

自国の問題の一つに、少子化が挙げられます。子育てしやすい環境つくり、経済的支援、地域の協力などもさらに整ってくるといいなと思います。医療の分野では、今年の4月から、人工授精等の「一般不妊治療」、体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」について、健康保険が適用されることとなりました。子宝を希望されているご夫婦に、大きな後押しになりますね。

一方、漢方薬も子宝のために大いに役立つことをご存知でしょうか?

今回は、西洋医学的な治療を行う前、あるいは治療を行いながら、漢方の周期調節法で体を整えていくメリットについてお伝えします。妊活を頑張っていらっしゃる方、将来に備えて体を整えたい方、月経周期が乱れがちなので整えたい方に是非知っていただきたい内容です。

第2・第4火曜日にお届けしております、自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。
皆様が健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.98をお届けいたします。

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<目次>
1.漢方薬が妊活に役立つ理由

2.漢方の周期調節法とは

3.月経周期と基礎体温

4.月経周期の特徴と整え方

5.体質と周期調節法


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1.漢方薬が妊活に役立つ理由

西洋医学の不妊治療では、ホルモン療法・人工授精・体外受精・顕微授精など、日々発展を遂げています。ただ、その様な治療をもってしても、すぐ妊娠できるというわけではなく、卵子の質、受精、着床、着床後の発育などで上手くいかない場合もよくあります。

それは、東洋医学では、母体の準備が整っていないと考えます。もちろん、精子の質によっても影響を受けるので、男性側の体調も整えておく必要もあります。

東洋医学では、男性側の体調を整える方法も揃っていますが、何より、女性の体のバランスの乱れを見立ててそれに対処していく方法が充実しています。体質に合わせた漢方薬を用いていくことで、月経周期を調節して妊娠しやすいからだに整えていくことができるのです。

その中でも、特に優れた方法が月経周期を考えていく「周期調節法」です。

 


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2.周期調節法とは

「周期調節法」とは、西洋医学(生理学)の月経周期のメカニズムと東洋医学(中医学)の考え方を合わせた有用な治療法です。

初潮から閉経まで毎月繰り返される女性の月経周期は、月経期、卵胞期、排卵期、黄体期という4つの時期に分けられます。それぞれの時期のからだの状態とその方の体質によって、漢方薬を飲み分けていくのが「周期調節法」です。

健康な状態の月経のリズムに整えていく方法なので、からだに負担をかけずに妊娠しやすい身体に整えていくことができるのが「周期調節法」の優れたところです。

 

「周期調節法」=女性のからだのリズムを整える方法

妊活のためのからだつくり

将来、健康な赤ちゃんを授かるため

月経不順や月経痛、PMSの改善

女性特有の疾患の予防

更年期を健やかに過ごすため

美容と健康の維持増進

 


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3.月経周期と基礎体温

月経は、約28日の周期で月経期、卵胞期、排卵期、黄体期の4つの時期を繰り返していきます。

このリズムを把握するのに有用なのが基礎体温です。
基礎体温は、女性の月経周期、排卵のリズム、そして体調を反映するので、重要な情報源となります。妊娠を考えている女性、月経に問題を感じている女性はなるべく測ってみましょう。

基礎体温の測り方
基礎体温は、充分な睡眠(6時間以上)の後に、安静のままで測った体温のことをいいます。測定時間はなるべく一定にし、朝起きたら体を動かさず寝たまま、舌の裏側の体温を婦人体温計で測ります。計測中は鼻呼吸します。また体温表にはできるだけ記録を書くようにします。生理期間、性交の日、不正出血、おりものの状態、月経痛や排卵痛、風邪や頭痛などの体調、薬の服用状態などを記載していきます。

 


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4.月経周期の特徴と整え方

月経期
月経の初日を月経周期の1日目として数えます。出血のある間が月経期で、約3日〜7日間が月経期です。基礎体温は、月経初日から低温期(36℃前半くらい)に変化します。

月経期には、不要になった子宮内膜や月経血を完全に排泄させることが大切です。不要となった子宮内膜などが体内に残ると、血のめぐりが悪くなるなど悪影響を及ぼします。月経は、前周期で役目を終えたホルモンなどの残留による無用な細胞や粘膜の増殖を防ぎ、子宮内膜症・卵巣嚢腫・子宮筋腫・卵管周囲癒着などを防ぐ働きもしています。

この時期によく用いられる漢方薬
【活血薬(かっけつやく)】
いらなくなった子宮内膜や月経血を外にスムーズに排出させるために血行を促進する。

【理気薬(りきやく)】
気(エネルギー)の巡りを良くする

これらを同時に服用することで、子宮の筋肉や血管の運動のリズムを改善し、排出力を高め、さらに月経痛を和らげる働きもあります。

例えば、血府逐瘀丸(けっぷちくおがん)、きゅう帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)、折衝飲(せっしょいいん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、冠元顆粒(かんげんかりゅう)、婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)、逍遙散(しょうようさん)などが用いられます。

 

卵胞期(低温期)
月経後の約7日〜10日間がよい卵胞期です。
排卵までのこの時期は、良い卵子を作るため卵胞が成熟していく時期です。また、子宮内膜の新しい粘膜層を増殖させて厚くし、受精卵が着床しやすいふかふかのベッドを整えていきます。

この時期によく用いられる漢方薬
【滋陰薬】
からだの栄養に富んだ潤い【陰】を補う。体温を低温期に保つ。

【補血薬】
月経期で失われた血液の回復を促進する。

滋陰薬と補血薬を用い、栄養供給量をアップさせます。

例えば、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)、参茸補血丸(さんじょうほけつがん)、婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)、血府逐瘀丸(けっぷちくおがん)、きゅう帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)、二至丹(にしたん)などです。

 

排卵期
月経14日目前後に排卵が起こりますが、その前後3日間ぐらいを排卵期といいます。排卵日には基礎体温が一段と下がり、その後急激に上昇して高温期に移ります。排卵日の2〜3日前から、伸びて糸をひくような透明なおりものが出ます。排卵直前サインで、女性ホルモンがしっかり分泌されている証拠です。

この時期は、卵巣内の成熟卵胞から卵子が排卵され、空になった卵胞から黄体を作り、その黄体からホルモンが分泌されて低温期(卵胞期)から高温期(黄体期)へ移行させます。排卵をスムーズにするため、気血も活発に動きます。

この時期によく用いられる漢方薬
【理気薬】
気を巡らせる。

【活血薬】
血を巡らせて排卵をうながす。

【補腎薬】
腎(東洋医学では生殖能力も司ると考える臓器)の機能を補う。

例えば、血府逐瘀丸(けっぷちくおがん)、きゅう帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)、折衝飲(せっしょいいん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、冠元顆粒(かんげんかりゅう)、参茸丸(さんじょうがん)、参茸補血丸(さんじょうほけつがん)、海馬補腎丸(かいまほじんがん)などです。

 

黄体期(高温期)
排卵後の約14日間が黄体期で、基礎体温は月経期・卵胞期より0.3〜0.5℃程度高くなります(36℃後半位)。

受精卵を着床させて栄養を送る時期です。黄体ホルモンの作用により、子宮内膜への血液の供給量をアップして子宮内膜を柔らかくし、体内に蓄えられていた栄養素を分解し、エネルギー代謝を高め、基礎体温を高く維持します。

この時期によく用いられる漢方薬
【補陽薬】
からだを温める。

【補腎薬】
着床した受精卵に充分な栄養を与える。

【疏肝理気薬】
ホルモンの影響で起こるイライラ、胸の張りや痛みなどの症状がある場合。

例えば、参茸丸(さんじょうがん)、参茸補血丸(さんじょうほけつがん)、海馬補腎丸(かいまほじんがん)、瀉火補腎丸(しゃかほじんがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、逍遙散(しょうようさん)、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)などを使用します。


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5.体質と周期調節法

周期調節法は、月経のリズムにあわせて薬を使い分けるのですが、「この時期にはこの漢方薬を使う」という決まった薬があるわけではありません。その人の体質や体調に合った薬を用いることが一番大切です。今回は、基礎体温の情報からみた体質の傾向や、調整についてご紹介致します。

 

月経周期が整っているタイプ
正常な基礎体温は以下の様な4つの条件が揃っています。
●月経周期は28〜35日程度
●高温期が12〜14日続く
●高温期と低温期の差が0.3〜0.5℃ある
●低温から高温へ1~2日以内に移行する

この場合は、基本的な周期調節法を行います。

 

低温期が長いタイプ
不妊症の方に比較的良く見られるタイプです。卵子の成熟が悪く排卵が遅れ、排卵期にまでに時間がかかります。その結果黄体ホルモンの分泌が悪くなります。

西洋医学では黄体機能不全、軽度の排卵障害などが考えられます。

このタイプは低温期に【陰血(養分に富んだ潤いや血液の力)】が不足しているので、卵胞期にしっかりと【滋陰薬】と【補血薬】で補うことが大切です。

 

高温期への移行がゆるやかなタイプ
このタイプも比較的良く見られます。このタイプは排卵期に、【陽(からだを温める力)】の不足により体温が上がらないタイプと、【瘀血(血流の悪さ)】などが体温の上昇を妨げるタイプが考えられます。

西洋医学では黄体機能不全、排卵障害、高プロラクチン血症などが考えられます。

この場合は、全身症状より体質を考えて、適切な漢方薬を組み合わせていきます。

 

体温がギザギザなタイプ
ストレスが多く、自律神経が不安定な方に良くみられます。ストレスにより肝の気を巡らせる働きが乱れ、体温も不安定になっています。

西洋医学では高プロラクチン血症、月経前緊張症候群、自律神経失調症などが考えられます。

このタイプは、【肝気】を整えてストレスを和らげる【疏肝理気薬】を用いていきます。

 

低温期が短い或は体温が高すぎるタイプ
低温期が短く排卵が早い或は低温期の体温が高すぎるタイプです。卵胞の成長が不十分な可能性があります。【陰(潤い)】が不足して相対的に【陽気(熱)】が過剰になっています。陰が不足しているので排卵期のおりものが少ない場合が多いです。

西洋医学ではホルモン分泌過多が考えられます。

低温期にしっかりと【滋陰薬】や【補気薬】、【補血薬】を用います。

 

体温に差がないタイプ(一相性)
無排卵の状態かもしれません。

西洋医学では卵巣機能不全、多嚢胞性卵巣、高プロラクチン血症などが考えられます。

排卵がないので、周期調節法を行うことが難しいですが、月経があれば、リズムを作るために薬を切り替えていきます。無月経の場合は、補腎薬、補血薬、活血薬を必要に応じて処方し、月経を待ちます。
3ヶ月以上無月経の場合は、西洋医学的治療を受けながらの漢方薬の使用をお勧めします。

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西洋医学的なホルモン剤を使っての不妊治療は、もちろん、必要で有効な治療なのですが、むくみやだるさなど生活の質を下げる様々な不調が出ていたり、治療とお仕事や家事の両立に時間的に追われていたりで、精神的にも、肉体的にもお疲れの方が多いのです。

その様なときに、漢方相談を通じて、様々なお悩みについて話をすること、漢方薬をお役立ていただくことは、妊活中の大きな支えになると感じています。

漢方の子宝相談をしていることで嬉しいのは、やはり、元気な赤ちゃんの様子を報告をしてくださるときですが、それにもまして、妊活を頑張っている方のお悩みを伺い、少しでも元気で楽に過ごしていただける様にお手伝いできることは、漢方薬剤師としてとても幸せなことだと思っています。

是非、お気軽にご相談くださいませ。只今、妊活でご相談の方に「妊活サポートブック〜妊活って何からはじめたらいいの?〜」をプレゼントしております。

 

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<次回「Naturalist Web Magazine」のお知らせ>

~6月28日(火)配信予定 ~

「Naturalist Web Magazine_Vol.99」では、

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※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

 

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~「Naturalist Web Magazine」は、第2・第4火曜日 配信予定~

今後も、自然の薬箱ならではの様々な情報を予定しています。どうぞお楽しみに。

 

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