梅雨の養生
~湿邪に負けない体つくり~

いつもご利用ありがとうございます、自然の薬箱の千田です。

梅雨がいよいよ本格的に始まりそうですね。

そこで、今回は、梅雨の邪気である「湿邪」について、中医学の視点から解説しお伝えします。

そもそも「湿邪」とはどのようなもなのか?どのような不調の原因となるのかを紐解きながら、今の時期に取り入れたい漢方薬、養生法、薬膳の観点からおすすめの食材をご紹介いたします。

梅雨の時季の「湿邪」を理解して、しっかりと対策をして、健やかであるようにケアを始めましょう。

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<目次>

 1. 「湿邪」ってどんなもの?

 2.「湿邪」対策におすすめの漢方薬

 3.  自分でできる梅雨の養生法

 4.「薬膳的湿邪対策」


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1.「湿邪」ってどんなもの?

梅雨といえば、じめじめとした湿気が気になりますよね。今日も雨か・・・と、憂鬱な気分になる方も多いのではないでしょうか?さらに、身体が重く感じたり、頭痛や倦怠感に悩まされたり。この時期は、湿気によって心も身体も不調を感じやすくなりますよね。

中医学では、この時季の「湿」は「邪気」としてとらえ「湿邪」と呼び、様々な不調を引き起こすと考えています。

「湿邪」には

「外湿」 雨の中や湿度の高い環境に長期間いることで体に悪影響を及ぼす湿邪
「内湿」 体内で発生する湿邪

の2種類があり、それぞれが梅雨の時季ならではの不調を引き起こすとされています。

例えば、「外湿」にさらされた状況が続くと、体内の水分が外に排出されにくくなり、水分代謝が滞ることで、血液循環も悪くなり、体が重く感じたり、むくみを感じるなどの症状が現れやすくなります。体内に湿気が過剰に溜まる「内湿」の状態になると、下痢や軟便、胃もたれ、頭痛や頭重感、倦怠感、うつなどの症状が現れやすくなります。

なぜこのような症状があらわれてしまうのでしょう。これは、五臓の一つである「脾(=西洋医学的な脾臓ではなく、胃腸機能)」が湿気を最も苦手としていているからなのです。湿邪が体内に侵入すると、消化器官を司る「脾」がダメージを受けます。すると、食べ物を消化して、栄養を巡らせることが上手くできなくなり、疲労倦怠感などの症状がでてしまうのです。

通常、体内に取り入れた水分は「脾」から「肺(中医学では肺は皮膚体表と関連すると考えます)」と「腎」に送られ、体表や膀胱から汗や尿となって体外に排出されます。しかし、「外湿」が多い(湿度が高い)状態では、体表からの汗の蒸散機能が低下し、体内に水分が溜まってしまいます。すると、「腎」の水分代謝が追いつかなくなり、血液中に過剰になった水分が、血管外に滲み出して、むくみが出てしまうのです。

このように、湿邪が「脾」と「腎」に負担をかけることで、梅雨時の独特の不調が引き起こされているのです。

 


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2.「湿邪」対策におすすめの漢方薬

中医学では、「湿邪」に侵されてしまった場合、水の巡りが停滞したり偏ったりした状態を「水滞=体液の代謝がうまくいかずに停滞している状態」という概念でとらえて、それぞれの症状や体質に応じた漢方薬で対処しています。

今回は、数ある処方の中でも、「湿邪」対策として用いられる「化湿(体内の余分な水分を排出させること)」の働きのある代表的な漢方薬をいくつかご紹介しましょう。

五苓散
(ごれいさん)
全身の水分代謝を良くしてくれる漢方薬です。水分を多くとっているのに喉が渇いていたり、尿の出が悪い人、めまいや、むくみ、頭痛、下痢などの自覚症状があるときに用いられます。
防己黄耆湯
(ぼういおうぎとう)
下肢がむくんで関節が痛んだり、むくみで体重が変化する疲れやすく、汗をかきやすい方に良い漢方薬です。
藿香正気散
(かっこうしょうきさん)
梅雨や夏の胃腸風邪や、冷たいものの摂取などによってムカムカしたり、下痢・食欲不振・全身倦怠が起こる場合に良い処方です。熱中症の予防や軽い症状の改善にも役立ちます。
香砂六君子湯
(こうさりっくんしとう)
気と水の巡りを良くして、胃腸に停滞した湿をとり、消化機能を高め元気をつける漢方薬です。体力虚弱で疲れやすく、気が沈みがちで、胃がチャポチャポしやすい方の食欲不振、胃もたれ、吐き気、軟便、下痢などに良い処方です。
参苓白朮散
(じんれいびゃくじゅつさん)
痩せて顔色が悪く体力虚弱で、胃腸が弱く、下痢が続く方に良い漢方薬です。

今回ご紹介した漢方薬は、あくまでも一例です。

漢方薬は、検査機器がない時代から人を治療するために、その症状がなぜ起こるのか、それを治すためには何が必要なのか、それらを考えることによって発達してきた薬です。その人の状態を良く知り、からだ全体のバランスを見ることで、根本的な原因を治していくことに長けています。

自然の薬箱 漢方相談薬局では、お悩みの症状だけではなく、その他のおからだの状態や体質、生活習慣などをお伺いしながら、専門の薬剤師が調合を行っておりますので、お気軽にご相談ください。


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3.自分でできる梅雨の養生法

体を冷やしすぎないようにしましょう
梅雨は、ムシムシした暑さで、冷たいものをとりたくなりますが、体に溜まった水分を冷やし、さらに停滞しやすくしてしまいます。そのため、冷たいものの摂りすぎに注意し、なるべく温かい食べ物や飲み物を摂取し、体を冷やさないことが大切です。
足湯や温かいお風呂で体を温めることも、湿気を取り除く助けになります。体を温めることによって、リラックス効果も高まり、消化を助けたり、頭重、むくみ、関節痛の解消につながります。関節痛には、温湿布を当てることで、血行を良くし、痛みを軽減できます。タオルとお湯と精油で手軽にできる温湿布の方法は過去ブログも参考にしてくださいね。

 

リラックスと休息をとりましょう
ストレスをためないように、リラックスする休息時間を持ちましょう。深呼吸は、簡単にできて効果的なリラックス法です。息を全部吐ききってから、心地よいリズムで深呼吸をしてくださいね。

 

十分な睡眠をとりましょう
規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠をとり、体の回復を助けましょう。体への負担が大きい梅雨時期の睡眠不足や過労は、頭痛やむくみ、だるさ、意欲低下などを引き起こす原因となります。

 

適度な運動をとり入れましょう
気血の巡りを良くするために、軽い運動やストレッチを行いましょう。特に気功やヨガは、呼吸をうまく使いながら、体全体のバランスを整え、気血の巡りを促します。ただし、過度な運動は逆効果になることがあるので注意が必要です。
自然の薬箱では、はじめての方でも単回でもご参加いただけるボディワークのレッスンを開催しています。是非、ご参加くださいね。詳しくはこちら>>>

 

環境を快適に整えましょう
室内の湿度を適切に保つために、除湿機やエアコンを上手に利用しましょう。
梅雨時期にエアコンを使用する場合は、室内温度が26~28℃、湿度が50%以下を目安に設定を調節しましょう。 湿度が60%を超えると汗が乾きにくくなるようです。また、湿度が40%以下になると乾燥を感じやすくなるので注意が必要です。
風通しを良くし、湿気がこもらないようにすることも重要です。

 

ツボ押しやお灸を活用しましょう

百会
(ひゃくえ)
頭頂部に位置し、頭痛やストレスの軽減に効果があります。やさしくツボ押ししたり、手の平の手首側で広範囲を押さえて、軽く回しながら刺激するのも効果的です。
風池
(ふうち)
少し上を向いた時、背骨から上がって指が止まるくぼみと、耳の下を結んだ中間点にあります。頭痛や肩こりの緩和に役立ちます。
足三里
(あしさんり)
膝の皿の下、靭帯の外側にあるくぼみから指幅4本分の位置にあります。消化機能を高め、湿気を取り除く効果があり、頭痛やむくみ、関節痛の解消につながります。
三陰交
(さんいんこう)
足の内側にある内くるぶしの最も高い位置から指4本分上の骨の際にあります。下半身の巡りを改善し、利水作用と血液循環の促進に役立ちます。
承山
(しょうざん)
ふくらはぎの中央ライン上で、膝の裏とくるぶしの中間点(アキレス腱から筋肉に変わるところ)にあります。頭痛や腰痛、膝痛、むくみを解消するのに役立ちます。
中脘
(ちゅうかん)
みぞおちとおへそを結んだ線の中間にあります。体が冷えてしまった時のだるさや胃腸の調子を整えます。手で温めたりお灸がおすすめ。
合谷
(ごうこく)
手の甲の親指と人差し指の骨が交わる手前、人差し指側にあります。疲労感、頭痛、腰痛など、さまざまな症状に効果的です。
陰陵泉
(いんりょうせん)
膝の下、内側の骨が、大きく曲がって細くなったところにあります。胃腸機能を整え、湿気を取り除きます。



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4.「薬膳的湿邪対策」

「医食同源」という言葉がある通り、病気を治療するのも、日々食事をするのも、どちらも生命を養い、健やかに生きていくために欠くことができないもの。季節ごとに感じる不調も、食を通じて解決することができます。

湿邪による不調を感じたら、まず、次のことを心がけましょう。

  • 冷たいものや脂っこいものは避ける
  • 朝食は必ず取るように心がけましょう。朝食は、エネルギーを補充し、脳を活性化させ、エネルギー代謝を上げて身体を目覚めさせ、元気に活動させる役割があります。さらに、睡眠中に低下した体温を高めることや生活リズムを整える役割も持っています。朝食には、糖分だけではなく、持続的なエネルギー源の炭水化物も適量とることが大切です。

また、中医学理論に基づいて食材、中薬と組合せた料理である「薬膳」もおすすめです。「薬膳」は、多くの食材をバランスよく組合せることで、身体の精気を補うことが出来るとの考えから生まれたもの。私たちが毎日とる食事に「薬膳」の視点を取り入れるだけで「湿邪」対策をすることができるんですよ。

ここでは、「内湿」を取り除くためによいとされている<健脾、利湿、行気>の働きがある食材をご紹介します。是非、日々の献立に取り入れてみてくださいね。

健脾
kenpi
脾胃の疲れを補う
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大豆、クミン、米、しいたけ、オクラ、ジャガイモ、カボチャ、長芋、キャベツ、鶏肉、鯛など
利湿
rishitsu
梅雨の時季の外邪である「湿」を対外へ排出する
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
大豆、ナス、豆苗、トウモロコシ、ハト麦、鱧、うど、小豆、冬瓜、枝豆など
行気
kouki
「湿」は粘着質な性質で、体のあちこちで滞りが生まれやすいため、滞りを解消して流れを良くする
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
玉ねぎ、生姜、八角、ウーシャンフェン、茗荷、ねぎ、そば、陳皮、ジャスミン、オレンジ、ワイン、酒など

いかがでしょうか?薬膳といっても、耳なれ合い食材が並ぶのではなく、身近な食材が多いですよね。お買い物の際に、少しだけ意識して食材を選ぶことで、今までの食事が、薬膳の性質を持つ、身体にいい食事へと変えることができるんですよ。

薬膳らしい食事を作ってみたい、湿邪に効果的な食材はわかったけれど、どう取り入れていったらいいかわからない・・・という方には、過去にご紹介した国際薬膳師監修のおすすめのレシピも、ぜひご覧ください!
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「国際薬膳師おすすめ!内湿を取るための薬膳レシピ2種」はこちら>>

いずれも、スーパーで手軽に手に入る食材だけでできるレシピです。難しい手順も不要ですので、是非一度トライしてみてくださいね。

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今回は、梅雨の時季の邪気である「湿邪」について、おすすめの漢方薬や薬膳をご紹介してきました。

梅雨時のジメッとした空気は、心身ともに疲れやすいものです。中医学の知恵を上手に取り入れながら、身体の内側から湿邪を取り除いて、梅雨の時季を快適に過ごしましょう!

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今後も、自然の薬箱ならではの様々な情報を予定しています。どうぞお楽しみに。

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