一人で悩まないで!更年期の不調
〜役立つ漢方や生活の工夫〜
いつもご利用ありがとうございます、自然の薬箱の千田です。
ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたか?私はキャンプに出かけたのですが、久しぶりに大型連休らしい渋滞にも出会いました。渋滞は歓迎しない出来事でしたが、多くの方が休日を楽しんでいる雰囲気を味わえました。皆さんは、エネルギーをチャージできましたか?
新型コロナ感染症や世界情勢など、心配なことは多いですが、まずは、感染者数の大きな増加が起こらないことを願いつつ、日々の中で、小さくても幸せな出来事を見つけて、心地よく過ごしていくことが、健康の秘訣だと思っています。
第2・第4火曜日にお届けしております、自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。
皆様が健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.96をお届けいたします。
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更年期に起こる様々な不調。更年期によるからだの変調と気づかずに、生活に疲れ、悩んでいる方がとても多いようです。また、気づいていてもどうしたら良いのかわからずに、辛い日々を過ごしている方も多いと思います。
そのせいで、家庭の中の雰囲気を壊してしまったり、仕事が上手く行かなくなったりすることも少なくないようです。
そこで今回は、自然の薬箱の漢方薬剤師の千田から、東洋医学的にみた更年期によるからだの変調と、対処法についてご紹介します。
更年期によるからだの変調について知っておくことで、症状が出たときに、慌てず、悩まず過ごすことができます。そして、ご自身でできるケア方法を見つけておくこと、そして、誰かに相談してみるということが、更年期を上手に乗りきる上でとても大切です。
更年期の不調は、女性に強く現れることが多いですが、男性にも現れます。性別に関係なく、「もしかしたら更年期?」と思われる方は、是非参考にしてみてください。
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<目次>
1.更年期に現れるからだの変調
更年期の意味や、ホルモンの変化などの西洋医学的なからだの変調については、このブログでも詳しく紹介していますので、バックナンバーにお任せしたいと思います。
Naturalist Web Magazine Vol.46 更年期と上手に付き合いましょう!
Naturalist Web Magazine Vol.73 私たちのライフマネジメント~更年期は人生第2のスタート!~
更年期に現れる主な不調は、以下の表に示しますが、その方その方によって、症状の程度や、強く現れる症状が異なります。日常生活に支障をきたすほど辛いものを更年期障害と呼ばれ、何らかの治療をしたほうが良い状態といえます。
<更年期のからだの変調>
血管運動神経症状 | ほてり、のぼせ、発汗、冷え、動悸 |
運動器系症状 | 肩こり、腰痛、関節痛 |
精神神経症状 | 頭痛、不安、不眠、イライラ、物忘れ |
知覚系症状 | 手足のしびれ、感覚の鈍化 |
ご自分で、治療したほうが良いのかどうか迷われている方は、次の簡略更年期指数も参考にしてみてくださいね。日本人の更年期女性特有の症状を反映したチェック表です。51点以上になった方は、医療機関への受診や漢方相談を検討してみてください。
<簡略更年期指数>
症状の程度に応じてご自身で○をつけてから、その点数を合計してチェックします。
どれか一つの症状でも強ければ「強」に○をしてください。
症状 | 強 | 中 | 弱 | 無 |
①顔がほてる | 10 | 6 | 3 | 0 |
②汗をかきやすい | 10 | 6 | 3 | 0 |
③腰や手足が冷えやすい | 14 | 9 | 5 | 0 |
④息切れ、動悸がする | 12 | 8 | 4 | 0 |
⑤寝つきが悪い、または眠りが浅い | 14 | 9 | 5 | 0 |
⑥怒りやすく、すぐイライラする | 12 | 8 | 4 | 0 |
⑦くよくよしたり、憂鬱になることがある | 7 | 5 | 3 | 0 |
⑧頭痛、めまい、吐き気がよくある | 7 | 5 | 3 | 0 |
⑨疲れやすい | 7 | 5 | 3 | 0 |
⑩肩こり、腰痛、手足の痛みがある | 7 | 5 | 3 | 0 |
更年期指数の自己採点の評価法
25点以下 | 上手に更年期を過ごしています。これまでの生活態度を続けていいでしょう。 |
26~50点 | 食事、運動、生活様式などに注意を払い、無理をしないようにしましょう。 |
51点~65点 | 生活改善、カウンセリング、お薬や漢方薬による改善をした方がいいでしょう。 |
66~80点 | 長期間(半年以上)の計画的な治療が必要でしょう。 |
81点以上 | 各科の精密検査を受け、更年期障害のみである場合は専門医での 長期的な対応が必要でしょう。 |
2.東洋医学的にみた更年期
更年期に現れる症状は、東洋医学では「腎精(じんせい)」の不足によるものと考えられます。
「腎精」とは、腎に蓄えられた体の基本物質であり、両親から受け継ぎ、腎の中に貯蔵された「先天の精(せんてんのせい)」と、主に飲食物を脾胃が消化・吸収することによって得られる「後天の精(こうてんのせい)」からなります。この「腎精」が不足することにより体の衰えが始まります。
腎精不足によって起こる症状もみていきましょう。腎は下半身を支えているので、腰痛や膝痛などが現れやすくなります。また、腎は五行では「水」と大きく関わる臓器ですので、体内の水を生み出す「腎陰」も衰え、「腎陰虚(じんいんきょ)」による、のぼせやほてりといった虚熱(きょねつ)症状が現れます。虚熱症状とは、体の中の水不足による弱い熱症状で、水の働きである「熱を冷ます」力が低下してしまうためです。
さらに、五行の「腎」に続く、木の性質をもつ臓器である「肝」を乾燥させ、燃え上がりやすくなります。すると上半身に熱が上がり、「肝陽上亢(かんようじょうこう)」と呼ばれる、ほてり、発汗、頭痛、めまい、耳鳴り、不眠、イライラなどの血管運動神経、精神神経の症状が起こってきます。
以上のような変調に伴う「気血」の巡りの不足により、運動器系、知覚系の症状も起こりやすくなると考えられます。
3.更年期の過ごし方と対処法
更年期に大切になる「腎精」、それを構成する「先天の精」は生まれ持った体質ですが、「後天の精」は、生活の質に大きく影響を受けるものです。ですから、「腎精」の不足を起こさないためにも、更年期には、生活を見直し、運動、栄養、休養などについてきちんと考えて過ごしていくことが大切です。
また、更年期に起こりやすい不調を理解し、「体の変調による症状で、不安になることはない、ずっと続く症状ではない。」と受け入れることで、焦燥感、不安感などが起こりにくくなります。
運動:疲れすぎない適度な運動を取り入れる。自律神経を整える呼吸法を身に着ける。
栄養:「腎精」を支える元気な血液を作るために「補血」を意識して行くことも大切です。精の付く食べものとして、貝類、エビ類、黒い色の食品、ネバネバした食品などを摂り入れていくと良いでしょう。 休養:仕事の時間を見直して無理をしない。睡眠時間をしっかりる。起床時間を決めて、朝陽をしっかり浴び、リラックスさせてくれるホルモンであるセロトニン・メラトニンの分泌を促す。 |
4.更年期の不調に使える漢方薬・薬草
漢方相談をしていると、更年期の不調には、漢方薬が本当によく奏効すると感じます。悩んでいる方は是非、漢方薬を試してみてください。
ここでは、よくみられる症状として、「のぼせ・発汗」と「不眠・不安感」に対する代表的な漢方薬や薬草についてご紹介いたします。
<のぼせタイプ>
①「気滞(きたい)」「気逆(きぎゃく)」タイプ
代表的な症状:
のぼせ・急な発汗・イライラ・感情の浮き沈み・動悸・お腹の張り・排便がスッキリしない
東洋医学的対処法:
「疏肝理気降逆(そかんりきこうぎゃく)」氣の流れをスムースにして、昇った気にのせて熱を下げる
代表的な漢方薬・薬草:
逍遙散(しょうようさん)・加味逍遥散(かみしょうようさん)・抑肝散(よくかんさん)・抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)・通導散(つうどうさん)など
玫瑰花(ハマナスの花)茶、陳皮(みかんの皮)茶、シベリア人参茶など
②「瘀血(おけつ)」タイプ
代表的な症状:
冷えのぼせ・肩こり・頭痛・関節痛・腰痛
東洋医学的対処法:
「活血化瘀降逆(かっけつかおこうぎゃく)」血の流れを良くして、昇った血を下げる
代表的な漢方薬・薬草:
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、血府逐瘀丸(けっぷちくおがん)、折衝飲(せっしょういん)、きゅう帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)、丹参製剤(たんじんせいざい)、当帰製剤(とうきせいざい)など
紅花(ベニハナの花)茶、桂皮(シナモン)茶など
<不眠・不安感タイプ>
③「血虚(けっきょ)」タイプ
代表的な症状:
思い悩んだり、夜遅くまで仕事や家事に追われる人に多くみられます。
眠りが浅い・よく目が覚める・夢が多い・夢を覚えている・寝起きが悪い
東洋医学的対処法:
「補血安神(ほけつあんじん)」血液の元気をつけることによって精神の安定を図る
代表的な漢方薬・薬草:
酸棗仁湯(さんそうにんとう)・帰脾湯(きひとう)・加味帰脾湯(かみきひとう)・甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)など
大棗(なつめの実)茶、パッションフラワー茶など
④「腎陰虚(じんいんきょ)」タイプ
代表的な症状:
腎精の衰えが進んだことにより、不眠・早朝覚醒・動悸・息切れ・口渇・便秘
東洋医学的対処法:
「滋陰(じいん)」腎の力を補うことによって、腎陰を補い腎と関係のある心の働きも高める
代表的な漢方薬・薬草:
天王補心丹(てんのうほしんたん)など
枸杞子(クコの実)、百合(ゆりの根)など
5.男性の更年期による不調
男性にも更年期障害があるのをご存知でしょうか。女性のように閉経がない分わかりにくいのですが、気力の低下など今までと明らかに違った状態になった場合は要注意です。仕事もはかどらない場合は、放置せずに対処が必要です。
男性更年期にみられる症状と代表的な漢方薬:
主な症状 | 代表的な漢方薬 |
気力の低下、落ち込み、クヨクヨ、不安感、イライラ、易怒、疲れやすい、健忘、不眠、めまい、動悸、など | 加味逍遥散、逍遙散、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、加味帰脾湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、至宝三鞭丸(しほうさんべんがん)、牛黄清心丸(ごおうせいしんがん)、天王補心丹など |
腰痛、夜間尿、尿の出や切れが悪い、尿漏れ、性欲減退、性機能障害、脱毛など | 至宝三鞭丸、天王補心丹、八味丸(はちみがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、杞菊地黄丸(こきくじおうがん)、鹿茸製剤(ろくじょうせいざい)など |
6.漢方相談のすすめ
体の不調については、一人で抱え込まず人に相談してみることも大切です。話をすることで、ストレスに感じていることを整理でき、理解することで安心につながったり、良いアドバイスを得られることも多いのです。
身近な方に話をできるとベストですが、なかなか話しにくかったり、理解が得られなかったりすることも多いでしょう。そんなときには、お体の状態や生活環境などを時間をかけてお聞きしていく漢方薬局での相談がおすすめです。
ゆっくり、色々なお話をする中で、体のバランスの崩れがどこなのかを見つけ出し、お一人お一人に合う漢方薬を選んでいきます。また、生活に対するヒントが得られたり、別の視点からの提案で考え方が変わって気持ちが楽になることもあります。
最近は、オンライン相談をとりいれている薬局も多いですので、お忙しい方も是非利用してみてくださいね。
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男性の漢方相談のご来店も増えています。ご夫婦でいらっしゃることもあります。ご遠慮なくご相談ください。
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<次回「Naturalist Web Magazine」のお知らせ>
~5月24日(火)配信予定 ~
「Naturalist Web Magazine_Vol.97」では、
「ストレスマネジメント」✖️「マインドフルネス」をお届けします。
生きている中で、ストレスは自律神経系・内分泌系・免疫系に大きく影響を及ぼし、私たちの生活にスパイスを与えたり、または生活の質を下げることがあります。悪いストレスはホルモンバランスを乱したり、病気を誘発するので、マネジメントすることが大切!
またストレスをマネジメントできれば、人生にさらなる幸福感を感じることが必ずできるのです。
その方法として、マインドフルネス瞑想やヨガニドラをご紹介していきます。
※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。
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~「Naturalist Web Magazine」は、第2・第4火曜日 配信予定~
今後も、自然の薬箱ならではの様々な情報を予定しています。どうぞお楽しみに。
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