呼吸の科学 ~鼻呼吸のメリット~
11月も間もなく終わり。これからはぐんと空気が乾燥するとともに、冷え込みが厳しくなる季節です。今一度、気を引き締めて感染症対策をしながら、冬を乗り切りたいですね。
毎週火曜日にお届けしております、自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。
皆様が穏やかな日常を取り戻せるその日まで、健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.31をお届けいたします。
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突然ですが、皆さんは、呼吸を意識したことはありますか?人は平均1分間に15回~20回ほど呼吸をしていると言われていて、一日に換算するとなんと!約3万回も呼吸をしているのです。
普段、私たちは呼吸のほとんどを無意識で行っていますが、皆さんは「口」と「鼻」のどちらで呼吸をしていますか?
日常的に鼻で呼吸=「鼻呼吸」をしている方は、心や身体に様々なメリットがもたらされるのですが、口で呼吸=「口呼吸」をしている方は、その呼吸によって色々な病気の引き金となる可能性があることをご存知でしょうか?
そこで今回は、「呼吸の科学~鼻呼吸のメリット~」と題し、私たちが何気なく行っている「呼吸」の科学について、自然の薬箱のヨガインストラクター 田島理帆よりお伝えいたします。
鼻呼吸と口呼吸の違いや、鼻呼吸を意識することで得られるメリット、そして、ヨガと呼吸のかかわりをご紹介します。実は、無意識に行っている鼻呼吸には色々なメリットがあるんですよ。
今日から、ぜひ鼻呼吸を意識してみませんか?
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目次
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1.呼吸ってどんなもの?
呼吸とは、身体の中に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出=ガス交換をすることで、「内呼吸」と「外呼吸」の二種類があります。
「内呼吸」は、体内の毛細血管から細胞とのガス交換の事を指します。ガス交換が体の内側の毛細血管と細胞の間で行われるため、内呼吸と呼ばれます。
「外呼吸」は、外から吸った空気が肺に入り、肺から毛細血管との間でガス交換されることを指します。取り込む方法により、鼻から空気を取り込む「鼻呼吸」と、口から空気を取り込む「口呼吸」の二つに分かれます。
今回は、この口呼吸の危険性と鼻呼吸のすすめについてお伝えしていきます。
本来、哺乳動物は鼻呼吸しか行わないものですが、人は進化の過程で口でも呼吸ができるようになりました。もともと鼻は呼吸をするために作られた器官なので、酸素を有効に体内に取り込むための様々な機能を備えていますが、口は主に食べ物を取り込むための器官であり、呼吸をのために作られた器官ではありません。そのため、口で呼吸することは様々な疾患の元となることがあり、デメリットが多いといわれています。
では、口呼吸にはどのような問題があるのでしょうか?
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2.口呼吸のデメリットを知ろう!
口呼吸を行うと、冷たく乾いた空気がダイレクトに咽頭や喉頭に当たってしまい、口内は乾燥し、病原体が繁殖しやすい状態になります。
すると、風邪をひきやすくなり、インフルエンザや新型コロナなどのウイルスの侵入を許してしまう危険性が高くなります。細菌やウイルスの侵入により、繰り返し扁桃腺に炎症が起こることによって、免疫異常を引き起こし、喘息やアトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症など様々な疾患にもつながるといわれており、注意が必要です。
また、口呼吸が頻繁になることで、口の中が乾きやすくなり、唾液による口の中の殺菌が行われず、口臭や歯周病の原因になることも指摘されています。さらに、口呼吸の割合が高くなることで、睡眠の質の低下、心身の怠さや、持久力や注意力の低下、うつ症状や認知症などのさまざまな精神疾患にもつながることが知られてきています。
口呼吸の原因として、歯並びや慢性的な鼻づまりなどの他に、姿勢の問題や口周りの筋力が低下して口が閉じにくいことなどが関係していると言われます。最近では、スマートフォンの発達によって、言葉を発さなくてもいい機会が増えたり、やわらかい食材が増えて硬いものを噛む習慣が少なくなったなど、日常的に口を動かす機会が減ったことが口周りの筋力低下を助長しているようです。
口呼吸を防ぐために、食事の際によく噛んで食べることや、表情豊かに話すことなど、出来るところから口を動かす習慣を身に着けることが大切です。
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3.鼻呼吸のメリットは?
さて、もう一つの外呼吸である「鼻呼吸」は、たくさんのメリットを私たちにもたらしてくれます。ひとつづつご紹介しますね。
①きれいで温かい空気が体内に入ってくる
鼻呼吸をすると、ホコリや異物などは鼻毛や、繊毛・粘液により、体内に入る前にブロックされます。さらに、扁桃リンパ組織が、体内に入ろうとする異物を防御してくれます。ダイレクトに空気を取り込んでしまう口呼吸よりも、きれいな空気を体内に取り込むことができるようになります。
また、鼻腔を通ることで温められ加湿された空気が体内に入ってくるため、気管が乾燥しにくくなります。ウイルスは、冷たくて乾燥したところで繁殖しやすいので、鼻呼吸は、ウイルスの増殖も抑えることが出来ます。
引用元:武田コンシューマーヘルスケア株式会社(鼻呼吸と口呼吸のしくみ)
https://takeda-kenko.jp/yakuhou/feature/breathing/vol01.html
②一酸化窒素(NO)で、気道や血管が拡張する
鼻の奥の副鼻腔という器官では、一酸化窒素が作られます。一酸化窒素は、殺菌作用や気管や血管を拡張させてくれる作用があるため、空気の通り道が広がって呼吸がしやすくなったり、血流がスムーズになる効果が期待できます。
鼻詰まりの方は、片鼻でも良いので鼻呼吸をしていくと、鼻詰まりが改善されるケースも多いですよ。
ちなみに、口呼吸では一酸化窒素は作られません。だからこそ、鼻呼吸を意識して行うことが大切なんですね。余談ですが、一酸化窒素は「あること」をすると、作る量を増やすことができるといわれています。
それは…「ハミング」なんです ♪
鼻呼吸にハミングが加わることにより、一酸化窒素が多くつくられます。お家でもハミングをして歌ってみてはいかがでしょうか?
③ボーア効果~身体に酸素を取り込むためには~
酸素は生命維持に不可欠ですが、吸ったら吸った分だけ、身体に取り込まれると思っていませんか?
実は、酸素は呼吸で体内に入れただけでは、内臓や皮膚、筋肉などの細胞まで運ばれないのです。せっかく取り込んだのに、どうして運ばれないのでしょうか?まずは、酸素が細胞に届くためのメカニズムを説明します。
酸素は赤血球に含まれるヘモグロビンと仲が良いので、一緒に体中を巡って、細胞の酸素を届けています。
しかし、ヘモグロビンが細胞までやってきても、そこに二酸化炭素がないと、酸素を細胞へ渡してくれません。ヘモグロビンは、二酸化炭素と交換することを条件に、酸素を細胞へ渡していくからです。
無事に酸素と二酸化炭素が交換されることで、初めて細胞に酸素が供給され、細胞の活性化がスムーズになります。つまり、体内にしっかり酸素を取り込めるかどうかは、「二酸化炭素の量」がカギになってきます。
もし、体内の二酸化炭素が少なければ、細胞へ供給される酸素量も少なくなり、反対に二酸化炭素量が多ければ、多くの酸素が細胞へ放たれ、細胞の呼吸が促進されます。
これを、ボーア効果と呼びます。
二酸化炭素と交換した酸素が細胞までしっかり取り込まれると、そこにエネルギーが発生します。エネルギーが発生するということは、体温が高まる、疲れにくくなる、同じ運動をしていてもバテにくくなる、風邪をひきにくなるなどのメリットが期待できます。
ここで注意したいのは、口呼吸では二酸化炭素が多く排出されてしまうということ。でも、鼻呼吸なら適度に二酸化炭素が体内に保たれているので、酸素が細胞に届く量が多くなるのです。
このように、鼻呼吸には身体にとってメリットがたくさんありますが、最近はマスクの影響で口呼吸になりがちです。鼻呼吸を意識することで、綺麗な空気を取り入れることができ、酸素を身体の隅々まで届けられるようになります。
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4.ヨガと呼吸のかかわりって?
ここまで、呼吸がもたらす肉体的な効果についてお伝えしましたが、呼吸は肉体的な効果だけでなく、自律神経にも作用して私たちの心についても様々な効果を与えてくれています。
そもそも自律神経とは、私たちの心拍、血圧、体温、内臓の働きなどを、私たちの意思とは無関係にコントロールしてくれているもので、交感神経、副交感神経の2種類あります。交感神経は私たちの身体が活動するときに働き、副交感神経は休息をとる時に働きます。交感神経と副交感神経はどちらが良い・悪いではなく、バランスをとっていることが大切です。
引用元:新潟ウェルネス(一般社団法人 新潟県労働衛生医学協会)
https://www.niwell.or.jp/news/health/000052.html
一般的に、自律神経はコントロールできないものとされていますが、果たして本当にそうなのでしょうか?
例えば、座った状態からいきなり立って身体を動かした時、心臓がバクバクしませんか?これは、座った状態の副交感神経優位の状況から身体を動かすことで、交感神経優位の状態を作っているのです。
他にも、すごく緊張しているときに、深呼吸で深く息を吸って吐いてを繰り返していくと、徐々に心も落ち着いてきますよね。これも、緊張して交感神経優位になっている状態から、深呼吸をすることによって副交感神経優位の状態を作っているのです。
ということは?・・・自律神経をコントロールできるものもあるんですね!
そこで、おすすめなのが「ヨガの呼吸」です。
ヨガは、常に呼吸を意識をしてポーズをとっていきます。この呼吸法は「プラーナヤーマ」と呼ばれ、あらゆるエネルギーをコントロールするという意味があります。(※諸説あり)
ヨガでは、主に鼻呼吸で呼吸を行っていきます。ゆったりと深い鼻呼吸を続けることで、肉体的にエネルギーが供給されることはもちろん、心がゆっくりと落ち着いてきます。深い呼吸を行うことによって、副交感神経が優位になっている状態が作れるのです。このように、呼吸で心のエネルギーをコントロールできるのが「ヨガの呼吸」なのです。
初心者の方でもできる基本的な「ヨガの呼吸法」を2つご紹介します。
① 腹式呼吸法 | 横隔膜を動かす呼吸です。 息を吸った時にお腹を膨らませて、吐いた時にお腹をしぼませるように呼吸をしてみましょう。この呼吸では、副交感神経が優位になっていきます。 |
② 胸式呼吸法 | 胸郭を動かす呼吸です。 息を吸った時に胸が広がっていくように、吐いた時に胸が閉じていくように呼吸をしてみましょう。胸の動きが分かりずらい場合は、肋骨を両手で包んで意識をしていくと、動かしやすくなりますよ。この呼吸では、交感神経が優位になっていきます。 |
いずれの呼吸も、基本的に鼻呼吸で行います。口はしっかりと閉じて、鼻の呼吸に意識を向けてくださいね。
現代は、交感神経が常に優位な人が増えてきているため、意識的に副交感神経優位の状態をつくることが、心にも身体にも必要になってきています。ストレスフルでイライラしたり、気持ちが乱れがちな時は、お家や自然の薬箱のBWレッスンでヨガを試してみてはいかがでしょうか?
きっと心も身体もほぐれて、より良い状態の自分を手に入れることが出来ますよ。
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今回は「呼吸」について様々な角度からお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?
あわただしく、変化する毎日。今年は、特に変化の大きい一年でしたね。そのような毎日でも、自分を大切にする時間を作っていただきたいと思います。一日の中でわずかな時間でも構いません、ご自身の呼吸に意識を向ける時間を作って、心も身体もリラックスしてスッキリさせたいですね。
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<次回「Naturalist Web Magazine」のお知らせ>
~12月1日(火)配信予定 ~
次回の「Naturalist Web Magazine_Vol.32」では、
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外出も億劫になりがちな冬だからこそ、ご自宅で手軽に作れる薬膳料理にチャレンジしてみませんか?
寒い冬に弱りがちな「腎」を補うための食材を採り入れた、国際薬膳師監修のカンタン薬膳レシピをご紹介。さらに、毎日の献立にも活かせるおすすめ食材リストもついています。日々の食事に薬膳のエッセンスを加えて、寒い冬を乗り切りましょう!
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今後も、自然の薬箱ならではの様々な情報を予定しています。どうぞお楽しみに。
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