冬至と新しいスタート・無病息災を願って

今日で12月も残すところあと半分。寒さも徐々に厳しくなり、いよいよ冬本番といった感じがしますね。

毎週火曜日にお届けしております、自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。

皆様が穏やかな日常を取り戻せるその日まで、健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.34をお届けいたします。

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今年の冬至は12月21日。冬至とは24節気の一つで、一年で最も夜が長い日です。この日を境に、昼が長くなりはじめるということなんですね。

古来より、一年のうちで一番夜が長いこの日は「運も上昇する境の日」といわれていており、無病息災や厄払い等の様々な風習が行われます。「冬至かぼちゃ」や「柚子湯」がそれにあたり、現在でも脈々と受け継がれています。では、なぜ冬至には「冬至かぼちゃ」と「柚子湯」なのでしょう?それにはしっかりとした理由があるのです。

また、年が明けた元旦に一年間の無病息災を願って呑む縁起物のお酒である「お屠蘇」。実は数種類の生薬を処方した漢方の一つ「屠蘇散」を、酒に一晩漬け込んでつくるお祝いのお酒です。漢方で作られるお屠蘇には、どのような効能があるのでしょうか。

そこで今回は、「冬至と新しいスタート・無病息災を願って」と題し、自然の薬箱の漢方薬剤師 千田のぶこ より、冬至の風習と健康にまつわるお話、そして、来たるべき一年の始まりにいただきたい「お屠蘇」について解説いたします。

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<目次> 

 1. 陰陽と冬至

 2. 無病息災を願う冬至の風習

 3. 大晦日の準備と新年のお屠蘇

 


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1.陰陽と冬至

冬至の風習を知る上で、知っておきたいのが陰陽の考え方です。Yin & Yang (インアンドヤン=陰と陽)のマーク、最近ではファッションにも取り入れられていますが、そもそも陰陽論の重要な概念を現している 「陰陽太極図」と言われるもの。勾玉型の形を魚に見立てて“陰陽魚”とも呼ばれます。

右側の黒色は陰を現して下降する気を意味し、左側の白色は陽を現して上昇する気を意味ます。魚尾から魚頭に向かって広がっていく形は、それぞれの気が生まれ、徐々に盛んになっていく様子を表します。

陰が盛んになり極まれば陽に転じていき、陽が盛んになり極まれば陰に転じていきます。陰の中央にある魚眼のような白色の点は「陰中の陽」と呼ばれ、いくら陰が強くなっても陰の中に陽があり、後に陽に転じることを現します。陽の中央の点は同じように「陽中の陰」と呼ばれ、いくら陽が強くなっても陽の中に陰があり、後に陰に転じることを現します。陰陽は、いつもお互いの力関係に基づいて常に変化しています。これを、「陰陽消長(いんようしょうちょう)」といいます。

例えば、1日の中での陰陽消長は、昼から夜にかけては「陽消陰長」、夜から昼にかけては「陰消陽長」というように変化します。同じように、1年の中では夏から冬にかけては「熱→寒」と変化するので「陽消陰長」となり、冬から夏にかけては「陰消陽長」となります。

この陰陽太極図で冬至の位置は、一番下の黒い領域が一番大きい所。一年で最も夜が長い冬至の一日にあたります。言い換えれば、この日を堺に昼が長くなっていく「陰消陽長」の始まりの日。この日を「太陽が生まれ変わる日」ととらえ、ここからどんどん上昇運に転じていくのです。

古来より、冬至の日は運をさらに上昇させるため、そして無病息災を願うため、いろいろな風習が行われてきました。コロナ禍でお家時間も増えている今、古来の風習にならって、「陰消陽長」の始まりの日に、上昇運と無病息災を願ってみませんか?


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2.無病息災を願う冬至の風習

古来から冬至には、上昇運と無病息災を願う風習があることは先にお話しました。ここでは、現代でも気軽に取り入れられる冬至の風習をご紹介しましょう。

<柚子湯>
冬至といえば、冬至湯といわれる柚子湯が有名ですね。柚子湯には、血行を促進して冷え性を緩和したり、体を温めて風邪を予防したりするほか、美肌効果もあります。柚子に含まれるヘスペリジン、クエン酸、ビタミンCなどの成分によって入浴効果が高まるおかげですね。何より、柚子の精油の良い香りによって深いリラックス効果が得られます。

柚子湯は、柚子五~六個を半割りや輪切りにして、お風呂に浮かべます。精油による皮膚刺激の可能性もありますので、たくさん入れすぎないように注意しましょう。

柚子が手に入りにくい場合は、柚子の精油をバスオイルやバスソルトに加えて使用してもよいでしょう。圧搾法ではなく減圧水蒸気蒸留法で採られたyuicaの柚子精油(5mL/2,090円・税込)がおすすめです。もっと手軽に楽しみたい方は、yuica 7days Bathの入浴剤(1回分/336円・税込)が便利です。柚子の良い香りを楽しめるとともに湯の花たっぷりでお肌がつるつるになりますよ。

ちなみに、柚子湯に浸かりながら「一陽来復、一陽来復(いちようらいふく、いちようらいふく)」と唱えると、一年中風邪をひかないといわれています。「一陽来復」とは、「陰きわまって陽が再び生じる」こと。「悪いことが続いた後、運気が好転する」という意味で使われることもあります。今年は様々な難関が続いたので、運気を好転させるためにも、お風呂で唱えてみてくださいね。


<冬至粥>
冬至粥は小豆を入れたおかゆのこと。太陽を意味する魔除けの色である小豆の赤で、陰が極まる日に厄祓いをする習わしです。地方によっては南瓜粥を食べるところもあり、小豆粥にかぼちゃを入れることも多くなりました。

小豆は薬膳的には、体の余分な水分を出してむくみをとったり、排膿解毒作用がある食材です。厄払いにぴったりですね。

 

<冬至かぼちゃ>
冬至にいただくものにかぼちゃも有名ですね。かぼちゃは夏野菜ですが、長期保存がきくことから、冬の栄養補給の食材として昔から重宝されてきました。「南国産の夏野菜の陽気を身体に取り込む」といういわれもあるようです。栄養学的にみても、体内でビタミンAに変化するβカロテンがたっぷり含まれているので、動脈硬化の予防、美肌、視力回復、風邪の予防などの効果が期待できます。薬膳的には、気のエネルギーを補い、胃腸を健やかにする働きがあるとされています。かぼちゃは、年末のお疲れを回復するのにぴったりな食材といえます。

ちなみに冬至かぼちゃは、小豆と一緒に煮る“いとこ煮”で食べられることが多いようですよ。

 

<冬至の七種と運盛り>
冬至といえば、「冬至かぼちゃ」に「柚子湯」がよく知られていますよね。でも、これだけではないんです。冬至の日に食べるとよいといわれている7つの食材「冬至の七種(とうじのななくさ)」があるのをご存知でしょうか?これらは、運がよくなるといわれる「ん」がつく食べ物。もちろん、かぼちゃも含まれていますが、そのほかの食材はどのようなものなのでしょうか。

◎冬至の七種

◎ 饂飩(うんどん=うどん)

◎ 寒天(かんてん)

◎ 金柑(きんかん)

◎ 銀杏 (ぎんなん)

◎ 南瓜(なんきん=かぼちゃ)

◎ 人参 (にんじん)

◎ 蓮根(れんこん)

「ん」がつく食べ物で運をつかもうということを「運盛り」といい、特に「ん」が2つ入る食べ物として好んで食べられているそうです。「いろはにほへと」のラストが「ん」であることから、陰の極まる日に健康と開運を願っての風習です。

北関東には冬至にこんにゃくを食べる地域もあり、「運盛り」に加えて、「砂払い」の意味があったそう。今でいう体のデトックスのために、昔から冬至に食べられていたのですね。「運盛り」の「ん」は1つでも良いそうで、蒟蒻(こんにゃく)、昆布(こんぶ)、牛蒡(ごんぼ=ごぼう)、大根 (だいこん)、はんぺん、蜜柑(みかん)なども挙げられます。

中国にも「三九補一冬、来年無病痛 さんくほいっとう、らいねんむびょうつう」という諺があります。 おもしろいことに、中国はよく数字を表すのに掛け算で表すのですが、このことわざの意味は、冬至の日から数えて三✕九=27日の間に滋養剤を服用し、十分なエネルギーを貯えておくと、次の年は病気にかからないということです。

冬は、春夏に体を活発に動かすためにも、しっかり養生する季節なんですね。


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3.大晦日の準備と新年のお屠蘇

冬至を過ぎると、あっという間にやってきそうな年越しと新年。無病息災の風習のお話のしめくくりは「お屠蘇」にしたいと思います。

毎年12月になると、自然の薬箱に漢方相談でおいで頂く方に「お屠蘇」をつくる「屠蘇散(とそさん)」をお配りしています。(店頭でも販売中/1回分 324円・税込)

「屠蘇散」の名前には「邪気を屠(ほふ)り、魂を蘇らせる」という意味があり、元旦にお屠蘇を飲むとこの一年の無病息災が得られると言われています。

最近では、お正月にお屠蘇を飲まれる方も少ないようですが、そもそも屠蘇散は漢方薬であり、どのような意味を持つのかをご存知の方も多くないようです。

「屠蘇散」は、別名「屠蘇延命散」ともいわれ、5~10種類ほどの生薬を調合した漢方処方。大晦日の夜に、お酒やみりんに漬け込んで準備します。(自然の薬箱では、白ワインに漬け込む方法もご紹介しています)

屠蘇散の基本となる生薬は、白朮(びゃくじゅつ)・防風(ぼうふう)・桔梗(ききょう)・桂皮(けいひ)・山椒(さんしょう)の5種。これに排便・消化機能のある大黄(だいおう)が加わったり、味を整えるために数種の生薬を加えたりと様々な処方の屠蘇散がありますが、基本の5つの生薬には、風邪を防ぎ、胃腸の機能を整え、体を温める作用があり、お正月の寒い季節を健康に過ごす知恵が詰まっているといえます。

◎屠蘇散の基本生薬

白朮
(びゃくじゅつ

キク科の多年草オケラの根茎
大晦日に京都の八坂神社で行われるオケラ詣りに使われたり、万葉集の中にも歌われている植物です。健胃、整腸や水分代謝を促す働きがあります。

防風
(ぼうふう)

セリ科のボウフウの根と根茎。
風邪薬として使われ、解熱、鎮痛、鎮痙、発汗作用があります。

桔梗
(ききょう)

キキョウ科のキキョウの根。
秋の七草に朝貌(アサガオ)として挙げられ、喉の炎症をとったり、痰をきり、毒を排出する作用があります。

桂皮
(けいひ

クスノキ科のケイの樹皮。
シナモンといった方がよくわかりますね。健胃、解熱、鎮静作用や体を温める作用、発汗作用などがあります。

山椒
(さんしょう)

ミカン科のサンショウの果皮。
葉や実は食用や香辛料として使われていて馴染みがありますね。健胃作用や発汗作用があります。

屠蘇散は飲み方に作法があります。はじめに最年長者が最年少者に注ぎます。飲む時は家族そろって東の方角を向き、飲み干したら、その人が次に若い人に注ぎ、盃を進めていきます。若者の元気を年長者へ渡すという意味合いがあるとのこと。厄年の人は最後に飲みます。これも厄年以外の人から厄を祓う力を分けてもらうという意味があるそう。飲めない人は飲むふりだけでOKです。

このご時世なので、盃の回し飲みは避けたほうが良さそうですが、来年のお正月は、お家で過ごされる方も多いと思いますので、元旦の朝から家族で無病息災を願って、お屠蘇を飲みながらゆっくり過ごすのもいいですね。

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間もなくやってくる冬至。家族の健康や気運の上昇を願いながら、古来からの風習を取り入れてみてはいかがでしょうか。柚子湯と運盛りの食事を楽しみながら年末を乗り切り、お屠蘇で新年を祝いながら、家族みんなの健康と繁栄を祈りましょう。

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<次回「Naturalist Web Magazine」のお知らせ>

~12月22日(火)配信予定 ~

「Naturalist Web Magazine_Vol.35」では、

一度体験したらクセになる!『吸い玉』をご存知ですか?」をお届けします。

自然の薬箱 はり・きゅうルームのオプションメニュー「吸い玉」。「吸い玉」といってもピンと来ないという人もいるかもしれませんね。実は、一度体験した方のリピート率が非常に高いメニューなのです。特に、ひどい肩こりやむくみにお悩みの方に大人気の「吸い玉」とは、どのような施術なのかをじっくり解説します。

※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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~「Naturalist Web Magazine」は、毎週火曜日の配信予定~

今後も、自然の薬箱ならではの様々な情報を予定しています。どうぞお楽しみに。

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過去の<Naturalist Web Magazine>バックナンバー

Vol.33_冬ごもりのナチュラルライフで、おうち時間を楽しもう!

Vol.32_寒い冬を乗り切ろう!腎を補う薬膳のすすめ

Vol.31_呼吸の科学 ~鼻呼吸のメリット~

Vol.30_漢方薬剤師がお伝えします!~冬の養生法と症状別おすすめ漢方薬~

Vol.29_頑張りすぎて、くいしばっていませんか?

Vol.28_睡眠について考えてみよう!~身体や脳との関係~

Vol.27_薬膳で肺機能を高めて、免疫機能をアップ!

Vol.26_知ってほしい!骨とヨガの関係

Vol.25_「秋の憂い」を感じたときにおすすめ!「気」を整える漢方

Vol.24_「 秋は憂い(うれい)の季節 」東洋医学的ストレス解消のヒント!

Vol.23_アロマセラピストの本棚から

Vol.22_秋の養生 ~「温燥」のための薬膳 ~

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Vol.18_ブルーの精油『ジャーマンカモミール』の涼し気なアロマソープを手作りしよう!

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Vol.2_腸活で<免疫機能>をキープ&アップ! 

Vol.1_知っておきたい!肺炎と免疫機能のこと 

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