食べ過ぎや胃腸の負担を和らげる「消食」とは?

昨日は成人の日でしたが、残念ながら式典自体が中止や延期になったり、規模を縮小したりと、新型コロナウイルスの影響が避けられない状態でしたね。今年は式典に参加できないけれど、振袖を着て記念写真を撮られる方も多かったようです。振袖には長い袖を振る仕草が「魔を祓う」「厄除け」の意味もあるそうで、美しく華やかなだけでなく、大人としてスタートする門出にふさわしいものだったんですね。

毎週火曜日にお届けしております、自然の薬箱の「Naturalist Web Magazine」。

皆様が穏やかな日常を取り戻せるその日まで、健やかに過ごせるお手伝いが出来ればという思いを込めて、Vol.37をお届けいたします。

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今年は巣ごもりのお正月を過ごされた方が多くいらっしゃいましたね。自宅にいると緊張感が薄れて、飲みすぎや食べ過ぎた方も多いようです。松の内の最後の日である1月7日に七草がゆを食べてお正月気分をリセットしたものの、なかなか胃腸の調子がすぐれない・・・という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで、2021年、最初の配信となります「Naturalist Web Magazine」では、食物の消化を助ける「消食」をテーマに、胃腸をゆっくり休ませる薬膳について解説します。中医学の視点での「消食」におすすめの薬膳食材のご紹介や、薬膳レシピ2種類もお伝えします。疲れた胃腸を休ませることは、免疫機能を高めることにもつながります。日々の献立にぜひお役立てください。

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<目次>

 1. 実は理にかなった習慣だった「1月7日の七草がゆ」

 2. 胃腸の不調を感じたら「消食(しょうしょく)」を意識しよう

 3. 胃腸の調子を整えて、免疫機能をキープするためのおすすめ食材

 4. 胃腸の調子を整えて、免疫機能をキープする薬膳レシピ2種


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1.実は理にかなった習慣だった「1月7日の七草がゆ」

今年はすでに過ぎてしまいましたが、五節句の中の「人日の節句(じんじつのせっく)」にあたる1月7日は、新年の無病息災を願って七草がゆを食べる習慣がありますよね。もともとは、古来中国の7種類の野菜(七草)を入れた、スープのようなものを食べる習慣が日本に伝わったもので、平安時代から行われており、室町時代の汁物の原型ともいわれています。

では、7種類の野菜(七草)とは・・・

芹(せり)、薺(なずな)、御行(おぎょう)、繁縷(はこべら)、仏の座(ほとけのざ)、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)

これらが 「これぞ七草!」です。地域によっても異なりますが、七草がゆに用いられる7つの野菜に込められた意味と、薬膳的な効能をご紹介しましょう。

 

七草の種類 薬膳的な効能 込められた意味
せり 清熱、利水、涼血、止帯、平肝、解毒 競り勝つ
なずな
(ぺんぺんぐさ)
涼血、止血、清熱、利水、平肝、明目 なでて汚れをはらう
おぎょう
(ははこぐさ)
化痰、鎮咳、解熱、止嘔 仏体
はこべら
(はこべ)
健胃、整腸、浄血、催乳、消炎、利尿 繁栄がはびこる
ほとけのざ
(たびらこ)
健胃、降圧、消腫、止痛 仏の安座
すずな
(かぶ)
利五臓、消食、益気、滋陰、健胃、止咳 神様を呼ぶ鈴
すずしろ
(だいこん)
消食、化痰、行気、通便 汚れのない純白さ

いずれも非常に縁起が良い意味が込められているうえ、胃腸を整えたり、風邪の諸症状に効果が期待できるものばかり。栄養的にもビタミンやミネラルが、豊富に含まれているので、栄養が偏りがちだったお正月の締めくくりにぴったりです。

さらに、「すずな」や「すずしろ」には「ジアスターゼ」という消化成分も含まれているので、胃もたれなどにも効果的。1月7日の朝に七草がゆを食べるという習慣は、胃腸をいたわるためにも非常に理にかなったものだったんですね。


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2.胃腸の不調を感じたら「消食(しょうしょく)」を意識しよう

今年は、年末年始の旅行や帰省を中止した分、ご自宅で豪華な食事を楽しむ方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。あまり活動しないで摂取量が増えたため、漢方相談でも胃腸の不調を訴えられる方が例年より多いように思います。

そんな時こそ、しっかりいたわってあげるのが大切。でも、毎日、七草粥というわけにもいかないし、胃腸を休めたいけど、断食はハードルが高いし…散歩がいいとは聞くけど、この時期に外に出るもの億劫…そんな方に是非お勧めしたいのが「消食」です。

中医学では、食べ過ぎて体に消化できないまま、食べものが停滞することを「食滞(しょくたい)」と呼びます。食滞が続くとだんだん脾胃(ひい)に熱がこもり、口内炎や便秘になることも。そんな時に食を通じて脾胃の熱を冷まし、消化を助け、食べ物の停滞を解消するのが「消食」であり、「消食」の作用を持つ食べ物を積極的にとることで、胃腸の働きを助けることができます。

消食の効能を持つ代表的な食材として「大根、かぶ、おくら、大麦、山査子(さんざし)」などが挙げられます。栄養学的にも、「大根」や「かぶ」などに含まれるアミラーゼが、タンパク質などの食物を分解し、消化吸収を助けることはよく知られています。特に、今の時期おすすめなのが「かぶ」です。食べ過ぎた次の日などには、「かぶ」に含まれている胃腸のはたらきを助ける成分が役立ちますよ。


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3.胃腸の調子を整えて免疫機能をキープするためのおすすめ食材

消化を助け、胃腸をいたわることをご紹介してきましたが、胃腸の健康と免疫力にはとても関連があるのです。このお話は、このブログの《Vol.2》でご紹介していますので、ぜひご覧になってみてください。

冬の乾燥する時期は、ウイルスによる感染症が拡がる時期ですが、今年は特に新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、心配が尽きません。私たちが心がける重要なことの一つに、体の健康を保つことがあります。そして、胃腸を健康に保つこと、健康な胃腸は、元気を産み免疫力を高めます。また、体を温めておくことによって、外邪を寄せ付けないように発散させることが大切です。

ここでは、「おなかの調子を調えて、おなかの消化を助ける」<消食>食材と、免疫機能をキープするために取り入れたい<補気><辛温解表>の食材をご紹介します。

いずれも手に入れやすいものばかりです。毎日の献立に取り入れてみてください。

<消食 syousyoku>
食べすぎたときに、消化を助けます
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大根、かぶ、砂肝、みそ、キャベツ、もち麦、おくら、※サンザシの実 など
<補気 hoki>
気を補って免疫力をアップします
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鶏肉、里芋、豆類、じゃがいも、椎茸、お米、長芋、鱈など
<辛温解表 shinongehyou>
辛みのある食材で、身体を温め発散させます
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ねぎ、玉ねぎ、生姜、わさび、シナモン、大葉、三つ葉、茗荷(みょうが)など

※サンザシの実
「山査子(サンザシ)」と言われ、肉類などの消化を高めます。自然の薬箱漢方相談薬局でも20gから販売しています

 


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4.胃腸の調子を整えて免疫機能をキープする薬膳レシピ2種

おすすめの食材はわかったけれど、具体的なレシピも知りたい!と思いますよね。

そこで、今回もカフェ&キッチンより、国際薬膳師のシェフおすすめ!「お腹の調子を整えて免疫機能をキープする薬膳レシピ」をご用意しました。今回は「里芋と鶏ミンチ もち麦入りのコロッケ」と、「陳皮とかぶのスープ」の2種類です。

珍しい食材も難しい手順も不要で、ご自宅で手軽におすすめの食材を使った薬膳が作れますので、ぜひご覧ください。

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国際薬膳師おすすめ!

お腹の調子を整えて免疫機能をキープする薬膳レシピ2種は、こちら >>>

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新年最初の今回は、年末年始で疲れた胃腸をいたわる「消食」について、ご紹介してきました。

胃腸の疲れは免疫機能の低下にもつながります。ウイルスに負けない体を作るためにも、日々の食事で胃腸をいたわることが大切です。今からしっかり調子を整えて、新しい一年を健やかに過ごしましょう!

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<次回「Naturalist Web Magazine」のお知らせ>

~2021年1月19日(火)配信予定 ~

新年最初の配信となります「Naturalist Web Magazine_Vol.38」では、
「おうち時間を香りで心地よく。アロマのある生活を始めませんか?」をお届けします。

空気も心も内側にこもりがちな冬だからこそ、アロマの心地よい香りに包まれて、おうち時間を豊かなものにしませんか。アロマテラピーは特別な道具や材料が必要だと思われがちですが、実はお気に入りの精油が1本あれば、手軽に始められるのをご存知ですか?

次回は、すぐに始められるお手軽な精油の活用術を、自然の薬箱のアロマセラピストがご紹介します。今年のおうち時間は、アロマで心地よい生活を楽しみましょう。

※ 次回予告内容は、変更になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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~「Naturalist Web Magazine」は、毎週火曜日の配信予定~

今後も、自然の薬箱ならではの様々な情報を予定しています。どうぞお楽しみに。

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過去の<Naturalist Web Magazine>バックナンバー

Vol.36_2021年を健やかに!健康づくりの3つのポイント

Vol.35_実は隠れファン多数!「吸い玉」をご存知ですか?

Vol.34_冬至と新しいスタート・無病息災を願って

Vol.33_冬ごもりのナチュラルライフで、おうち時間を楽しもう!

Vol.32_寒い冬を乗り切ろう!腎を補う薬膳のすすめ

Vol.31_呼吸の科学 ~鼻呼吸のメリット~

Vol.30_漢方薬剤師がお伝えします!~冬の養生法と症状別おすすめ漢方薬~

Vol.29_頑張りすぎて、くいしばっていませんか?

Vol.28_睡眠について考えてみよう!~身体や脳との関係~

Vol.27_薬膳で肺機能を高めて、免疫機能をアップ!

Vol.26_知ってほしい!骨とヨガの関係

Vol.25_「秋の憂い」を感じたときにおすすめ!「気」を整える漢方

Vol.24_「 秋は憂い(うれい)の季節 」東洋医学的ストレス解消のヒント!

Vol.23_アロマセラピストの本棚から

Vol.22_秋の養生 ~「温燥」のための薬膳 ~

Vol.21_まだまだ注意!秋の「脱水症状」

Vol.20_9月9日は重陽の節句!菊の伝統文化のたしなみと漢方薬のお話

Vol.19_季節の変わり目に知っておきたい!自律神経と目の関係って?

Vol.18_ブルーの精油『ジャーマンカモミール』の涼し気なアロマソープを手作りしよう!

Vol.17_残暑を乗り切るために!脾胃(ひい)を整えるための薬膳のススメ

Vol.16_ステイフォーム中にチャレンジ!コロナ太りを解消するには?

Vol.15_夏バテしている場合じゃない!夏に役立つ漢方薬

Vol.14_鍼灸師おすすめ!夏のマスク不調の解消&予防法!

Vol.13_健やかで美しい暮らしのためのあれこれ

Vol.12_薬膳で暑気払い!酷暑を乗り切ろう!

Vol.11_知っておきたい!東洋医学の知恵と夏の過ごし方

Vol.10_お顔と頭のツボでリフレッシュ!

Vol.9_今だから知っておきたい!運動と免疫の関係って?

Vol.8_ 手指消毒の手荒れが気になる今!ハンドケアアイテムを手作りしよう!

Vol.7_むくみを解消!内湿を取るための薬膳

Vol.6_長期戦に備えよう!慢性疾患のある方も必見!身体を整えるための漢方薬

Vol.5_巣ごもり不調を改善!〜セルフお灸のススメ<応用編>~

Vol.4_お灸で免疫機能アップ!~セルフお灸のススメ<基本編>~

Vol.3_ストレスに負けない!心と身体を作る小さなアイデア 

Vol.2_腸活で<免疫機能>をキープ&アップ! 

Vol.1_知っておきたい!肺炎と免疫機能のこと 

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